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緋色のキセキ  作者: Kou
第一章~はじまりを共に~
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魔剣士メイフィールド

「ちょっとメイフィールドさん。そんな風に見下ろしたら、怖がって何も話してくれなくなっちゃいますよ」


 フードを被った男の名は、メイフィールドというらしい。呼び止めた少女は、薄い金色の髪に陶器のように白い肌、エメラルド色の瞳で目を引く美しさだ。強面なメイフィールドとは対照的なやわらかな物腰でメイフィールドを止めようとするが、メイフィールドは少女の手を振り払い、すかさず依頼主の少年に詰め寄る。


「仕事なら俺が引き受ける。このガキたちより、はるかに役に立つと思うぜ」


 子供扱いされて頭にきたのか、リーフが少年とメイフィールドの間に割って入る。


「おい、脅えてるじゃねぇか」


「それがどうした?ギルドに一人で足を踏み入れた時点で、たとえ子供でも自分の身は自分で守るのが俺たちのルールだ。自分じゃ解決しない問題を、金で解決しにきたんだ。それくらいの覚悟はあるだろう」

 言葉の節々のトゲのある言い方だ。


「とにかく、王宮の仕事は俺がいただく。そこをどけ!」

 リーフに詰め寄るメイフィールドの気迫から、ただ者ではない空気を読み取り、フレイは探るようにメイフィールドを見上げた。


―この男、何でこんなに王宮にこだわるのかしら。それに、この雰囲気・・・―

 じっと気を研ぎ澄ませる。


―人間・・・よね?でもどこか、普通の人間とは違う空気を感じる。それに、この魔力、いったい何者なの!?―


 少年は、リーフの後ろに隠れ脅えた様子でリーフのマントをぎゅっと握りしめた。少年の心情を感じ取ったリーフは、少年を見下ろして微笑む。


「心配するな!俺が守ってやるから」


「ほう、俺とやろうってのか?面白い」


 メイフィールドが腰に下げた剣の柄に手をかけると、店で酒をあおっていた男たちが面白がってはやしたてる。


「おい、ケンカなら外でやってくれよ!ったく、これだから渡り鳥ってのは困るぜ」

 情報屋の男が、慌てて外に出るよううながす。


「ちょうど体がなまってたとこだ!外に出ろ!」

 リーフとメイフィールドは、お互いに適度な距離を保ちながら外に出て行った。

「ったく、ただ単にあばれたいだけじゃないかしら」


 面倒なことに巻きこまれ、フレイは思わず肩を落とした。その横に、先ほどの金髪の美少女が歩み寄る。


「まぁ!かわいい♪あの人の妹さんかしら?」

 目をきらきらさせた少女にいきなり抱きつかれ、フレイは慌てて少女を押しのける。


「ちょっと、いきなり抱きついてびっくりするじゃない!」


「あ、すみません。よく言われます。でも私、かわいいものを見るとうずうずして、どうしても体が先に動いてしまうんです♪」


 ぺろりと舌を出し、まったく悪びれることなく笑顔を見せる少女に、変な奴らにからまれてしまったという確信を強くした。


「妹じゃないわ。しいて言えば、あの単細胞おせっかい焼きの『保護者』って感じかしら」


「赤い髪、珍しくて本当にかわいい♪」


「ってあんた、人の話聞いてるの!?」


 どうにも調子が狂う少女だ。それにしても、この少女からも、どこからし魔力を感じる。メイフィールドから感じたものとはだいぶ性質が違うが、魔法が使える以上、あなどってはいけない。



 ドカンッ!!

 店の外で爆発音が響く。


 音を聞きつけたフレイと金髪の少女は、慌てて店の外に飛び出した。フードを被った少年も二人に続く。


 まず目に飛び込んできたのは、剣を片手にたたずむメイフィールド。その視線の先には、崩れた壁の瓦礫と、座り込むリーフの姿があった。


「お兄ちゃん!」

 フードの少年が心配そうに声をあげる。


「いってー!てめぇ、汚ねぇぞ!急に変な技使いやがって!」

風圧で体が吹き飛ばされたことと先ほどの爆発音の大きさから、それなりに威力のある爆発系の魔法を使ったことがうかがえる。


「魔導士のケンカだ!巻き込まれるぞ!」


 先ほどまであっけにとられて静まりかえっていた野次馬の群れが、突然我に返って騒がしくなり、逃げ出していく。


「ちゃんと剣で戦えよ!剣士だろ!?」


 リーフの文句に、メイフィールドは鼻で笑って答える。


「あいにく、俺は剣より魔法の方が得意でね。安心しろ、次はちゃんと当ててやる」


 そう言って、右手に赤い玉を出現させ、その玉はどんどん大きくなっていく。


「ちょっと!こんな街中でそんな大技!あんた常識ってもんがないわけ!?」


 フレイはメイフィールドの攻撃を止めようと、反撃呪文の演唱に入ったその時、フードの少年の声が響く。


「もうやめてください!仕事はあなたにお願いします!ですからもう、攻撃はやめてください!」


 高く透き通った、意志の強い声に、メイフィールドは魔法の演唱を辞め、右手の赤い玉はみるみる

小さくなっていく。


「おい!まだ勝負はついてねぇぞ!」


「お兄ちゃん、ありがとう。僕をかばってくれて。僕、うれしかったよ」


 そう言って頭を下げると、フードの少年は自分からメイフィールドに歩み寄り、

「ここは目立ちすぎます。場所を変えましょう。僕に着いてきてください」

 震える声で語り掛け、人目を避けるように歩き出した。


「無茶してすみません。でも私たちにもどうしても、王宮に行かなければいけない用があるんです。これ、よく効く薬草です。もし良かったら、あの人に使ってあげてください」


 金髪の少女は、フレイの手を取って白い袋を押し付けると、慌ててメイフィールドの後を追って行った。

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