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俺だけ持ってるゴースト特攻!? 〜最強退魔師(自称)はゲームでもゴーストから逃れられない〜  作者: 氷見野仁
クエスト8 ファンタジーと言えば、やっぱりドラゴンだよね
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プレイヤー4人組になって、はじめての冒険だ

「冒険がしたーい!」


「したーい!」


「うるさーい!」


 元・聖獣コンビの声がロッジに木霊する。


 あのあとユキに経緯を説明したり、行く場所がないからどうにかしろと揺すられ家に部屋を用意し、離れに新しいIIO Linkを設置したりとさらに時間を要した。


 鍾乳洞へ行った日から数えて時間にして3日かかり、週末がすべて潰れてしまった。結衣からの着信に気づいたのはそのあと。


 電話越しに、ユキが消えたと憔悴しきった声で伝えられた時は、申し訳なさで死を覚悟した。なにがあったか話したら怒られ、しばらく機嫌が直らなかったのは記憶に新しい。


 さっきようやく許してもらえたくらいだ、失ったものは大きかったが。


「アラタくん、私たちしばらく新しい場所、開拓してませんよね?」


「そうなんだけど、呪いの道具クエストがまだ完了してないんだよな」


 そう、あのクエスト、まだ完了表示になっていないのだ。


 厳密に言えばクエストが更新されないのだ。おそらくまだギルドが倉庫を確認してないんだと思う。


「そんなの置いておいてさー、先の先まで進みたい!」


「それもいいが、まずやることがある」


「え、なに」


「ユキのパワーレベリング」


「「「あー」」」


 ☆


「4人だとサクサクだな」


「全員揃うの、久しぶりですし」


「スキルぜんぜん覚えないよー」


「僕の時もそうだったから諦めて」


「えー」


 パワーレベリングを早々に終わらせた俺たちは結局、元・聖獣コンビのオーダーで、メインストーリーを進めることになった。


 新しい出会い(聖獣発見)もあるかもしれないし、俺もやぶさかではない。


 セカントリスから先はまだ手付かずだから、とりあえずは……。


「全員まだマップ解放してないし、第三の街テルティポルトに行くか。港町だから魚介がうまいらしいぞ」


「うちの湖でも獲れるじゃん」


「獲れるよなー」


「川魚と海魚を一緒にするな」


  こいつら正気かよ? と思ったけど、そう言えばマグロとか食わしたことなかった。うちで出る魚介も鮭とかだし、たしか半分川魚だ。


「海で獲れるお魚も、川で獲れるお魚とまた違っておいしいんですよ」


「ユイナがそう言うなら向かうかー」


「いこー」


 君たち、俺とユイナとで態度が180度違うのはなんでですかね?


「……冒険しながらだから、ストレートでは向かわないぞ。まずは途中のセカントリス大高原を抜けてからだ」


 ☆


「……うわーすご」


「高原だから山登るのかと思った! 助かった!」


 どんだけぐうたらなんだこの狐。冒険したいって言ったの自分だろ。


「でも、まさかケーブルカーがあるとは思いませんでした」


「ファンタジーって言っても別に全部が全部中世とか近世じゃないからな、こういうところはなんちゃってなんだろ」


「なんちゃってのが楽だからいいな」


「聖獣だった時はこういうのも疑問持たず使ってたんだから怖いねー」


 ユキが、記憶についての話をしているが、たしかに一時的に現実の記憶を消されてゲームの中の自分だけになったら、そういう感想になるか。


 そうなると、長くゲーム内で過ごすのは、聖獣にとっては悪影響なのかも。


「でも本当に、近世とか中世みたいな不自由なゲームじゃなくて、そこは助かりました。これで全部徒歩とかだったら世界をめぐるのにどれだけかかるか……」


「今ってどこまでマップ解放されてるんだっけ?」


「昨日の時点で、第六の街まで攻略済みだったはずです。結構進んでましたね」


 思ったよりも進んでた。


「あ、そういえばアルバートのことなんですけど、第一段階が倒された時、『四天王アルバート(第一段階)が倒された!』ってアナウンスが出て、攻略組が先進むのやめて血眼になって探したみたいですよ。掲示板も荒れてました」


「なんでそういう話、もっと早い段階でしてくれないの!?」


 なんてこった。あれもアナウンスされてたのか。また掲示板では犯人探しとかされたんだろうな。つらいな。


「いやその、エリスちゃんのこととかありましたし、それから呪いの道具関連で完全に頭から抜け落ちてたというか……」


「それならしょうがないか……すまん」


「一応犯人探しはあのクエストがバレた段階で終わってて、攻略組が第二段階に挑みに行って」


「行って?」


「ぼろ負けしたらしいです。聖属性以外効かないらしくて」


「倒せないボスとかダメだろ存在しちゃ」


 俺はエルダーリッチを記憶から消し、そう答えた。


「……多分ですけど、IIO側があえて倒せないように作ってるんじゃないかなー、って思うんですよね。私がほら、アレができるようになったのも第一段階倒したあとですし」


「きっかけかなんか用意して、俺みたいな人を増やそうとしてる?」


「多分、ですけど……」


 なんてこった、だったら倒せないように作ってあってもおかしくないのか。才能がわかるのって、オマケくらいでしかないんだろうな。


「なーなー、いつまで歩いてればいいの」


「高原だけど山の上ってだけでなにもないよー、あと道合ってる?」


「合ってる合ってる」


「ふえー」


 冒険の8割は移動だぞ。その時間は退屈なもんだ。そんなことを思っていたら。


「……ん? 誰かなんか言ったか?」


 声のようななにかが聞こえて。


「言ってない」


「言ってないよー」


「私も聞こえました。これ、どこから」


 ……さーぃ


「ほら、聞こえた」


「ほんとだ」


「怖、幽霊?」


「さすがにそれはないと思う」


 4人でその場に待機し、周囲を探っていると。


『ギャアアァァァァァオオオオオ!!』


「おおおおおお!?」


「きゃっ!」「うわあ!?」「なになに!?」


 轟音と、突風。高原の草と土が、空へ巻きあがる。


「みんな! 上! 上!」


 エリスが上と言ってすぐ、俺たちは上空を仰ぎ見た。


「なんだ、あれ、でけえ……」


 竜が、大空を優雅に舞っていた。そして、足には、どこかで襲われたのだろう。掴まれた馬車。そして。


「誰かーーーー! 助けてくださいーーーー!!!!」


 そんな悲痛な叫び声が、馬車の入り口から顔を出した人から聞こえてくる。


 そして、俺たち4人の前に、ウィンドウが。


________________

 緊急依頼 No. 1/IIO


   竜に捕まった少女を救え 

 難易度:★★★★★★☆☆☆☆


 受諾しますか? はい/いいえ

________________


「マジか? クエストってこうやって発生もすんの?」


「噂には聞いてましたが、本当にあるんですね……」


「まあ、あのまま連れ去られて死なれても寝覚め悪いし……」


「受けましょうか」


「いこう! いこう! ドラゴン!」


「いこー!」


 そうして4人とも、緊急クエストを承諾するのだった。まずは、あのドラゴンを追わないとな。

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