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俺だけ持ってるゴースト特攻!? 〜最強退魔師(自称)はゲームでもゴーストから逃れられない〜  作者: 氷見野仁
クエスト6 学校が荒れる時は、内部の不良のせいではなく外部の権力のせい
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幽霊だって、サイエンス

 とりあえずエリスに説明することは今現在ないので、放っておくことにする。おそらく自分の部屋に逃げて布団かぶってることだろうから放置していても大丈夫。目下問題は目の前のふたりだ。気絶、いや座ったまま放心状態になっているのか?


「あーサネ、いったん消えておいてくれ」


『承知』


 俺はサネを再度隠し、ふたりの再起動を試みた。


 ちょっと時間はかかったが、なんとか再起動に成功し、ふたりは現実へと戻ってくる。


 現実から去るのはIIOをプレイしている時だけにして欲しいんだけどな。


「うーん、なにか見てはいけないものを見たような?」


「私も、きっと見ちゃいけないものが見えた気がします」


「幽霊なんてそんな非科学的なものいるわけないのにね。いろいろな学者もそれを証明しているし」


「プラズマで全部説明できるんですよね?」


「幽霊はいるぞ」


「「またまたー」」


「いるぞ」


「新多くん、それ以上言うと私泣きますよ」


 結衣が女の武器を使おうとしてくる。いるもんはいるんだからしょうがないだろ。


「わかった、まずは幽霊とはどういうものなのかの説明をさせてくれ。そうしたら変に怖がる存在じゃないって理解できると思う」


 俺は頭に???を浮かべているふたりを尻目に、幽霊とはなにかを説明する。


「まず、幽霊の大元は人が死んだあとに出てくる魂だ。成仏しない魂がどうとか言うが、そうじゃない。基本的に魂は死後必ず現世に残る」


「それなら、この世は幽霊まみれになってるはずじゃ?」


「そこなんだが、この残った魂は人は感知できない。俺のような見える側含めて。現世に残ると言っても俺たちの次元とは違うとかなんとか。このあたりはへーそうなんだくらいでいい、退魔師の中でも意見が割れる」


「なんか、次元とか、変に科学的です……」


「魂云々に限っては脳科学の延長だからな」


 そう、全体では非科学的(オカルト)でも魂の部分はある意味では科学的(サイエンス)で、ちゃんとした研究者もいる。退魔師が触れるのは、ここから先だ。


「そして、その魂となった人になんらかの未練......強い気持ちがあると、魂の次元から現世へと顕現する。それが幽霊だ。基本霊感がないと見えない」


「でも、私たちさっきの人見えちゃいましたよ……透けてましたよ……」


 今すぐこの場から立ち去りたいのだろう、ふたりとも震えている。


「さっきの人は普通の幽霊じゃないからな、それも順を追って説明する。その幽霊には2種類いて、通常霊と悪霊だ。俺は基本的に、この2種類のうち悪霊を相手に退魔師として活動している。家業の手伝いってのはコレだ。卒塔婆とか書いてる場合じゃないんだ」


「そうだったのか……夏の間そんなことしてたらIIOを知らないはずだよ……」


 どうやらしぶしぶだがふたりは納得してくれているようだ。続きを話そう。


「で、さっき疑問に出た幽霊が溢れないのかって話だが、結論から言えば幽霊にも寿命がある」


「「幽霊に寿命!?」」


「ああ、およそ400年と言われてる。これは俺たちの知っている『死』ではない。現世で活動できなくなり、あの世へと召され輪廻転生の輪に加わるまでの猶予期間って感じだ。まあ、宗派や宗教自体で解釈が違うが、仏教としては輪廻転生を推してる」


「なんだか頭痛くなってきました……」


「いきなり知らないことを説明されてもなかなか飲み込めないのはしょうがない。でも飲み込んでもらわないと困る。話戻すぞ。それで、幽霊の寿命は400年なんだが、稀にこの400年を超える奴が出る。普通はありえないんだが現世で徳を積みすぎて魂の総量が増大してたり、幽霊時代になんらかの方法で封印されてたりすると、400年以上生きることがある。そして、ここからが肝なんだが、魂になってからそのエネルギーが尽きず414年を超えると、その魂は神格を得る。その結果生まれるのが神霊だ。ゲーム内のリル、ウンディーネと名乗っていたが、あいつもその神霊の一種だと思う」


「幽霊とか神とか、ちょっと本当に非科学的すぎて信じろって言われても……」


「と、ここでサネだ。サネ!」


『はっ』


 俺はサネを呼び出し、再度ふたりの目に留まらせる。結衣と大雅は強張るも、話を聞いて少しは飲み込めたのか、ビクッとしただけですぐにこちらを見据えてくる。ここで口を開いたのは、大雅だ。


「……つまり、そのサネって人は神格を得ている神霊で、だから僕たちに見えるようにもできる、ってことだよね、新多の話を整理するなら」


「大雅、やっぱり頭いいな。よく今の話でそこまで予想できるな。そうだ、こいつは神霊だ。封印されてたから、助けた時にはすでに神霊になっていた。悪霊から神霊に転じた場合は問題だが、通常霊からの転生だったから消す必要もないし料理うまいから家に置いてる」


『恐悦至極に存じます。お屋形様のその寛大なお心持ち、痛み入ります』


「神なのに、すっごい腰低いね……」


『私は成り立てですので、神格などあってないようなもの』


「えー、幽霊と会話してますよ私たち、なんか変な感じです」


「とにかく、幽霊ってのはそういうもんだってことはわかってくれたか?」


 俺はふたりに聞いてみると、ふたりともなんとか飲み込めたようでウンウンと頷いていた。


「とりあえず、新多くんが普段なにをしているのかはわかりました。幽霊についても。でも、エリスちゃんが現実にいる理由の説明にはなってませんよね? あとリルちゃんが神霊だからって言われてもゲームの中なのでなんとも……」


「結論からいこう。幽霊と同じく妖怪も現世に存在していて、セレブラム・コーポレーション

はそいつらを捕らえ現世での記憶を消しゲーム内に聖獣として実装している。彼らは現実で生きている」


「「!?!?!?!?!?!?!?!?!?」」


 まあ、そりゃこうなりますよね。最初から妖怪が現実にいるって知ってても飲み込むのにちょっと苦労したからなあ、俺も。


「えっ、えっ!?」


「俺が学校を休んだ日、俺はエリスの居場所にめどがついていたから助けにいったんだ」


「え、でもセレブラム・コーポレーションがそれだけのことできるなら、黙ってないんじゃ」


「エリスの場合は少し事情が違った。とにかくセレブラム側には気づかれてないと、思う、思いたい」


「確実でないのは怖いけど、新多がそう言うなら信じるよ」


「……ん? ちょっと待ってくださいよ? ってことは、ユキちゃんとか、リルちゃんも、現実のどこかで生きてて、IIOに利用されてるってことですか!?」


「そういうことだ」


「ひっ、ひどい……!」


「本当だよ。なんでそんなことをする必要があるんだ!」


 よかった。幽霊や妖怪だから別に問題ないだろとか言われなくて。こっち側に引き込めそうだ。


「そこで、俺はゲーム内で聖獣と契約できるだけして、その上で居場所の検討をつけて現実で助けに行く、そういうプレイスタイルを取るつもりだ。だから、ここで、特に一緒にプレイすることが多い結衣にはどうするか決めてもらいたいなと思っていて」


「あの、実は私も伝えなきゃいけないことがあって……新多くんの話を聞くまでは一生黙っておこうと思ったんですけど」


「ん?」


 俺が結衣の意志を聞こうとすると、彼女は唐突に話の腰を折った。今の話の流れを折ってまで話をしたいことってなんだろうか?


「あの、ナイフかなにか持ってませんか?」


「ナイフ? それなら」


 大雅がそう言うと、バタフライナイフが出てきた。なんでそんなもん持ち歩いてんの?


「ありがとうございます。……えいっ!」


「ちょ!?」


「はぁ!?」


 そんな疑問を大雅にぶつける前に、結衣がナイフで自身の腕を刺した!


「なにやってんだ!」


 俺は結衣からナイフを取り上げる。腕はかなり深くえぐられ、テーブルの上には血が滴っている。


「あ、結構出ちゃいました、ごめんなさい、はじめてだったので……」


「なんでそんなこと……」


「ハァ、ハァ、痛っ……とにかく、見ててくださいね」


 結衣が俺と大雅に見てろと言う。血が出ている傷口に右手を添える。右手が、淡く光る。


「「は?」」


 しばらくののち、手を傷口から離した結衣は、傷口を近くにあった布巾で拭く。そこにあったはずの傷は、跡形もなく、綺麗さっぱりなくなっていた。


「「えぇ!?」」


「私、現実でも治癒術師(ヒーラー)になっちゃったみたいなんです」


「「えええええええええええ!?」」


 俺は、大雅と叫んだ。


 まさか、結衣の投げ込んだ爆弾は俺の投げ込んだ爆弾にも等しく、今度は俺が驚く側に回ることになるとは、露ほども考えていなかったのだ。


 これは、どういうこと?

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