霊とつくならなんでもゴースト
「へぇ〜、四大精霊なんだぁ〜」
「あっ」
「あっ」
「あっ。あ、アラタくん、顔怖いですよ……?」
「怖くもなるかもね……これは……あはは」
「ウンディーネ様、忠告しておきますが、今すぐお逃げした方が得策かと」
「はー? ニンゲン相手に逃げるわけないじゃん。バカ? あと先頭のお前、顔怖いから近寄ってくんな」
いやぁ〜、そうですかぁ、四大精霊ですかぁ、それはそれはさぞお強いんでしょうなぁ!
「いやいや、攻撃するよって言われて抵抗しないわけないだろ。まあまあ近寄ってこいよ」
俺は喜びを抑えきれず、手がバチバチと明滅してしまう。それを目ざとく見咎めたウンディーネが、少し後ずさりし、吠える。
「は、ハン! 私が雷に弱いと思って前に出てきたのかもしれないけど、魔法攻撃は全然効かないし、そもそも水なんだからニンゲンに掴めるわけないわ! 怖がる必要なんてないんだから!」
胸を張り、ドヤ顔をしだした。迎え撃つらしい。
「掴めるもんなら掴んでみなさいよ、バーカ!」
すでに俺のレンジ内。そこで、ウンディーネは挑発してくる。バカはお前だ。
「そんなに言うならお言葉に甘えて」
ガシィ! 俺は彼女の手首を掴む。
「へ? ……あ、あれ? なんで?」
ヒクッヒクッ、顔を引きつらせ、俺を見る。
「あの、あのあの、離してくれませんか?」
「無・理」
俺は悪い笑みを浮かべながらMPを霊力に変換し、ウンディーネに流し込んでやった。
「み゛ゃあああああああああああああああああああ!!!」
ウンディーネが、叫ぶ。
「うわぁーやった」
「溜まった鬱憤これでもかってほど解放してるね」
「……ウンディーネちゃん、かわいそう。見てられないです」
うちの3人が何か言ってる。
「いったあああ! なにすんのよ! 離せっ! 離せっ!」
ブンブンブン。ありったけの力で腕を離そうと振ってくるが、絶対に離してやんない。
リズムよく小刻みに、霊力を流し込む。
「み゛ゃっ! み゛ゃっ! ちょっ、やめっ、あやま、謝るから、やめ、み゛ゃっ!」
「散々ニンゲンだなんだと言われたし、いきなり攻撃されたからなぁ。これくらいじゃ足りないよなぁ」
「降参! 降参するから! やだやだ死にたくない! 助けて! み゛」
目の前の少女がだんだんしおらしくなっていく。透けていた、水になっていた肉体も、人間状態に戻ってしまっていた。
俺はまだまだあるMPを使い、リズミカルに霊力を流していく。すると、途中から声色が変わってゆく。すでにウンディーネは崩れ落ち、俺が腕を掴んで吊り下げる形で支えている状況だ。
「ッん……はっ、ほんと、ほん、とにやめ、これホントヤバいからぁ! ヤバいからぁ! ン゛っ」
どうだ? 昇天しそうだろう。そうだろうそうだろう。なに、気にせず逝け。遺品は拾ってやる。俺のキルスコアとなれ。寄生虫扱いから逃れさせてくれ。
ビッ、ビッ、バチバチ。緩急をつけ霊力を流し込み、少しずつ敵のHPを減らしていく。スキルを使う暇など与えない。エルダーリッチの時と同じ轍は踏まない。
「やッ、ちょ、ま、ホント、ホントコレ、ダメ、ダメだから! はっ、はっ、ダメダメダメダメ!!! 耐えられない!!! 無理ィ! ごめんなさい! ごめんなさい! 契約! 契約する! 契約するからやめて!」
「は?」
カッ
目の前のウンディーネが光り、祭壇に海結晶を捧げた時のような眩さが、俺の目を潰す。
「ぐあああっ!」
俺は、手を離してしまう。しまった! 反撃される! しかし、その予想された反撃はなく、光が収まったところには、崩れ落ち、肩で息をするウンディーネが。
「はぁっ、はぁっ、やっ、ヤバい、ヤバい、ハマっちゃう、これハマっちゃう……」
目の前のウンディーネが、なにやら言っているが声が小さく聞き取れない。
ただ、動いてないのは上々。このまま消してやる。俺はじりじり近づく。
「ストップ! それ以上近づくな! んっ」
ウンディーネが這って少し下がる。
「待てとかストップって言われて止まる敵がどこにいるんだ」
「残念でした! もう敵じゃありません!」
ウンディーネがそんなことを言い出した。
「そう簡単に敵味方変わるかよ」
「ステータス、見なさいよ、バカ」
「ステータスだぁ?」
俺は、自分のステータスを見た。そこには。
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契約中の聖獣:ウンディーネ(四大精霊)
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と。えっ。
えっ。
既視感。
思考が止まり、数秒。
「はああああああああああああああああああああ!?」
俺の叫び声が、海の洞窟に、木霊した。
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イベントNo. 1/IIO
海の洞窟 ダンジョン攻略クリア
難易度:★★★★★☆☆☆☆☆
報酬:アイテム各種
召喚石
ウンディーネ(四大精霊)
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