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俺だけ持ってるゴースト特攻!? 〜最強退魔師(自称)はゲームでもゴーストから逃れられない〜  作者: 氷見野仁
クエスト3 イベントでもらえる物やその質、プレイヤーのレベルに左右されがち たぶん前編
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隠し部屋の発見は、破壊が肝心

 そんなこんなで現在第4層、海の洞窟だけあってそんなフロアもあるだろうなと思っていたが、これは完全に……。


「いや、海じゃん」


 ロビーとは違う、夕焼けの照らす幻想的な光景が広がっていた。


 階段降りたら、島でした。嘘じゃないよ。


「え、なんで? ダンジョンだよね? 海の洞窟だよね? なんで洞窟内に空と海が広がってて島が浮いてるの?」


「あはは、ダ、ダンジョンだからとしか……」


 オーガ9が少し苦笑いしながら答える。


「ダンジョンは、なにも洞窟の中を進むようなものだけではありません。これはゲームですから。それよりも、掲示板によると5層にセーブポイントがあるようですので、そこでセーブして、今日の探索は終わりということでいかかでしょうか?」


 ホリィさんがそう提案し、俺もユイナもオーガ9も同意する。セーブポイントでセーブして、そこからロビーに一旦戻れるらしい。


 思ったよりも長丁場のダンジョンのようだ。土日あっても足りないのではなかろうか? 周回となると......ゾッ。


「一週間まるまる使えるわけじゃありませんからね」


 ユイナがそんなことを言う。その通りなのだ。高校生活というRPGを現実でプレイする我々にとって、ずっとIIOを遊べるわけでもなく……。


「じゃーさっさとここ抜けちゃお。なんかオバケでそーだからアラタ先頭ね」


「オバケじゃなかったら俺死ぬんだけど?」


 1層は弱いモンスターしか出なかったが、3層からレベルが上がってきた。難なく倒せてはいるが、それでも俺ひとりで正面に出されたら死ぬよ。


「死んでもリスポーンするから」


「でも最初からだろ〜?」


 ユキが俺の死を肯定してくる。そんなこと言う子に育てた覚えはありません。


 でも確かに、夕方、南国の島、よくわからん鳴き声で鳴く鳥。出てもおかしくはない。


「予想だけど、遺跡かなにかがあって、そこの内部を下って5層に行くタイプだと思うんだ。だから、島の中を探って遺跡を見つけたいな」


「燃やしちゃえば?」


 コイツ、倫理観ゼロか!? 


 エリスが島の中心にある森の方を指差し炎で燃やしてしまえと提案してくる。アホなこと言うな。


「いや〜、水分量多くて燃えないんじゃないかな〜……?」


 オーガ9も真面目に返答しなくていいから。アホがうつるから。


「とりあえず探検しよー! ゴーゴー!」


 ユキがそのへんにあった木の棒を拾って、森を分け()っていった。


「あっ、ユキちゃん待って、ひとりで行かないでくださーい!」


 それをユイナが追いかけ、ここで分散するのは得策ではないと考えた残りのメンツは、ふたりを追い森の中へと入って行った。


 ☆


「はぁ〜、でっか!」


 遺跡は、わりとすぐ見つかった。ユキがガサガサ分け入ること数分。川のほとりにかなり大きめの、苔むした石積み遺跡がお目見えした。


 見た目は、マヤとかアステカ文明でおなじみのあの生贄の祭壇みたいだ。


 しかし、ユキはLUK高くないか? このゲーム、才能を鍛えるという名目上ステータスはマスクデータになっている。ただ、ステータス自体はあるんだろうなと実感する出来事は多い。ユキの幸運(コレ)もそうだ。


 先ほどから、ユキが倒したモンスターだけドロップ率がいい。他の人の何倍もドロップしてるし、それにこの遺跡探しだってそうだ。島自体はわりと広いのに、こんなにさくっと見つけた。


 多分、俺が先頭だったらここには来なかっただろう。


「よし、じゃあ(くだ)っていこうか」


「そうだな」


 石積みの遺跡にぽっかり空いた穴から、内部へと入っていく。中は、石造りの壁に屋根に……説明するの面倒だから割愛するが、ザ・遺跡だ。


 出てくるモンスターは……。


「アンデッド多いな。遺跡だから理解はできるんだけど」


 この遺跡はスケルトンや、ドレインバットが多い。エルダーリッチみたいにゴースト属性混じりはいないらしい。


 アンデッド、ゴースト属性よりは倒せる人は多いが、それでも聖属性以外の攻撃はまともに通らない、難しいモンスター属性のひとつだ。俺たちのパーティー以外は。


「いや〜、まさかユイナさんも聖属性魔法が使えるとは思わなかった! だからあの装備だったんだね」


 ユイナとホリィさんがアンデッドを倒していく様を見ながら、タンクとして攻撃を引き受けているオーガ9が言う。どうやら嬉しい誤算だったようだ。


「アンデッドとゴースト属性の討伐で差がつくとは思ったけど、これは期待できるね」


 スケルトンを二人が引き受けている裏で、エリスとユキがこじんまりとした攻撃でドレインバットを倒す。派手な技が好きなふたりは、少し不満げだ。


「なんか、飽きてきたな」


「ね、飽きてきた」


 ダンジョン攻略を舐めてたのだろうか、園児どもが集中力を欠いてきた。


「おい、ちゃんと集中してコウモリ倒せ、スケルトンがこっちこないだけマシだと思えよ」


 そんなことを話しながら遺跡地下通路を進んでいると、階下へつながる階段を見つけ出す。これは……。


「5層へ繋がってそうじゃないですか?」


 っぽいな。俺はそれに首を縦に振り肯定すると、後方から 『『『キキキキキー!』』』とドレインバットの群れ。めんどくさいな。そんなことを考えながら振り返る。しかし、ユキだけはそうではなかった。


「お兄ちゃん、あとは降りるだけだし、この遺跡、どうなってもいいよね?」


 目が据わってる。これは……ヤバイ!


「全員階段に退避!」


「えっ!? えっ!?」


 俺はエリスを抱え上げ、ユイナの手を引き階段に飛び込んだ。オーガ9とホリィさんは察しが良く、一足先に階段に飛び込んでくれていた。それとほぼ同時。


「【氷殺槍(アイシクルランス)】」


 ユキは氷山を作り上げ、それを、投げた。ズゴゴゴゴゴゴ!! と、遺跡では(つい)ぞ聞くことのないサウンドが響き渡り、石壁や石床を巻き上げ、煙が発生し、その余波は階段奥に避難していた俺たちにまで及んだ。HPがちょっとだけ減る。


「ユキ! 鬱憤(うっぷん)晴らしにモンスターを使うな!」


「えー、でも面倒だったし」


 ユキはいたずら好きな反面、イライラする期間が続くと稀にこうなるっぽいのだ。そういう意味で、この層は少し退屈だったか……!


「あ、はは、僕たちに被害はほとんどなかったし、いいよ」


 そうオーガ9が呆れを混ぜながら笑い、全員で階段から這い出て、一旦遺跡へと戻る。


「あーあーあー、ユキ、これはひどいぞ。現実だったら考古学者から八つ裂きにされて、生贄の祭壇に捧げられてもおかしくない」


「ここ現実じゃないし」


「そうだけどさぁ……」


 そういうことじゃないんだけどな。でも現実知らない聖獣にそんなこと言ってもしょうがないか。だいたいこういう建物に憑くのが座敷わらしなのに、いいのかよ? 歴史的建造物にこんなことして?


 そう考えながら、ユキが破壊した通路の方を見る。そこには、ドレインバットの群れがドロップしたであろう牙が数本と、レアドロップのバットの血清、そして。


 壁で隠れていたのだろうか、壊れた部分から隠し部屋の入り口が、お目見えしていた。


「嘘だぁ」


 俺が短く言い。


「ハ、ハハ、ここまで都合よく幸運だと、さすがに笑っちゃうよ」


 オーガ9が乾いた笑いをし。


「さっすがユキ! 僕の妹!」


 エリスが喜び、ユイナは唖然。ホリィさんは常に平常心かと思っていたが、この時ばかりは少しだけ表情が変わり、驚いた様子で。


「結果オーライだから、許してくれるよね?」


 ユキはニコニコしながら、俺に問いかけていた。

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