ダンジョン1層、基本出るのはゴブリンかスライム
『よーし! みんな揃ってるね! それじゃあルールを説明しちゃうよー! ちなみに、このイベントは一週間続くから、今時間ないって人は退出しても、アーカイブでルール説明見られるから安心してね!』
その発言を聞いたからか、数人がログアウトしていった。ログアウト光が綺麗だ。しかし時間がないのに参加しにくるとは、とんでもない人気だな、IIO。
『……うんうん、あとは今すぐ参加する人たちだね! じゃ、はじめるよー! このイベントマップは、イベントの要であるダンジョン、海の洞窟へ行くための休憩所、ロビーになるよ! みんな、浜辺にある海の家を見て!』
そうワカシに促され、浜辺に設置されていた海の家を見る。
『その海の家は、焼きそばとかの海で楽しめるフードを売ってるのは使った人はわかってると思うんだけど、今から店員が一人増えます! その人は、イベントで使える便利アイテムを売ってくれるよ! 次は、海の家の横を見て!』
全員ワカシの視線の先、海の家の右隣、『建設中 ご迷惑をおかけします』との文言とワカシ作業員の絵が描かれた看板と、移動を制限していた区画ロープが消え、ドン! とコンビニエンスストアのような建物が建った。
『ダンジョンで倒したモンスターからは、ドロップのほかにポイントが得られるよ! そのポイントは、武器とか、防具とか、スキルオーブとかのアイテムとか、いろいろなものと交換できるよ! 交換にはそのお店を使ってね!』
スキルオーブ!? 初耳だぞ! まさか、スキルが得られる!? これは気合を入れなくてはなるまい。
『最後に、上位入賞ボーナスだけど、これは公平にするために、ダンジョン攻略1回での総モンスターキル数にします! 出現モンスターの分布とか、属性とか、トラップの位置と数とかは完全ランダムだから、ガンガン挑戦してよ! 運がいいと、1回の攻略で上位入賞もあるかもね!』
うおおおおおおお! すごい熱気だ。 真夏の青い海、燦々と照りつける太陽、ヤシの木、ワカシ、そして、海の洞窟。初イベントとしては、上々ではないだろうか。
いや、やっぱりワカシはいらないか。
『それでは、スタート! あの岩場の先に入り口があるから、どんどん挑戦してね! じゃ、次は結果発表で会いましょう! ばいばーい!』
そうワカシは言い放ち、フッとホログラム投影が消え、沖でバシャっと水が跳ねた。その水の跳ねを合図に、浜にいた人間は、ドドドドドドド!!! と地響きを起こすほどの膂力で、岩場の方へと走って行ってしまった。
「しまった、出遅れた……!」
「ははは、焦ってもしょうがないよ。上位入賞するには運も必要みたいだし、ゆっくり行こう」
「「装備ほしーい!」」
君たち、さっきもらったでしょ。
「頑張りましょうね、アラタくん!」
「おう、がんばろうな」
皆、気合十分だ。
「オーガ様」
「うん、そうだね。じゃあ、行こう」
そう軽く会話しながら、静かになってしまった浜を背に、6人で洞窟へと向かうのであった。
☆
浜から少し離れた岩向こうについた俺たちは、圧倒されていた。
ぱっくりと大穴が口を開け、俺たちを待っていたからだ。
「これが、海の洞窟? これは、思ったよりも……」
「広そ……」
「実際かなり広いみたいだね……もう攻略をスタートさせてるチームが掲示板に書き込んでるけど、どうやら一筋縄ではいかないみたいだ」
「少なくとも、1層で終わるような簡単なダンジョンではないようですよ、オーガ様」
オーガ9とホリィさんがウインドウを開いて情報収集をしているが、始まったばかりだからかとくにめぼしいものはないようだ。
「イベントなので危険はないですし、1回行ってみませんか?」
「いこいこー!」
ユイナとユキがスタートを促す。エリスほど表には出していないが、かなりワクワクしているようだ。ユイナに関してはもともとゲーマーらしいからなぁ、ワクワクが抑えられてない。
「うし、とりあえず情報収集はそれくらいにして、行ってみよう!」
「ごーごー!」
そして俺たちは、海の洞窟入り口に設置されたポータルへと吸い込まれていった。
☆
洞窟内に転送された俺たちの目に飛び込んできたのは、スライムだ。
「お、スライム」
「スライムは属性魔法攻撃しか効きませんし、エリスちゃんの火属性魔法がいいと思います」
ユイナにそう促されたエリスは、ドヤ顔をしながら攻撃魔法を唱えた。
「【狐火・弱】!」
どうやらこの間の暴力的な鬼火で学んだのか、使ったのは狐火、しかも弱威力。
火の玉はそこそこのスピードでスライムに吸い込まれ、その命を散らした。
「やった!」
エリスは喜び、倒したスライムのドロップアイテムへと近づき、ツンツンしだした。
「うぇーねちょねちょしてる、気持ち悪〜」
「スライムの粘液だね。ドロップアイテムだからインベントリに収納できるよ。アラタ」
「はいよ」
俺はインベントリを開きスライムの粘液を回収する。エリスがつんつんしていた粘液は地面から消え、俺の中に『スライム粘液(緑)』として保管されることとなった。使い道は、わからん。
そんなことを繰り返しながら、俺たちはダンジョンを攻略していくのであった。





