まともな研究なら皆が見れる都市部でやれ
湖に幽霊が出ると言われても、それ以外の前情報がない。とりあえず湖畔を散歩することにした。聖獣幼稚園初代園長本堂新多として、ここはふたりを散歩させねばならない。
「へーでも綺麗なトコ! 夜空もきれいだし! 来てよかったじゃんね、ユキ!」
「そうだね、エリスちゃん!」
うむうむ、はしゃいでる子供達を見るのは苦しゅうない、苦しゅうないぞ。俺も広義では子供だが、それでも俺からしたら年下は全員子供だ。
しかし、空気がきれいだ。本当に幽霊なんて出んのかよ。ここ。
そんなことを考えながらしばらく歩いていると、俺の悪霊レーダーがビンビンに反応しだす。
これは……臭う、臭うぞ……! 俺のレーダーがビンビンに指しているのは、湖畔に建てられたロッジのような建物だった。これは......かなり大きいな、別荘か?
この綺麗な湖畔に人がまったくいないのは、もしやあのおどろおどろしい雰囲気のロッジのせいだろうか? 俺としてはさっきから興奮しっぱなしなのだが……。
いやァ〜、来てよかったァ〜〜!!!
「アラタ、キモーい」
「お兄ちゃん、きもーい」
「ユキ、悪いお姉ちゃんの言葉を真似しちゃいけません!」
ケラケラとユキが笑う。だいたい自分の好きなことに興奮してなにが悪いのか俺はわからない。
「悪霊でても助けてやらないぞ」
「「……ごめんなさい」」
「わかればいいんだ」
こいつらは、俺と行動している時点で俺にはマウントを取れないということをそろそろ理解するべきだ。
「おじゃましまーす」
ロッジのドアをギィィィ、と開け、中に入る。鍵はかかってなかった。内装としては、入り口付近に2階に上がる階段があり、その先に部屋が何個か見える。一方で、1階は大広間としてワンフロアぶち抜きになっていた。
金目のものは……特にないな。本とか資料くらい。なにかを調べていたらしい。1階には霊の気配がない。俺たちはそのまま2階へ上がる。
「この雰囲気でルンルン気分で2階に上がってくアラタってなんなの? 本当ヤバイ」
「それがきっと、お兄ちゃんのいいとこなんだよ……」
後ろから悪口のような文言が聞こえてくるが、今の俺はハイになっているためそんなもの気にしない。正直そろそろ霊を殴らないと発作が出そうなのだ。
幽霊の気配が周りにないと起こらないが、幽霊が近くにいるとどうしても抑えきれない。
2階の一番奥、書斎であろうか、その部屋から霊の気配がする。俺は廊下をスタスタ歩き書斎の前まで行き深呼吸をする。エリスとユキは俺の後ろをおっかなびっくりトテトテついてくる。
俺はふたりが追いついたのを確認するやいなや、正面のドアを勢いよく開けた。
「頼もう!!」
バン! とドアが開く。 そして、ドアの先には、ロッキングチェアに座ったミイラが。
「「キャーーーーーーーーーーーーーー!!!」」
ケモミミ少女と座敷わらしが叫ぶ。うっさ! ミイラくらいそんな叫ぶようなことでもないだろ。たまに見る。俺が気になったのはそこではない。
『おや、夜にお客さんとは珍しい。いらっしゃい』
そのミイラの霊であろう。優しそうなおじいさんが、ロッキングチェアの後ろに立ちこちらを見下ろしていた。
「「……おじいさん?」」
ふたりともゴースト属性なので、当然だが幽霊が見える。
「すまんな、アンタの家にズカズカ上がり込んで。ただ、どうしてもやらなきゃいけないことがあってな」
そのままズカズカと部屋に踏み入る。ふたりが入るのを渋ったので首根っこを掴んで引き込んだ。おまえらも幽霊みたいなもんなのになんでこれがダメなんだよ。
「で、じいさんはなんでずっとそうしてんだ?」
『ほほほ、どうにも成仏できなくてねえ』
「自分が死人だってわかってるならさっさと成仏したらどうだ」
『どうやらワシには未練があるみたいなんだ』
「そのようだな」
『そこでだ、君たちは、私の未練を叶えてくれないかい?』
おじいさんの霊は、俺に依頼を出してくる。これで依頼が進む。そう思ってもおかしくない、だが、俺はあることに引っかかっていた。
それは、依頼が「湖の霊の討伐」であるということ。未練を叶えるとかではない。そして俺は目の前の霊に聞きたいことを聞いた。
「なあじいさん、その未練を叶える前にひとつ聞きたいことがあるんだが……」
『ホホホ、何かね?』
「アンタ、今まで何人殺した?」
『……余計な思考は、身を滅ぼすぞ、小僧』
そう悪霊が言うと、床のカーペットの下に描かれていたのだろう、魔法陣が光り輝く。
「エリス、ユキ、絶対に俺から離れるなよ!」
エリスとユキが目を瞑り俺の腕と足をガッシリ掴む。離れるなってそういうことじゃないし、動きづらいから離れて欲しいんだが……。
そんなことを考えていると、
『せいぜい頑張って生き残ることじゃな』
悪霊は捨て台詞を吐き、俺たち三人は転送魔法陣で、別の場所へ転送されたのだった。





