「12時間と12時間」 選択2<状態の扉>
<状態の扉>
「”状態”だな……状態を利用する!!……時間と共に変化する、状態変化を利用するッ!!」
少年はそう言いうと、トンボ等に向かって全力で走り出した。
トンボと少年の距離--約20m
状態を利用するとは一体どうゆうことなのか……
6m程走ると、少年は足を止めた。ズズザザッ!と砂煙を上げたため、靴に砂が入ってしまう。
足を止めると、ぐぅぅううんと少年の左に浮遊していた巨大な刃が動き出す。
「ぶっ壊す!!!……ぶち壊す!!」
刃はゆっくり動き出し……
=ボッォゴュォオオン!!=
さっきまで登っていたバスを……横から殴るようにぶっ壊した。
バスは砂埃をあげる……バスの側面は刃の衝撃を受けて、
無数の欠片となりトンボの群れを包む程に散漫する。
バスを砕き、破片をトンボに命中させようとしたのか……しかし、威力が足りずコツコツと当たった程度であった。
--のーだめーじ。
「これでいい…………このバスは砕け散った……今!!破壊され鉄となった。バスから鉄への状態変化。」
少年はそう告げる。
砂煙が収まると、不可思議な模様が露わになる。
…………少年の真横に謎の模様が浮き出ていた…………
半径6センチ程の時計の上に、横三角形という模様が「▷」、
どうやらホログラムの様だ…………それが、バスのぐりッと抉られた場所に浮き出ているのだ。
逃げるトンボを見つめ、少年は言うのだ。
「12秒前の状態へ、バスをぶっ壊す前の……元の姿へ……」
「今だッ!!……二倍速で戻り始めろッ……!!!」
少年が指を指してそう叫ぶと、少年の真横にあった模様が変化した。
縦二重線が変化したのだ、その形は左三角形が二つ。「◁◁」
すると、空中にまい落下している石がグググッ……っとその場で留まったかと思うと。
=!!ノオオウヨゴウトボド=
逆再生のような音が鳴り、石が弾丸のように元あった岩の元に戻っていく。
まるで、吸引力の強い物に引っ張られるかのように……
3秒もたたないうちに、石は一点に集まった。
欠片と欠片がぴったりとくっつき、最終的に壊す前のバスとなった。
トンボ等の頭や羽、体を貫く。……一瞬の出来事だった。
=ヴヴウウヴ ヴウヴヴヴ ウヴヴウヴ…………=
=ヴウヴウ ヴウヴヴ ウウ ヴウヴヴウ
ウヴウウウ…………=
2匹は運よく逃げてしまったが……5匹、その場にボトボト落下した。
「やったぁあああ!!…………大成功ッ!!」
思い描いた通りの結果となって、少年は大きく喜び、跳ねまわった。
ダッシュで、トンボの回収に向かう。
……暗かった少年の顔は、一点の曇りのない笑顔に変わっていた。
少年が自由自在に動かしていた「ガジェット」とは……一体何なのか。
生まれつきの力なのか、何かのきっかけで身についたのか、修行し手に入れた産物なのか……
はたまた、誰かから与えられたものなのか。
この世界は何処なのか……地球のどこかにあるのか、異次元の世界なのか、誰かの夢の世界なのか、
はたまた、誰かが創り出した世界なのか。
そもそも、この少年は何者なのか。あの母親らしき人は……?
真相を知ることが出来るのは、もう少し後の事。