トンボは食べ物 ~旅立ち列車・編~
旅立ちの列車・編 はじまり、はじまり。
物語が存在する。
1つ、1つの物語に「世界」が存在する。
独自の環境、言語、表現、理解--
例え、物語が終わったとしても続く世界がある。
ここに、5人の青年たちのエゴによって生まれた少年の物語が始まる。
「世界」が--誕生します。
NOCK||NOCK!!
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くせっけのある茶髪はそよ風に揺れる。
ちょっとおっきい紺色の半ズボンは、下から見たら白いパンツが見えてしまうだろう。
先ほど洗濯し終わった白いタンクトップは既に砂まみれ。
少年は、虫を追いかける。
ジグ・ザグ・ジグと
縦横無尽に飛行する虫を追いかけめぐる。
そんな少年を取り囲む景観、
・錆び付いた豪華客船が、
目前に広がるエメラルドの海に停滞する。
・汽笛を鳴らすSL列車が、
曲がりくねりそよ風流れる頭上で停まっている。
・黒煙吹き出す飛行機が、
夜空と青空が混ざった不穏な空に不動となって鎮座する。
海にブツンと突き出る一島があった。
よく見ると、その島は幾つもの廃車となった車やバスが積み重なってできている。
何年もそのままなのか……小さな砂浜が出来ていたり、所々に草木が生えて、様々な生物が暮らしていた。
そんな豊かな島の上、必死になって虫を追う。
島の一番標高の高い所にキャンピングカーが……
さび付いたボロキャン車があり、その屋根上で長茶髪の女性が洗濯家事をしている。
その女性は、ふと忙しく動かす手を止めて走り回る少年を見つめた。
「ふふッ……忙しそうね」
一言つぶやくと、青いTシャツをバサバサと皺を伸ばし--家事を再開し始める。
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少年の追いかける虫は、まさに「トンボ」であった。
しかし、少年の追う虫はあの逞しくてかわいい「ギンヤンマ」だとか「オニヤンマ」ではなく……
体長70㎝の化け物級の青いトンボである。
=ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ=
(”==”は、音の表現だよ!)
「はぁ……はぁ……はあああああ……速すぎッ!!
……追いつかないよッ!!」
羽音をたてながら、
ギュンギュンと少年から逃げてゆくトンボ……
時速30~40キロ程のスピード--10歳位のキッズが追いつく筈がなかった。
しかし、少年はあきらめない。
「はぁ……はぁ……くっそぉ……お前お前ッ!!
……はぁ…………絶対お前を食べてやるッ!!」
<調理方法>
青く長い腹の部分と透明な羽をもぎ取り、熱々に熱した油の中に投入。
じゅうじゅう揚げること7分--トレーに移して油を切る。
好みのお皿に盛りつけて、塩を少々(お好みで醤油など)ふりかけて完成!
……さてさて……お味は?…………!!
めちゃうま!!ほっぺとろけちる。
そう、トンボの揚げ物は少年の大好物!!
今夜の晩御飯にするべく島の端から端へと駆け巡り捕えようとしているのだ。
しかし、既にトンボは霞んでいた。……距離を大きくとられ遠くに霞んで見えていた。
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今晩の食材トンボを見つけて駆け巡って数分。
スピードの鬼・スタミナの宝庫であるトンボは、少年の眼中から消えてしまっていた。
少年は帰路をとぼとぼと歩く。
視線を落とし・肩を落とし・背中の曲がった
その姿を見たのなら、
誰が見ても(ああ……この少年は落ち込んでいるのだろう)すぐに理解できる。
「うぅう……”ガジェット”使えばよかったなぁ……」
小屋のたつ丘を登り始めた時の事……
少年は、バスや車が積み重なって小さな崖となった場所を発見した。
数秒間見つめた後、足をそちらの方へと進める。
特に何かを思いついた訳ではない。しかし、何か魅かれるような感覚がしたのだ……。
分かりやすく例えるならば……他人の駐車している自動車の内部を……
プライベートな部分を覗くような感覚である。
少年は、ちびっと期待する。
ちらり覗いたら、トンボがいるかもしれない。
少年はバス上から、身を乗り出して下を覗く……
そこには、ちょっとした広場があって、ボンネットやハンドル等が散漫し
少し奥には海波が音を立ててさざめいていた。
突然、少年は感じた。
体が……心臓が飛び跳ねたかのように感じた。
バッ!!……と思わず体を伏せる。
心拍数が上昇し!!呼吸が荒くなった!!--ドキドキはぁはぁ!
=ヴウヴ ウヴウヴウ ヴウヴ ウヴウヴウ=
=ヴウヴウ ウヴウヴウ ヴウヴウ ウヴウヴウ=
=ヴヴヴヴ ウヴウヴウ ヴヴヴヴ ウヴウヴウ=
=ヴウウウ ウウヴヴウ ウヴウヴウ ヴウウ
ウウヴヴウ ヴヴヴヴ=
=ウヴ ウウウウ ヴヴウヴ ヴヴヴヴ=
=ヴウ ウウウウ ヴウヴウウ ウヴヴウ ヴヴウヴ=
=ヴウヴウウ ウヴヴウ ヴヴウヴ
ヴウヴウウ ウヴヴウヴ ヴヴウウ ウウ=
先ほど少年が追いかけていた、ばかでかトンボ。
(群れだ!!虫の群れ!!……1……2……3……
ふん……ふん……6匹!?6匹もいるぞっ!!)
正確には7匹であったが。--そこには、
ヴヴウウッと羽音を鳴らし、
群れを成すトンボ達が居座っていたのだ。
あまりにも唐突な好機!少年は喜びと、集合体に対するの気持ち悪さを同時に感じていた。
--ぞくわく
群れの中に、触覚の手入れをする固体。自由に飛び回る固体。石のように動かない固体。
ねずみや小魚をバリバリ食べている個体もいた。
どうやら、少年に気が付いている個体はいない様子……
(訪れたチャンス!!……タイムチャンス!!)
少年はズボンの両ポケットから、2つのアンティーク懐中時計を取り出した。
両手の中で、ギュッと握られた時計はカチカチと時を刻んでいた。
少年は伺う。突如現れたチャンスを必ず物にするために。
(そういえば……お母さんが言ってたな……ええと…………虫は遅い動きに弱いんだっけ?)
のそり……のそり……少年はゆっくりと動く。
群れの位置から、四つん這いになってバス上をゆっくり動く少年の姿が見える。
しかし、ゆっくり動いているので……群れはそれを、天敵と理解することが出来なかった。
(上からはダメだ。海に逃げられるかもしれない……うん、崖の左側へ回ろう……左から仕掛けよう)
トンボと少年はこれから対面する。……少年はドキドキしていた。
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バスの尻側、左側から周った少年。群れを数秒見つめてうなずいた。
(ここが、ジャストポイント!!)
=ヴァッ!!!=
ちょっとしたジャンプをして砂の上に叩きつけるように着地する。ついに少年は飛び出した。
その大きな音に反応したトンボ達は、いっせいに少年に対し熱い視線を向ける。
仁王立ちをする少年も対抗し、トンボたちに熱い熱い視線を送る。
トンボ達と少年の視線がぶつかり合ったとき。
群れが動き出す。
=ヴヴヴヴ ウウ ヴウ ウウ ウヴ ヴヴ ウウヴ ヴヴヴウ!!=
=ウヴウヴヴ ヴウヴウヴ ウヴウウ ヴヴヴヴ ヴヴ ウウウヴ ヴヴウヴ!!=
=ウヴウウ ウヴウヴウ ヴウヴヴ ウヴ ウヴウ ウヴヴウヴヴ ウウヴヴウウ ウウ!!=
=ヴウウウ ウウ ウヴ ウウヴウウ ヴウヴウヴ ヴウヴウウ ウヴウウ ウウ!!=
=ウヴヴウ ヴヴウウ ウウ ヴヴヴ ヴウウヴ ヴヴウヴウ ヴウ!!=
=ヴウヴウウ ウヴヴウ ヴヴウヴ ヴウヴウウ ウヴヴウヴ ヴヴウウ ウウ!!=
=ウヴウヴヴ ウウ ヴヴウヴウ ヴウ!!=
トンボたちは少年から逃げようと、颯爽と奥の方へ逃げ出した。
きっと崖上から、襲撃していたのなら……海の方へと逃げられていただろう。
「おっけいッ!!……みんな、同じ方向へ
逃げているッ!!……やってやれるッ!!」
少年は自信に満ちた表情の笑みを浮かべた。
「めちゃかっこいい……ガジェットを見ろッ!!
……僕のガジェットだぜ!!」
突然!!少年は手に握っていた二つの懐中時計を空中へ放り投げた。
すると、懐中時計から30㎝×30㎝の機械仕掛けの箱のようなものがガチュガチュっと中から飛び出し……大きな目覚まし時計のような……時計のついたダイナマイトのような姿となった。
両腕を胸の前に交差させ……中指と親指を合わせた……
=バィチンッ!!=
指ぱっちんをキメると……両腕を後ろへ回し、
ピンと腕を伸ばす。
体を90°グーっと曲げ前屈姿勢になると……これでフォームが完成がある。
=バシャュコン……!!=
=ボシャュコン……!!=
2つ……ダイナマイトの様な懐中時計から、それぞれ勢いよく1m50㎝程の刃が飛び出した。
刃が飛び出ると、2つのガジェットは空中に浮遊し、少年の左右で固定された。
「12時間と12時間ッ!!(だーす・とぅ・だーす)
--”位置”と”状態”の力!!」
肩幅に足を開き、体を前に倒して、腕は後ろに伸ばす。
顔を上げて、トンボを睨みつける。
……少年の腕の横には、1mを超える刃の切っ先が2つ大きくたたずんでいた。
これが……彼の……少年の覚悟のスタイル。
戦闘のスタイルである。
「逃げられないッ!!……2つの刃を見たのならッ!!」
トンボは逃げまどう、少年は追いかける。
先ほどと同じような状況ではあるが……今度の少年は違う。
(”位置”と”状態”--どっちで襲撃しようかな……)
<CHOOSE YOUR DOOR>
次回……位置の扉 or 状態の扉
ゲームブックのような選択肢が生まれました。
どちらかを選択して、
目次へ行き、その選択したお話を読もう!!
実はコレ、17の時に執筆していた小説なんです。
手淫感覚で創作していたモノなんですよね。
言い回しとか、少し幼稚だなって……思いません?