第五話 リセットされる
どちらに軍配が上がるのだろうと思ってきたが、忘れてはいけないのは未希は創介さんの不倫相手であり、身を引く準備は既にできてるということだ。
未希は昔から私に何事も腹を割って話してくれるので、彼女の恋愛を見届けたいなとは思っているが、男の人に心から身を委ねるのがあまり得意ではないようだ。
「さくら、私彼に感謝はしてるんだ~」
未希は創介さんといることで知ることのなかった自分を知ったと言う。
「最初の頃は一緒にいるとぽーっとなるって言ってたもんね」
あの頃は会う度に好きって言ってくれてたなぁと彼女は懐かしむ。
「神様はどうしてあんたたちを引き合わせたんだろうね」
「相通ずるって感じではなかったけど、最初の印象はよかったわ」
しかし今思うとそういうのは創介さんのお得意分野だったのかもと未希は皮肉っぽく笑う。
「快活そうな感じだよね」
「不倫相手としては上出来だったかな・・」
未希は入れてくれたお茶に茶柱が立っているのを見せてくれると、もうはっきりさせないとねと言った。
正直解放されたような気分になってしまった。
先日未希が突然もう自分たちの関係を終わりにしようと言ってきたので、俺の返事はイエスだった。
「ためらわないのね」
彼女がくすりと笑うので、俺は自分自身に動揺してしまった。
「喜んでるように見える」
相変わらず苦笑する未希に、何を言うのだと俺は文句を言いつつも、自分の身を守れたような気がして楽になった。
「これからは奥さんを大事にするよう心掛けること!」
「分かってるけどさ・・」
「彼女にはこれから産みの苦しみが待ってるんだから」
心の拠り所だった女性からそう言われると何も言えなくなってしまう。
「・・・。気付いてたか」
やはり女の勘はスルドイなと思っていると、未希は自分に遠慮なんていらないのにと言った。
「奥さんと平等の扱いなんて望んでなかったわよ、私」
そういうところも好きだった。
彼女はさてとと言うと、感傷的な顔をしている俺にはやく自分にぴったりの男を見つけなきゃと微笑んだ。
俺はさよならのキスをすると、まるで振られたみたいな顔をして彼女の部屋を後にした。
リングアウトです(>_<)