現金強盗事件 6
「おはようございます!」
と俺は、わざと大きな声で挨拶をした。
しかし予想通り、何かみんなの態度が昨日とは少し違うと感じた。
社員A
「あ、おはよ・・・」
社員B
「あ、太田か・・・」
歯切れが悪い。
俺
「いやー、昨日は大変でした!」
敢えて明るく振る舞う。
前社員
「・・・」
無視かよ。
下を向くな!
いつものようにバカ話をしろ!
まあ、俺が勝手にそう感じるだけかもしれないが、喉にサカナの骨が刺さったようなものの言い方であった。
「こいつら・・・完全に俺を疑っているな」
まあ仕方ないか。
ただお茶を運んできたレディの井崎ちゃんだけは「太田さん、元気出してね!私は信じてますよ!」
とニッコリ笑ってくれた。
天使に見えた。
抱きしめたかった。
とりあえず俺は、井崎ちゃんと後輩の松田以外は敵と認定した。
さて、9時になった。
いつもの通り、東京市場が開き株式売買のお仕事が始まった。
通常通り、客からの注文を株式市場に出す仕事をするのだが、このときばかりは強盗事件のことは完全に頭から離れていた。
何でも集中するって言う事はいいことだ。
前場の途中に昨日の2人組の刑事がもう一回やってきて支店長と話をしている。
せっかく仕事に集中していたのにやたもや「現実」に引き戻された。
俺は支店長に呼ばれて、しばらく仕事はいいから会議室へ行くように指示が出た。
指示通り会議室に向かう俺に対して、また全員から冷たい目線が注がれた。
「こいつら・・・」
人間「落ち目になった時に本当の味方が分かる」というがまさにその通りである。
そして昨日のように田村と俺の取り調べが別々の部屋で始まった。
ただ、俺に対する刑事の態度は昨日と全く違った。
なんと笑みすら見える。
「太田さん、昨日は疑って申し訳ないことをしました」
いきなり謝りからスタートした。
どうやら朝1番に俺がサボっていた喫茶店に行ってマスターからアリバイが取れたらしい。
「マスターは、あなたがかなり長時間喫茶店にいたことと、何かの漫画についての会話したと証言してくれました」
おそらく長時間、「金色のファルコン談義」をした事を刑事に熱く語ってくれたと思う。
マスターありがとう!
ファルコンありがとう!
しかし喫茶店のマスターもグルとは考えなかったのかな?
「警察も甘いな」と思ったが、まあ疑いが晴れるに越したことはない。
まぁ、いずれにしても俺は容疑者リストから外れた。
「今後は太田さんには取り調べはありません」
無罪放免だ。
当たり前だ、何もやっていないのだから。




