下半身ザルの田主社長
次の朝、俺は目覚めた。
慣れないラブホテルの部屋で「ここはどこかな?」と思ったら昨日までの出来事を思い出した。
昨日は柄にも無く弱気になっていた自分を反省した。
濃いコーヒーをのんで
「よーし!戦闘開始だ!」
俺は一転して無理矢理、戦闘モードに切り替えた。
昨日は産まれたばかりの息子の顔を見たために、ちょっとナイーブになっていたがここは仕事として「田主社長を守ろうモード」に入ることに決めた。
朝10時に、約束どおり田主社長はラブホテルにやってきた。
男どうしがラブホテル内でテーブルを挟んで座っている。
「おはようございます、社長」
「いやー、一人でラブホテル入るのは初めてでんなぁ。なんか変な気分でんなぁ」
今の置かれている現状も知らずに、全く呑気なものである。
俺は詳しく今までのいきさつと、ロンドンの友人から聞いたやつらの作り話の話を聞かせた。
「しかしヤクザまで出てきたとは穏やかやおまへんなぁ。中本ちゅう奴は悪いやつでんな」
「社長もう一度聞きますけど、中本は一体誰からの紹介なんですか?『信頼できる筋』からの紹介と言いましたよね」
「太田はん、悪いねんけども実はあの奥田の紹介でんねん。やっぱ奥田は悪いやっちゃ」
「ハー」と俺は深いため息をついた。
「社長、あの偽株券事件以来、奥田とは一切連絡しない約束でしたよね」
「はあ、そない言いますけんど奥田はんは『罪滅ぼしに、ええ若い子を紹介しますから』いいましたんや。それでつい・・・」
「つい会ったんですね。しかしよく奥田も電話してこれますね」
奥田の厚かましさに厚かましい証券マンの俺が舌を巻く。
「せやけどホンマに東京の別ピンさんを紹介してくれましたんや。これ見てくださいや」
田主社長が、ポケベルを俺に見せた。
「0311078181」
と書いてある。
「別ピンさんの電話番号ですか?」
「いや、昨日東京に帰る際に送ってくれた暗号でんねん、意味は
03(東京)1107(いいおんな)8181(バイバイ)でんな。なぁオモロい子でっしゃろ?」
携帯電話が珍しい当時はこのようにポケベルの数字の羅列で意味を伝える習わしがあった。
「あかん、下半身がザルや」
正直俺は落胆した。
俺が監禁されていた間、東京の姉ちゃんと遊んでいたわけだ。
いつきに「田主社長を助けるモード」が半減した。
「とにかく話をまとめます。私がいない間に、すでに中本と契約書を交わして1億を払ったわけですね」
「せや、中本は毎日、残り8億円をはよ払え言うてうるさいんですわ」
「それはそうでしょう。すでに契約書を書いていますからね」
「どないしたらよろしいでっか?詐欺とハッキリした以上ビタ一文払いたくあらへん」
「わかっています。だから今作戦を練っていますから、今後は言う事を聞いてくれますか?」
「わかりました。これからは言う事聞きます」
「まず、このまま中本とは連絡しない。次に私が彼らとの会議の日時と場所を決めますから、連絡はその時にしてください。また会議の場に契約書を持参するように中本に言うこと。この2つです」
「わかりました。よろしゅう頼みます」
と田主社長は帰って行った。




