38億 標的 田主社長 1
外資系証券時代の俺はもっぱら田主社長のお守りを主にやっていたようなものである。
この辺が日本の証券会社勤めでは決してできなかったことである。
つまり毎日のくだらないノルマの消化のために複数の顧客回りに時間を費やすのが主であったのであるが、外資系証券会社は1人でもでかい顧客がいれば、もう後はその客だけに集中して数字を作って、毎日遊んでいても良いのである。
ありがたいことに、この社長のおかげで毎日の株式の売買手数料は他の社員よりも抜きん出て多い金額であったのでなおさら遊ばしてもらった。
しかし当然何百億の資産を持っている彼のもとには詐欺師を始め、いろんな奴らが目標としてやってくる。
そいつらを見極めて撃退する役目も俺は担っていた。
その中には前述の夜の姉ちゃん達の総攻撃も含まれる。
田主社長は脇が甘い!
しかも下半身がだらしない!
毎日のようにいろいろな人が攻撃をかけてくる。
以下はある仕手グループが仕掛けてきた時の話である。
※
「太田はん、ちょっと相談があるんですわ」
「わかりました社長、どんな用件ですか?」
「何や、株がらみでいい話らしいんですけれども」
「まぁ社長はいつもいい話に引っかかりますんで要注意ですよね」
「まぁそう言わんと聞いてくれなはれ、岡三証券の奥田と言う人物が是非合ってくれって言うことなんです」
「わかりましたじゃあ3人で会いましょう」
俺たちは日を決めてあるホテルのロビーで奥田と言う人物とあった。
雰囲気は「豪快な元証券マン」と言うところであろうか、よくしゃべるパワフルな大男であった。
彼が言うには「今からある仕手筋がクラリオンと言う銘柄を持ち上げる。1口乗らないか?」と言う話であった。
しかもこの話は誰彼持っていける話ではなく上場企業の社長クラスの人間にしか話さないと言うことであった。
田主社長はそのメガネにかなったとのこと。
奥田は「社長の料亭は老舗で有名ですから是非参加して欲しい。一口、1億円です」と言い切った。
俺は自分は田主社長の担当証券マンだと紹介したあと「ルールを説明すしてください」と要求した。
「まずは太田さんの会社の口座に1億円を振り込んでください。そしてそこに我々サイドから2億円を振り込みます。合計3億円でクラリオンを毎日買っていくと言うシステムです」
「え、なんの担保も無しで2億円振り込んで来るのですか?」
「はい、だから信用できる方しかお誘いしていません。田主社長は持ち逃げなどしない人物であることはわかっていますから」
「なるほど、で株が上がった場合の利益はどうしますか?」
「当然1億円分の利益は田主さんが全て取ってください。2億円分の利益は折半になります。まあ、名義使用料です」
「もし下がった場合は?」
「その場合はお互い泣きましょう。でもそんなことはあり得ません」
「売り買いの指示は?」
「毎朝、広島の〇〇画廊から電話で買いの指示がはいりますから、太田さんはその指示通りに買って下さい」
「わかりました。で、いつからやるんですか?」
「明日からはいかがですか?」
「田主社長、いかがですか?明日1億振り込んで下さい。さらに2億円が振り込まれてから考えてもよいかと思います」
「そうでんな。ワシの口座でやる以上は株の上下以外にリスクがおまへんな」
「わかりました、では社長明日1億円の振り込みよろしくお願いします」
続く




