36億 田主社長 大ピンチ 1
田主社長とは、年齢が一回り違ったが本当に公私を超えていい親友関係であった。
ただし社長には重大な欠陥があった。
女性にだらしないのである。
あるとき彼は俺に助けを求めてきた。
「大田はん、非常事態発生や。助けてほしいんです」
「どうしたんですか社長」
「今、台湾の女の子と付き合ってるんやけども、子供ができたみたいで認知を迫られてまんねん」
「なるほど、非常事態ですね。詳しく聞かせてください。いつ生まれるんですか?」
「いや彼女は1年間台湾に帰っていたんやけどな、そこで出産したんですわ」
「えー!現物がいるんですか?でもそれは社長の子供とは限らないでしょう?」
「いや、今大阪に子供を連れてきてるんやけども、ワシに似てかわいい子ですねん」
「社長、ノロケを言ってる場合ではないですよ」
「そうでんな」
「で、むこうの要求は?」
「認知するか。引き取るか、さもなければ6000万円払え言うてますねん」
「6000万円なら社長ならすぐ払えますよね。勉強代だと思って払ったらどうなんです?」
「なんか不意打ちを食らったみたいでちょっと納得しまへんねん」
「そうですか、じゃあいくらまでなら払うつもりですか?」
「せやなー、2000万円くらいやな」
「わかりました、ではちょっと時間をください」
「よろしく頼みますわ」
俺は一週間時間をもらって作戦を考えた。
まずは顧客で孤児院をやっている社長に連絡をした。
そしてベビーショップに行ってベビーカーを購入。
これで準備完了。
「田主社長、準備完了しました。先方とホテルで会う用意をしてください」
「どないな作戦でやりまのんや」
「まずは彼女に会って適当に話をしていてください。しばらくしたら私がベビーカーを持ってあとから入っていきます」
「ほう。で、どうするんでっか?」
「私を社長の甥っ子として彼女に紹介してください。しかも結婚してなかなか子供に恵まれない不運な甥っ子だと言って下さい」
「で?」
「私は社長から、その子を里子としてもらい受ける約束をしたことにします。子供に恵まれない私は喜んで引きとりに行きます」
「なるほど、引き取る芝居をやりまんのか?」
「おそらく自分の腹を痛めて生んだ子です。『さあどうぞ持っていってください』にはならないと思います」
「しかし、万が一『さあどうぞ』といった場合はどないしまんねん?」
「それもすでに孤児院に話をつけています。最悪のときはそこでなんとかします」
「なるほどな、よー考えまんなー」
続く




