1億 証券マンの本音
質問が多かったので、ここで実際に証券マンの顧客に対する「本音」のことと外資系証券会社の考え方について書きたい。
まずは、よく極悪非道のように言われる証券マンであるが実際の「本音」はどうだったのだろうか?
今更、彼らを弁護する必要はないがズバリ、「顧客には存分に儲けて欲しい!」が本音であった。
「ほんとー?」
「またまたー」
「まじー?」
と疑われそうであるがこれは紛れもない事実である。
ほとんどの証券マンは間違いなくそう思っている。
俺も在職中によく顧客から「お前たち、ほんとに儲けさせるつもりがあるのか?」と質問されたら必ず胸を張って「はい、そう思っています!」と断言していたから間違いない。
しかしその純粋無垢な思いを阻止するのが例の悪名高い「手数料ノルマ制度」である。
もしこれさえなければ本当に顧客との信頼関係もバッチリ構築できたであろうしもちろんトラブルなんか皆無である。
しかし悲しいかな証券マンとしてサラリーマンの一種であるから、無茶な上司の命令には絶対逆らえない。
つまり顧客に「儲けていただきたいからずっとそのまま株を持っていただきたい」と言う天使のような気持ちと、手数料ノルマを達成するために「少しでも利益が乗ったらすぐに売っていただいて次の銘柄に乗り換えていただきたい」と言う悪魔の気持ちが常に同居してるのである。
例えると付き合っている彼女がいるとして「愛したい」気持ちと「殺したい」気持ちが同居しているのだ。
人間としてやっかいなことこの上ない。
ところが俺も経験があるが、外資系の証券会社はここのところの考え方が全く違う。
根本的に会社としての考え方の相違である。
まずなんといっても外資系金融機関は「顧客第一主義」である。
つまり「顧客の利益を最優先に考える」ということが根本にある。
よって当然不条理なノルマなんぞはハナから存在しない。
しかしここで安心してはいけない。
ノルマなんかよりももっと大切な「顧客からの信頼性」を常に問われることになる。
これはもっと厳しいものであった。
つまり星の数ほどある証券会社の中から自分を選んでいただいたのであるから、よその証券会社よりも良いパフォーマンス(年間金利)をつけてやらなければすぐに乗り換えられると言う危機感が常にあった。
競馬で言えば結果が悪ければ「よりよく走る馬」に乗り換えられるのだ。
だから外資系の証券マンは常に勉強熱心であった。
というか勉強好きで情報収集に熱心でないと会社に残れない制度であった。
プロ野球の「打率が上がらない選手」がどうなるかというのを考えていただければ理解できるだろう。
であるから銘柄を選ぶ時に、国内証券会社のような「刹那的相場観」だったら顧客に対する背任行為となる。
その企業に投資する以上ありとあらゆる手段で情報収集し、分析してなおかつ他の投資家よりも早く判断して買わなくてはいけないから毎日が真剣勝負そのものであった。
日経新聞や四季報に載るような情報は既に全員が知っている情報なので外資系証券にとってはそんなものは情報とは考えない。
そんな誰でも知ってるような情報で判断して売り買いするような証券マンは顧客がさっさと見限っていった。
つまり顧客から見放されるような証券マンは外資系証券ではすぐにクビになった。
俺が行った外資系証券会社は自分で「今月はよく頑張ったな」と思ってても企業判断によって毎月給料日にロッカーに赤い紙が貼られていたら「即クビ」と言うわかりやすい制度である。
理由なんかは聞けない契約であった。
であるから毎月の楽しみの給料日は全員が戦々恐々としていた。
しかし逆にたくさんの顧客から絶大な信用をいただけると日本では考えられないような法外なボーナスを支給された。
つまり日本人が好む「終身雇用・絶対保証」はないが力量さえあればケタ外れの報酬がいただける世界なので当然自分自身が日々の勉強にも力が入るはずである。
よくバブルの頃、「フライデー」などの週刊誌で外資系証券マンがクルーザーやカウンタックをキャッシュで買ったり海外に超豪華な別荘を買ったりとこの手のニュースに関しては話題に欠くことがなかった。
国内証券マンよ!
置かれている立場はわかるが、もうちょっと勉強しようぜ!