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零ー37 色狂いと言われますが節度は弁えています

短めです

 

「できたぞ」

「ルイさん、ありがとうございます」

「どうも、ルイさん」

「いただくわ」


 あれから暫く経ったあと、夕食を作りにリレン達のもとに行ったら2人が俺に対してどこか他人行儀になっていた。

 いつもは俺の膝の上に乗ってくるユキが俺に布を出せと言い、その布を地面に敷いてそこで寛いでしまっている始末だ。


 解せないな。


 まあそれはいいとして。


 何故かスイハちゃん以外のエルフの家が見当たらない。なんかそこら辺の木の辺りにいるような気もするがだいぶ気配が薄い。家が木って事か?


 ……まさか家を造るのすら面倒くさいとかだったり……



……有り得るな。


「アスト、ここは美形と名高いエルフがいる所だよな?」

「ああ」

「それならなんでリレンはいるんだ?」


 本来なら夕食そっちのけでエルフの女性を探し回っているようなリレンが今は普通に夕食を食べている。考えられるのは3つ――


 1つ目は既に全員と逢い終わった

 2つ目はそもそもエルフの気配が薄いせいで気付いていない

 3つ目はアストに常に牽制されて動けない


 1つ目は俺の寝ていた時間によってはありえる話だ。2つ目はまずリレンならまずありえないようなこと。だが3つ目が1番濃厚だろうか、アストってリレンが足を1歩でも女性に向けるとすぐに剣を柄に触れるからな。……俺には無理だった。


「あれは単純に相手にされないってのか?」

「どういう事だ?」

「あー……なんか寝てんだよ、エルフが。そのお陰でリレンはここにいる」

「寝ている方を起こしてまでは心情に反します」


 俺はリレンの心情とやらが気になったので、それについて聞いてみる。


「心情ですか? そうですね……。まず既婚者は口説きません。寝取り願望があるわけではありませんから」

「他には?」

「その方に既に恋慕している殿方がいた場合、その方が幼い場合、1度断られた場合、そもそも話を聞いていただけない場合等ですね」


 意外とまとも、か?


 ……道行く度に女性を口説き歩く時点でまともとは言いづらいか。


「なので今回は諦める事にします。非常に残念ではありますが」

「潔いな。ちなみに、ここに35歳の起きてるエルフがいるぞ」

「心情に反します」

「なんでだ?」

「それは勿論幼いぃぃ!?」


 リレンが飛び上がり自らの座っていた場所をすごい勢いで振り向き凝視する。アストが腹を抱えて笑う、額に氷が刺さる。


 突然起こったその現象に俺が目を丸くしていると隣に座っていたスイハちゃんがそちらを気にしたふうもなく料理を口にしていた。


「普通ね。さっきのマカロン? の方が美味しいわ」

「面と向かって普通って言われると流石に落ち込むな……」


 いつの間にやら家に侵入してる香澄さん達に夕食を作った時に言われるから慣れてるといえば慣れてるけどさ。落ち込むことには変わりないからな? ……あれ、なんで家に居たんだろ。


「思い出したらなんか怖くなってきたぞ……」

「どうしたの?」


 俺が今更ながらに気付いたその恐ろしい事実に身を震わせていると、スイハちゃんが首をこてんっ、と傾げながらそう聞いてくる。


「いや、何でもない。まだあるけどいるか?」

「私はいいわ。そこの人達と一緒にしないで」


 そう言い彼女は半目でリレンとアストを見る。


「なんだか冷たい言葉を投げられたような気がします」

「ルイはなんでそこの幼じょぉ!?」


 何かを聞こうとしたアストがスイハちゃんに対して幼女と言った瞬間、アストが飛び上がり自らの座っていた場所である円形の木の椅子を見たがそこには何も無い。そのアストの奇行にリレンは肩を震わせる。


「そこの男になんか言われた気がしたわ」

「ははは……」


 言語の垣根を越えて分かってしまうなんて恐ろしい幼――いえ、なんでもありません。


 俺は座っていた椅子に魔力が集まった気がしてすぐさま思考を中断させる。

 どうもスイハちゃんには思考を読まれている節があるな。あの姉妹と同じように。


「なによ」

「ここにはスイハちゃん以外のエルフはどうしているのかな、と」


 俺は起きてから考えていた事を聞いてみる。

 彼女は恐らく"自然の主"を使って家を造ったのだろうと何となく想像はつく。けれど他のエルフは家を造るような種族とは思えないし、現に家が無い。雨が降った時や寝る時はどうしているのだろうか?


「ルイも気付いているのでしょうけど――そこら辺にいるわ」

「そこら辺って……木か?」

「ええ、私以外のエルフはみんな木の上でだいたい寝ているわ。そこの木にはお母様とお父様がいるわ」


 そう言い彼女は木を指さす。


 ……いや、どの木なのか全然分からないんだけど。でも木のところに居るっていうのは当たってたのか。


「雨が降った時はどうしてるんだ?」

「魔法で雨を弾いてるのよ」

「寝ながらか」

「そうよ。寝ながら……ね」


 なんというか……すごいな、うん。

 そこまでして動きたくないのか。ニートか、ニートだよな? どうせご飯も魔法で木の実とか採るんだろ? 羨ましいような羨ましくないような……。


「寂しくは……ないのか?」


 俺はそう聞いてみた。

 何せ両親がいて同族が周りにいる、けれど誰も話さない置物の様。それは親が目に見えているのに話せない、故に諦めようにも諦められない。いないよりも孤独を感じると、俺は思う。


 そんな俺の問いに彼女は少しだけ寂しそうな顔をしたが、次には朗らかな笑みを浮かべ手を伸ばした。


「少し、ね。でも私は1人じゃないから――リンネ」


 彼女は手をさした虚空に向かって誰かの名前を呼ぶ。


 俺が何を? と聞こうとした時、突如として何かが軋む音が聴こえ、俺達はそれぞれの得物を構えてどこからともなく聴こえてくるそれに警戒した。


 徐々にその軋む音が森に響き渡る程に大きくなった時、ガラスが割れたかのような音とともに――――空に亀裂が走った


ルイの言葉はリレン達にもスイハにもそれぞれの言葉で伝わっています。


なお、リレンがアストに牽制されると動けないのは過去に本気で斬られかけたことがあるからです。

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