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零ー31 白の少女は撫でられるのが好き

 

「誰かいませんかぁ〜!」


 白の【ミーシア】は何処とも知れない森で人を探していた。

 ただ、かれこれ3時間程彷徨っていたのだが、人はおろか、動物、虫すらいない状況にミーシアは少し涙目になり始めていた。

 唯一の救いはこれまでに2回ほど感じた温かさ。

 その時ばかりはとても心が落ち着いたことにより、寂しがり屋のミーシアでも平静をなんとか保てている状態である。


 しかし、それもそろそろ限界、帰ろうにも何故か帰れないので、ストンッ、と座り込んでしまった。


「うぅぅ……泣かないよ、わたしは泣かないんだからっ」


 と、言いつつも鼻をズズッと啜って、しゃくりをあげ始めてしまった。

 本来は元気っ子のミーシア。他の光をまとめ、元気にする役割をになっているのだが、この時ばかりは形なしである。


 せめてシーアスがいればなぁ……と、ないものねだりをしながら、気持ちを切り替える為、地面に拾った木の棒で絵を描いていた。


「〜♪」


 と、鼻歌を歌っていた時、


 風が吹いた――


 ミーシアはその風に目を瞑り、目を開けた時、そこには先程まではなかったはずの小屋があった。


「あれ? んー……いこっか!」


 取り敢えず確かめてみないことには何も分からないし、そろそろ人恋しくなった事もあり、ミーシアは何も疑うことなく、その小屋に足を向けるのだった。



 ~~~~~~~~~~



「お邪魔しますっ!」


 ミーシアは元気良く声を上げ、小屋の中へ入る。

 部屋の中には、中央にぽつんと火が点いた囲炉裏が1つ、壁際にはいくつかの野菜が干されており、外観より広く見える小屋の奥から何やらトントントンッと子気味のいい音と、鼻腔をくすぐる良い匂いが漂って来ていた。


 それにつられてか、くぅ〜、と。


「ぁぅ……」


 これまでに感じたことの無い羞恥心を感じ、ミーシアは頬を赤らめる。


 すると、奥からお腹の音が聴こえたのか聴こえてないのか『そこで座ってな!』と言う声が聴こえてきた。


「えっと? うん、わかった!」


 正体不明の声の主にすら素直に従うのは、ある意味ミーシアの美徳と言える事であろう。常人ならば警戒をして座りもしないのだろうが……。


 でもそんな事は関係ないとばかりにミーシアは、言われた通りに座る場所と思しき、少し厚い布の上に座った。


 ――トントントンッ

 ――シャーッ

 ――パチッパチッ


 囲炉裏に点いている火に手を近づけ、暖かいな〜、とミーシアが和んでいると、奥から初老の女性が歩いて来た。


 彼女はミーシアの姿を見た時、僅かに目を見張ったが、すぐに人の良さそうな笑顔に戻る。

 そして、その手にはお盆と、その上にあるお皿にはいつくかの料理が盛られていた。


「迷子かい?」

「ち、違うよ! ここがどこか分からなくて帰れなくなっただけだよ!?」

「そうかいそうかい」


 ミーシアが頬を膨らませながら言うと、女性はカラカラと笑いながら、温かい目で見る。

 小動物感が漂うミーシアがプンスカ怒っても、それはただ可愛らしいだけであった。

 その本人は未だに不満げであるが、それよりもお盆に載っていた料理に興味が移っていた。

 顔と体は女性の方を向いているが、目だけはこれでもかというくらいに料理に向いていた。


 そんなミーシアの様子に微苦笑しながら、女性はお盆をミーシアの方へずらし、


「食べていいんだよ」

「いいのっ!? あ……」

「どうしたんだい?」

「おばあちゃんのがなくなっちゃうから……」

「ん? ああ、ちょっと待ってなさい」


 そう言うと、女性は奥に行くと、すぐに戻ってきたかと思えばその手には、ミーシアと同じ料理が載せられたお盆を持っていた。


「ワタシは何時も2食分作るんだよ」

「わぁっ! それなら一緒に食べれるね!」

「そうだねぇ」


 心の底から喜んでいそうな笑顔のミーシアの様子に女性も嬉しそうにそう返す。


 ピシッと佇まいを直したミーシアが早速とばかりに料理に手をつけようとすると、それを女性が制止する。こてんっ、と首を傾げるミーシアに女性は、


「こうしてご飯を食べる時は先に両手を合わせて”頂きます”というんだよ」

「いただきます?」

「そうだよ」

「分かった!」


 言われた通りに手を合わせ、いただきます、と言い、料理に手をつける。

 最初に手をつけたのは味噌汁であった。


「んっ――んぅ!? おいしい!」


 料理、という物を初めて食したミーシアは目を輝かせながら言った。

 そんなミーシアに対して女性は笑顔で返す。


 そこからミーシアは、何かを口に入れる度、美味しい! と目を輝かせながら食べるのであった。



 ~~~~~~~~~~



「ごちそうさまでした!」

「はい、お粗末さま」


 食事を終えたミーシアは、今度はきょろきょろとしだす。

 女性が「どうしたんだい?」と言うと、ミーシアは不思議そうな顔をしながら「誰もいないの?」と問う。


「此処は誰も来ないからねぇ」

「でも私が来たよ?」

「……アンタがなんで来れたのかはワタシも分からないよ。けれどここに来たってことは何かを知りたくて来たんだろう?」


 図星を突かれたミーシアは一瞬固まるが、次の瞬間には飛び上がり、瞳をキラキラとさせる。


「ど、どうしたんだい……」

「おばあちゃん私の心が読めるの!?」

「読め……読めないよ。唯の勘さ」

「へぇ〜! 凄いねっ!」


 ミーシアは囲炉裏の上をくるっと1回転、そのまま女性の隣にストンッと座った。


「えっとね! わたしって誰なのかな〜? って!」


 聞く人が聞いたら何をこの子は言うのだろうかと思われかねない言葉。

 しかし、女性はその言葉を深く言及することもなく返した。


「誰だと思う?」

「えっと、うーん……白?」

「……さては考えてないだろう?」

「え、えへへ」


 ミーシアはにへらっと笑う。


 女性は額に手を当ててやれやれ、と首を振る。


「暫くはここで過ごしていきな。それで分かったのならちょっとしたご褒美を上げよう」

「ほんと!?」

「ああ」

「やったー!」


 女性は、この子は何で貰う前提で喜んでいるんだい、と言う言葉を呑み込みミーシアの頭を撫で、


「頑張りな」

「うんっ」

「それとワタシの事はせー婆とでも呼びな」

「分かった! せー婆!」

「では最初はこの食器の片付けからして貰おうかねぇ」


 ミーシアは元気良く返事をし、せー婆と共に部屋の奥へ行く。


 そこから数日間、初老の女性ことせー婆は、ミーシアに様々な事をさせていた。

 どれもがミーシアにとっては初めての体験。その1つ1つに若干の弱音を吐きながらも、それでも笑顔を絶やさずに、やあやあとこなしていった。






「――へぇぁぁぁ……」

「湯加減はどうだい」

「ちょーどいーよぉ〜」


 外からはせー婆の声。

 ミーシアは顔をだらしなく蕩けさせながら、風呂に浸かっていた。


「ねえ、せー婆ぁ……」

「なんだい?」

「今の生活って人間らしいよねぇ」

「どうしてそう思ったんだい?」


 ミーシアは膝を抱えながら、呟く。


「働いてぇ……ご飯食べてぇ……ゆっくりしてる……わたし、見てた人間と同じ事して楽しいって感じるんだもん」

「ほう」

「人間とは全く違う存在だと思ってたんだけど……なんだか人間ってわたしに似てるね〜……」


「……創造者と同じ様になってるだけじゃないのかねぇ」


 ふと洩らしたせー婆の呟きにミーシアが反応する。


「奇しくも似るものなんだよ」

「どうして?」

「それはアンタがいずれしっかりと落ち着いて考えれる時になれば分かるかもねぇ」

「そっかぁ」


 やけにあっさりとした返事をする。

 ミーシアは特に気にもしていないのか、声色もどこか緩くなっていた。


「おや、何も聞かないのかい」

「だっていつか分かるんでしょ? それならいいよ。それまで待つ」

「深く追求しようとしないことはいい事だね。ま、これに関して言えば知った所で何にもならないんだがね」


 カラカラと笑うせー婆。


 へにょりとした顔のミーシア。


 2人はこの後、いつもの様に他愛もない話をしながら就寝した。






 そして次の日の早朝。

 ミーシアは突然感じた激しい揺れに飛び起きた。


「――わあぁぁぁ!?」

「あぁ、そろそろ終わりだねぇ」


 飛び起きたミーシアとは裏腹にせー婆は何処か残念そうにしていた。


「アンタは帰りな」

「どうして!?」

「今のアンタじゃ此処は危険さ。それに、もう帰れるのだろう?」


 ミーシアは、どうして知ってるの!? といった驚きの顔でせー婆を見るが、彼女はミーシアの頭を撫でながら笑みを浮かべている。

 ミーシアはつい顔がにへらっ、となりかけるが首をぶんぶんと振って気持ちを切り替える。


「せー婆は!?」

「ワタシはここを守らなくちゃならないからねぇ。心配しないくても良い。必ずまた会えるよ」

「うぅぅ……」


 見た目相応の子供らしく、せー婆の袖を掴みぐずるミーシアに、せー婆言い聞かせるように語りかける。


「アンタにも家族がいるだろう?」

「……うん」

「こんな揺れの中、アンタが帰って来ないとどう思う?」

「……心配する」

「そう。ワタシに関しては問題ない。だから行っておやり」

「……分かった」


「――おっと」


 ミーシアがせー婆に抱きつきぎゅっ、とする。せー婆は突然の事に少しよたついたが、そっとミーシアを抱き返す。


「またね……」

「ああ、頑張りな」


 そしてミーシアは白い光粒となって消えていった。




 1人残ったせー婆は一言


「煩いよ」


 途端、小屋をガタガタと揺らしていた揺れが治まる。


「さて、朝餉がまだだったねぇ」


 彼女は何事も無かったようにいつもの朝を迎えた。



△白の【ミーシア】

好奇心旺盛で活発な少女。基本誰かと一緒にいないとソワソワしだし、しだいに涙目になるくらいの寂しがり屋、とくにシーアスと一緒にいる事が多い。光達の誰かが喧嘩を始めると、それを止めるのにまとめて相手を出来ることから自他ともに認める強者。


△せー婆

とある森で隠居しており、様々な事を知っている謎多き初老の女性。この森には誰も来ないだろうと思っていたところ、ミーシアが来たので驚いて指を切りかけた経緯がある。



光達の構成(仮)

赤→兄(2番目)

青→姉(1番目)

緑→飼い猫的な

茶→爺

黒→姉妹(妹)

白→姉妹(姉)


母とか父とかいませんがざっとこんな感じですね。

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