零 大切なこの世界
「また死んじゃったね」
独り、幼さなげの少女が困り顔でそんなことを言う。
そんな少女に赤、青、緑、茶の光が寄り添うように回る。
『あんま無理するなよ』
『そうじゃ、いくら死なないとはいえのぉ……』
『見ていて痛ましいです』
『……あと少し、待てばいい』
光達が少し責めているような、そして何処か心配そうに少女に言う。
けれど少女は首を振り、
「見てるだけなんて出来ないよ。それにせー婆が言ってたよ。『傍観は崩壊、行動は救済。救いたい物があるのならまず動けばいい』って」
そんな事を言う少女に光達は物言いたげにするが、言っても無駄だということが何となく分かったので再び少女の周りをふよふよと漂う。
「シーアスとの戦争はいつ終わるのかな?」
『……』
光と少女だけが住まう無音の世界。
戦闘の高揚感が治まり、物静かな空間が戻った時、全員が揃っていない事を思い出した少女は瞳を潤ませ始める
「いつか終わればいいな。いつか、シーアスも一緒にみんなで笑い合える日が来るのかな……? 来て欲しいな、いつか……きっと……」
それは自らが生まれた時のこと
何も知らなかった無垢な自分達
闇に呑まれてしてしまった大切な家族を救うため
『折れるなよ』
『曲がらぬように』
『あの子に希望の光を』
『我等は願う』
光達は言葉をかけた後、少女に溶け込み消えてゆく。
すると、少女からは幼さが少し抜け、その金色だった目と髪は変化していく。
そして、その口からも一切の幼さは抜ける。
「救済を。私達は貴方に願います。家族を救う事を、世界を救う事を、そして貴方自身が救われる事も」
少女の瞳から涙が零れ落ちる
「抗いなさい、逃げずに、全てを乗り越えなさい。それまで私は……私達は守り続けます。大切なこの世界を……絶対に」
たとえ幾重にも死ねど諦めない。
あの子が今も尚独りで悲しんでいるから。
あの子が帰ってくるその日まで、世界が救われるその日まで戦争は終わらない――