-前編-
この小説は、自転車競技の一つである「ロードレース」を題材にしています。
ついにやって来た…
初レース。
やっと、待ちに待ったこの日が来たんだ!
小1の時、初めて自転車を買ってもらって、乗り回したときの感覚。あれだけは忘れられない。生まれて初めて感じた、風を切る感覚。まるでいつもの街が、別の街のように見えた。その頃は、どこにでもいる自転車少年だった。
しかし俺が違ったのは、ずっと自転車にはまり続けていることだろう。多くの子供は、必ず自転車に触れる。はまる子も多い。だが、すぐに子供達の中の「ブーム」は過ぎ去ってしまう。が、俺はその後もはまり続けた。小学校中学年、高学年、そして中学生になっても。
最初は自分の街を走り回っていた。そして、隣町、そのまた隣町…俺の世界は広がっていった。中学も終わるころには、100キロ走れるようにはなっていた。
俺は幼いころから勉強も得意だった。そのせいでいじめられたこともあったが、嫌な事がある度、俺は自転車に乗って忘れようとした。そして自転車にはまっていった。
そして高校受験。第一希望にしていた私立高校に受かった。合格祝いとして、親はロードバイクを買ってくれた。それまでMTBルック車に乗っていた俺は、その走りの違いに感動した。軽いスタート。ペダルを漕げば漕ぐほど速く速く進んでいく。この魅力に俺が取り付かれないわけがなかった。
それまで自己流でやってきた自転車だったが、自転車雑誌などで専門的に情報を取り入れ始めた。ペダルの漕ぎ方や回転数、理想的なフォーム、そして「ロードレース」の存在…
そして、俺は本格的に練習をし始めた。俺の街から少々離れたところに、1000m級の山があった。そこにはきつい峠もあった。前に何度かいったことがある。そこで、俺はタイムを計って練習した。
――今日行われるヒルクライムレースの為に。
そして今日はレース。
練習を重ねた山を一つ越えたところに、さらに高い山があった。そこで毎年行われるヒルクライムレース。距離10km、高低差800m、平均勾配8%。参加者約500人。コースはきちんと調べてある。
スタートまで1分。独特の緊張感が漂う。
やれるさ。ちゃんと練習してきたんだ。完走できる。本に書いてあったことを冷静に思い出すんだ。序盤は無理をせず、正しいフォームを意識。常に前を見て勾配を確認し、的確なシフトチェンジを行い、回転数を一定に保つ…。あんだけあの山で練習したんだ。できる。
そして、轟砲が鳴り響いた。
あとがき
初めての投稿になります。レグルスです。ちなみに性別は男です。
この「峠の覇者」前後編でお送りします。もともと連載を考えていたのですが、とりあえず様子見ということで。評判がよさげだったら連載化予定。
マイナースポーツである「ロードレース」を題材にしてみました。もちろん、僕の趣味は自転車です。ツール・ド・フランスもちゃんと見てます。そして僕が好きな道は登り坂。もともと登り坂が好きで、曽田正人先生の自転車漫画「シャカリキ!」を読んでからさらに好きになりました。
と、こんなわけで、後編はいよいよヒルクライムレースの本番です。お楽しみにっ!
あとがきってこっちに書くの投稿するときに初めて知った…次回からはこっちに書きます。