7-4 女神新時代 レベリング
ハコネ
Lv:105
種族:神族
職業:なし
「なんと、我も変わってしまったではないか!」
ハコネのステータスは以前は「職業:守護」となってた。あれはエリアを担当する女神の意味らしいけど、それが無いというのはどういう事だろう? とりあえず、ニートと呼んで良い?
「別の誰かが守護になったか、エリアが無くなった?」
「交代など創造主の時代から1度も起きておらぬ。エリアは例え無人になろうとそこに存在する物じゃ。それもありえぬ。何が起きたか、見に行くぞ!」
やめなって。またリポップ待ちで倒されるって。もう十分過ぎるくらい時間を無駄にしてきたけど、さらに無駄を積み重ねなくても良いじゃない。
「我らは不死になったというが、我らも先程は倒されて復活したのか」
「倒されたら酋長の部屋で即座に復活か。これは便利なものだ」
ハコネが勇者な時、復活のタイプはこれだったらしい。ただし僕の部屋でなくオダワラさんの神殿。某ゲームの全滅したら教会で復活みたいな。勇者になった場所がそこだったからだろうって。
突然現れるハコネに、周りの人は慣れるまで大変だったに違いない。
「頼むよ、ノーライフエンペラー。ついでに私の経験値になれ」
首相さんが手に持ってるのは、僕の部屋にあった包丁? 何を言ってる?
応じる前にサクっと刺され、それなのに血も流さずに、消える皇帝さん。いや、何やってくれてるの!?
「ちゃんとレベルが上ったよ。これは安全なレベリングが出来るじゃないか」
「お主ら、朕を何だと思っておる! 今度はお主が朕の経験値になれ!」
あ、僕の部屋から皇帝さんが出てきた。ちょっと酷いものを見た。そして、調理用の包丁になんてことをしてくれる。ちなみに刺した首相さんのレベルは2になってる。1体撃破でレベルアップって、上級アンデッドと言うことで経験値が高い?
「これからどうするの? 特に無いなら、縁者が居るかもしれない八王子に行かせてもらえないかな?」
刺しつ刺されつという誤字みたいな展開を繰り返す4人。収集つかないのを、みさきちが拳で黙らせた。これでやっと話が進む。ノーライフキングを拳で黙らせる人間って。止めない僕まで怒られた。なぜ?
それはともかく、ハコネの扉を出た先は危ない様だ。おいそれと外に出ることも出来ない。でも僕の扉は八王子にあったはず。僕の部屋から出てみて、様子を探るのが良さそうだ。
「我らはレベリングが必要だろう。包丁の一刺しで倒されるなど、堪ったものではない」
「どこか良い所はないか?」
僕はその経験がないから知らないけど、ハコネの意見はと言うと、
「ダンジョンじゃな。我も人間をしておった頃は、師匠と潜ったものじゃ」
ダンジョンね。記憶にあるのは小田原だけど、あとは横浜か。
「時間掛かりそうだから、私の用事を先に進めて良い?」
「姉御が言うなら、従いましょう」
将軍さんに姉御と呼ばれるみさきち。良い拳を貰って感銘を受けたのだろう。そういう事にしておこう。
「大丈夫だ、問題ない」
斥候として僕の扉から外に出た国王さんがフラグを立てそうな言葉を。やられてもすぐ復活出来るって、斥候に出すには最適じゃない?って。ししてフラグは折られ、実際に問題なかった。僕らも続いて外に出ると、草が生えた空き地。戦略ビューで見ると、場所は間違いなく八王子。この前来た所だ。そのこの前ってのが520年前だけど。
「何じゃ、放棄されとるではないか」
扉を出た場所は空き地かと思ったら、砦の残骸に囲まれた場所だった。石垣はそのままあるけど、塀も壁も無くなりその残骸の木材が転がってる。地面には草が生え、長らく放置された事が伺われる。
「城を放棄してどこかに行ってしまったのね……」
ターンの話から、みさきちの病んでる感が止まらない。4人組を制裁(物理)してる時は元気そうだったのに、また落胆。ここに着たら誰かいると期待してたんだろうし、つらいか。
「いや、道があるみたい。ちょっと離れてるけど、そこへ出てみよう」
戦略ビューでは、西に点々と人が居る場所。ある線上を動いているから、道だろう。
「空を飛ぶのは…… 4人が飛べないか」
「魔王め。手加減はないのか」
「勝手にレベルダウンしたのは我らの方だからな」
道へ向かうべく雪に覆われた原野を歩くと、魔物に襲われた。
レベル1桁になった4人組のレベリングのために、向かってきた魔物は4人に倒させる。以前は魔物なんて滅多に見掛けることは無かったけど、魔王さんが戻ったからか明らかに増えてる。最初の遭遇相手は、スノーウルフのレベル20。それぞれ死に戻ること数回。僕の扉を常時出しておいて、やられては再チャレンジ。
最初は包丁で行こうとしてたから、みさきちのストレージから武器を出してもらって足利軍の武装で立ち向かわせた。僕やハコネが手を出すとすぐ終わってしまうから、みさきちに手加減した魔法でスノーウルフを痛めつけて貰って、それでやっと数回の死に戻りで戦いを終えた。
「狼ごときにここまで苦戦するとは」
「箱根にいた魔物の方が強いから、さっきの位はやられずに勝つくらいにならないとね」
スノーウルフの死骸は置いておくと他の魔物を惹き付けそうだから、みさきちのストレージに……
「あれ? どこ行った?」
「朕がストレージを覚えた。荷運びは任せよ」
皇帝さん、偉そうな名前なのに、地味なの取ったね?
レベルは3アップし5になってる。スキルのポイントが貰えたとかで、欲しいスキルを選べるのだとか。僕にはそんな機能無かったけど、いいなそれ。
「余は槍術を取ろう」
「私は支援系魔法を」
「じゃあ俺は盾術だ」
うん、いい感じにパーティーを成立させようとしてる。いつの間に役割分担してたんだか。
「指揮官としての経験は役に立たないが、一兵卒としての戦いもやり甲斐があるものだ」
「あと1人居れば、陣形を組むにも良いのだが。インペ……」
僕が経験してない成長という要素。倒されても復活できるという、まさにゲームのような状況だから楽しめるんだろう。将軍さん、盾役のあなたがそんな名の陣形を組むと、あなたの名はベアです。そんな事を思い戦術ビューでステータスを見ると、将軍さんがベアになってる。
なぜか僕が念じるだけで名が変わるという危ない状況だと分かり、取り消しを念じる。さっき見た僕の眷属というのは、こういう事なんだろうか。
廃城を出たのが朝で、その後3度魔物と戦い、4人のレベルは11までアップ。すっかり夜になってしまったけどまだ目的地には着かない。以前飛んできた際に通過した場所は戦略ビューで見えるけど、今歩いてる場所はそのコースよりも西寄り。
夜に到着しても問題あるかも知れないから、僕とハコネの空間で休むことにした。
「前にここへ攻め入った時は西から来たのだけど、もし長期戦になりそうなら、そこに築城して徐々に侵食しようとしてたの」
4人は狼の肉を食べてみるということで、ハコネの空間で煮炊きを始めた。臭いが心配で4人組はハコネの空間に行きになったけど、燃料も無いから電気鍋を使ってる。僕の部屋から延長コードを引っ張っての屋外キャンプ。ところでアンデッドって食べるの?
残った僕とハコネ、みさきちで僕の部屋にいる。寝る場所もその様に分ける予定だ。ちなみにハーンの身体はちゃんと僕の部屋の隅に安置してある。戦術ビューを見ると、名前はハーンで種族はやはりノーライフキングになってた。
「多分私が知ってる人は誰も居ないのでしょうけど、もし助けられることがあるなら残ろうと思う」
ハコネはさっさと寝てしまい、色々思うことがある僕とみさきちだけが起きてる。外の4人も寝ているのだろうか。静かだ。ところでアンデッドって寝るの?
520年というのは、フ族の寿命の数倍。僕の知る人も女神達しか居ないんだろうか。その女神達も、外交が使えなくなって連絡は取れない。
何がどうなったのか、明日聞けるだろう。




