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7-3 天上の楽屋裏 God's return from heaven

「魔王! 札が!」


 皇帝の声に反応して皆が魔王さんの方を見る。さっきまで魔王さんの頭上にあった札が、消えた。

 札が消えたけど、天使の輪が付くわけではない。これが何を意味するのか? この札が封印を意味するという仮説が正しければ、封印が解けた事を示すのだろうか。


「エドさんが倒された? 誰に?」


 下界にそんな事が出来る者が居るだろうか。僕らが最初に戦った時よりも弱体化してたとは言え、互角の存在はそうは居ない。でも、もしさらに女神を弱体化させる方法があったとすれば? そして、僕が奇襲を受けた、あのヘイヤスタの剣を使った方法なら可能だろうか?


「ハーンの仕業だろうか?」

「僕はその可能性はあると思う」


 厳しい顔をしていた魔王さんが、たちの悪そうな笑みを浮かべる。下界、2人のジョージにより、破滅の危機!


「我の力、見るが良い。行って来る!」

「健闘を祈る!」


 封印が消えてまもなく、魔王さんが消えた。封印解除って復活が許されるだけだから、復活は1ターン後のはず。


「さて、魔王の活躍に期待しようではないか」


 魔王さんを応援する。もしくは、ジョージBを応援する。敵だと思ってた2者を応援だなんて、天上に来てとんでもない軌道修正だけど、それしか僕らの帰還に繋がりそうな方法がない。


「おっと、ここに居る者のみが戻れるとしたら、ハーンの身体も持ってきておいてやるか」


 そうだった。僕の身体を取られたままだけど、元の身体に戻すことで僕の身体は返してもらうことが望ましい。方法は後で考えるとして、ジョージBの本当の身体は持って帰ろう。将軍さんが眠り続けるジョージBの身体を運んできて、部屋の壁に持たれ掛けさせる。僕らが戻れるとしたらこの部屋丸ごとだろうから、ここに居るべき。


「あっ!」


 みさきちが声を上げると同時に、皆の視線が僕の頭上に。鏡を見ると、僕の頭上にあった札も消えた。封印は解けたのか。魔王さん、あるいはジョージB、ありがとう。


「記憶残って!」


 みさきちが指を組んで祈る。


「来い! 巻き込み送還!」


 皆さん、祈る相手は僕じゃないです。多分。




「何か変わったのか?」


 見ると、皇帝さんも国王さんも、全員変わりなし。いや、頭の輪っかが消えた。僕やハコネ、みさきち共々、変わりなくハコネの空間に居る。記憶の喪失? 無いと思うけど、何かの記憶が抜けてもそれに気付くことって出来るんだろうか?


「ターンは?」


 みさきちに言われて今のターンを見ると894とある。前見たターンは843だったよな。1ターン10年だったから、510年も経ったことになる。


「510年…… そうか」


 がっくり肩を落とすけど、どう慰めたものか。僕にとっても多くの知り合いを一気に失ったことになるけど、目の前に落ち込んでる人が居るとその分冷静になれる感じがする。


「我の扉が復活しておる! 出られるぞ!」


 僕とみさきちを置いてベランダに出ていたハコネの声に、僕らもベランダに出る。本当だ! ハコネの空間に扉がある。ハコネがベランダの手摺を飛び越え、駆けて行く。僕らも追いかける。

 先頭のハコネが扉を開くと、外は雪景色。あの時と同じ、ここは箱根のどこかだろうか? ハコネが外へ飛び出して行き、それ続いて将軍さん、首相さん、国王さんも外へ。僕も続く。


「何じゃこれは?」


 雪景色の中に点々と建つ、いくつもの建物。家族で住めそうな大きさの建物だけど、お椀を伏せたような形状で表面は銀色。建物に小さな窓らしき物があるのが見える。

 何があるのか近付くと、窓の中でこちらを見る人が何か喚いている様子が口と身振りで分かるけど、防音が良いのか聞こえない。

 中の人に話を聞こうと周囲を探すと、扉と思われるものがある。


「すみません!」


 ノックするけど、分厚い金属を叩いてる様な反響。中に声は届いてないだろう。


 その時、突然けたたましいサイレンが鳴る。


 あちこちにあるスピーカーから同時に放送が掛かったかの様に音声が流れる。聞き取りづらいけど、こう言っている。「7A地区、戦闘態勢移行。7A地区、戦闘態勢移行」と。


「何が起きているの?」


 その時、僕の左側上空に何かが現れた。ここで飛ぶものと言えば、以前は飛龍だったけど、そうじゃない。銀色の底面を持つ、もっと人工的な何か。そしてかなり上にあるにも関わらすあの大きさという事は、飛竜の比でない大きさ。動く城?

 動く城はさらに3つが姿を見せ、僕らの位置はそれらに囲まれている。これは僕らを狙った物だろう。


「危険かもしれない。僕とハコネ以外は一旦中に!」


 動く城の底面が開き、何かが出てくる。そして周りが光に包まれた。




 部屋に戻った覚えがないのに、僕とみさきち、そして4人は部屋の中。

 ベランダの外を見ると、ハコネも居る。


「どうしたことじゃ?」

「何が起きた? 戻されたのか?」


 何かおかしな事が起きた。こういう時には、ログを見る。


 ”将軍[0]が武田丈二[2] に倒された。”

 ”皇帝[0]が武田丈二[2] に倒された。”

 ”首相[0]が武田丈二[2] に倒された。”

 ”国王[0]が武田丈二[2] に倒された。”

 ”足利政綱が武田丈二[2] に倒された。”

 ”ハコネが武田丈二[2] に倒された。”

 ”サクラが武田丈二[2] に倒された。”


「ログには、僕らが武田丈二に倒されたって書いてある。全員分」

「我ら以外で武田丈二というなら、ハーンか魔王か」


 あの光。あれは強力な魔法か何かだったんだろうか?


「しかしまさか一撃で倒されるとはな」

「殺されたの? でもみんな生きてるじゃない」


 倒されたまでは分かるけど、僕の部屋で復活? 僕とハコネは「またか」で良いけど、他5人は?

 皇帝さん、国王さん、首相さん、将軍さん、この人達を戦術ビューで見ると名前、種族、レベルが見えた。


 国王さん

 Lv:1

 種族:ノーライフキング


 職業:サクラの眷属


 名前は天上では全員武田丈二だったのに、僕が使ってる呼び名に変わってる。でもさん付けって…… レベルも前は高くなかったっけ?

 あと種族は人間だったけど、ノーライフキング? そして、僕の眷属。何が起きたんだ?

 みさきちは特に変わりない。


「何じゃ、こいつらはアンデッドになっておるではないか」

「ノーライフキング? ノーライフエンペラーで無いのか!」


 同じく戦術ビューを見たハコネの反応。いや、皇帝さん、突っ込むところはそこですか。

 このノーライフキング化の経緯を探るために、ログを見る。あれ? 国王さんを頑張って探そうとしたら、検索機能が出て来た。こんなのあったのか。前は気付かなかったのかな。


 ”国王[0].権限フラグ を サクラ[1]に移動”

 ”国王[0]をサクラ[1]の勢力に追加”

 ”国王[0]に 勇者 を設定”

 ”国王[0]に 不死 を設定”

 ”国王[0]が武田丈二[2] に倒された。”


 これ? 不死ってあるからアンデッド?

 絞り込みを解除して、前後にあった出来事を調べてみる。


 ”Turn 894”

 ”座標重複エラー:複数勢力根拠地が同地点に設定されています”

 ”データ修正:代替座標が設定されていないため、勢力を統合します”


 ん?


 ”皇帝[0]の権限を サクラ[1]に移動”

 ”サクラ[1]の権限を 都市勢力 に昇格”

 ”皇帝[0]を サクラ[1]の勢力に追加”

 ”皇帝[0]に 勇者 を設定”

 ”皇帝[0]に 不死 を設定”


 権限ってのは何のことだろう? 不死に設定って、これがノーライフキングになった理由だろうか。

 同じ情報が、国王さん、首相さん、将軍さんでも出てる。

 サクラ[1]というのは僕? サクラ[0]がいるのか。あー、佐倉のサクラさん? 僕も権限と表現される何かが変わったようだからステータスを見ると、やはり変化があった。


 サクラ

 Lv:113

 種族:神族


 職業:文明守護者

 権限:都市勢力、プレイアブル勢力、マルチ管理者、ホスト


 文明守護者? ホスト? これは何のこと?


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