表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/215

7-2 天上の楽屋裏 ジョージBの正体

 可能性は捨てたわけじゃないけど、諦めが早い僕はあっさりとここと自分(・・・・・)を受け入れた。普通に日本に暮らしてる人間だと思ってたし、いつかそこに戻るのだと思ってた。戻るべき場所は無かったという事実に喪失感。いや、戻るべき場所はここだった。それを話したら、全ジョージが泣いた。同じ気持ちか。

 故郷が日本という記憶を持った存在。まだ割り切れないけど、同じ気持ちを分かち合える仲間が居るなんて、そんな仲間居なかった日本よりも恵まれてるんじゃない?


「ところで、元の僕の身体と同じなら、食事とか色々はどうしてたの?」

「下界では普通に食べておったな。何千年も歴史を減ると、料理の進歩は見ていて楽しいものだ。ここでの生活は、最も長い朕でも体感時間では(・・・・)半日(・・)だ。だが、腹は減っておるぞ。お主の部屋には食料があるのか?」

「まあ、多少は」


 旅先で買った食材で日持ちしそうなものは冷蔵庫に。あとカレーとお米は入手してあるから、それを振る舞おうか。


「私がやろうか? サクラと最初に会った時、私が調理したカレーを食べたわよね」


 そんな事もあった。芦ノ湖湖畔での出来事だ。

 みさきちの調理スキル、こう言うとゲーム的だけどリアルな意味で、そのスキルは僕よりはまともで、僕がハコネとたまに食べるのより遥かにちゃんとしたカレーライスが出来上がる。人数が8人もいるから、僕が持ってる最大の鍋で調理、ライスは炊飯器5合炊きで目一杯と冷凍してあったのも少し。


「カレーは私の所では再現出来ていました」

「時代の違いもあるだろう。朕は物資の流通が大陸を纏めない時期に敗れたからな。首相は近代まで生き延びたのだから、大抵のものは手に入る段階まで至ったのだろう」

「余はジャガイモは手に入らなかった。結局、北方にあったのだったな。残念だ」


 ほう、首相さんはそんなに発展した文明をお持ちで。カレーを食べながら、再び文明談義。朕こと皇帝さんは早期リタイヤ、余こと国王さんと私こと首相さんはかなり文明が進んだ所まで生き延びたんだっけ。


「我らの望みは、下界への復帰だ。ここはあまりにも退屈。この様な食事を囲める下界が我らの居るべき場所だ」

「ここからでは何も手出しは出来ぬからな」

「下界の女神が我らを召喚してくれる事を願おう」


 とっても他力本願だけど、ここに居る彼らはここでは何も出来ないことを知っている。魔王さんは創造主の後釜という機会で再臨出来たけど、今後そんな機会が無いかもしれない。だけど、僕のようなケースは?


「その点、我と酋長には望みがある。我は創造主の後釜に呼ばれるも封印中だ。酋長も封印中なのだったな。我と酋長の札は、それを意味するのでは無いか?」


 そう言えば、僕の頭上にもお札があるんだった。額に貼られるのではなく、頭上に浮いている。手を伸ばしても触れない。魔王さんと僕の頭上にあるお札は、封印を可視化した存在か。他のジョージ達は天使の輪。封印でなく死んでるって事?


「封印は破られる事はあるのか?」


 将軍さんの疑問に、エドさんに聞いた話を説明する。エドさんが倒されたら魔王さんが、サクラさんが倒されたら僕が封印解除されるだろうと。でもエドさんは、なぜ封印が破れるシステムを知ってるんだろう? 既にその様なことが何処かで起きた?


「ところで、お主のお供だが、この2人は封印されたわけではないのだな?」

「多分、巻き添え。僕の部屋が僕共々封印された後、その部屋に入ったから封印に巻き込まれたんじゃないかな?」

「迂闊じゃったな。こんな事になるとは、エドも言っておらぬ。まあ奴も知らなかったのじゃろう」


 僕が封印されずジョージBが封印されてれば、僕の部屋に入っても問題なかったんだろうから、ハコネの行動はおかしくない。封印の後、とっさに中身が僕であるかのように演じたジョージBが見事だったとしか言いようがない。あ、でもそれ、ハコネが中身を判別できなかったのか。やっぱりハコネが悪い。


「巻き込まれて封印されるなら、もし封印が解けたら、私たちは帰れるのかな?」

「そうじゃと良いのう」


 ハコネとみさきちは僕の部屋に居たらこの封印後の世界に巻き込まれたのだから、僕の封印が解けたら戻れるんだろうか? いや、僕の部屋に居たら戻れる? 可能性はある。


「我らも下界に戻れるのではないか?」

「それは良いな。駄目で元々だ。ここに居て、酋長の封印が解ければ戻れるかも知れぬ」

「では、下界の佐倉のサクラが倒されることを祈ろう」


 そうなるかな? でも倒される可能性はあるんだろうか。大戦争になっても出て来ず、平和的に過ごしてたみたいだし。佐倉に誰かが侵攻して、女神同士で戦う? あまり期待出来なさそうだ。

 それともう1つ心配なのは、下界に降りる時に記憶が消えるんじゃ無いか?という事。


「朕にかつてのお前が言ったことを伝えよう」


 皇帝さんが僕の言葉を思い出し、説明する。


『地上の女神が僕を召喚してくれないかな』

『もしそれが成ったら、朕を呼び出すのだ』

『それで願い事が終わるんじゃ、僕の願いは叶わないじゃないか』


 そのやり取りを聞いた首相さんは、こう言ったのだそうだ。


『願い事で女神になれ。そうすれば、次々我らを召喚出来るのではないか?』

『そんな願いが通じる? まあ、試してみても良いけど』


 ハコネによって僕が下界に召喚された際、記憶が残って居たならここにいる5人、いや寝てるハーンさん含め6人を召喚できたかもしれない。そう出来なかったのは、記憶を失っていたから。いつになるか分からないけど、僕が下界に戻る時は記憶も持って帰れるだろうか。


「もし我が戻れたら女神サクラを、酋長が戻れたら女神エドを倒す。それでどうだ?」


 可能だろうか? でも魔王さん、前回下界を無茶苦茶にしたんじゃないの? 戻して同じ事になるんじゃ、ちょっと考えざるを得ない。


「あれは仕方がない。我は魔王として生まれた者だ。その役割を果たさねばならん」


 そんな事だと戻せないんですけど…… 横でハコネもみさきちも頸を横に振ってる。


「ところで、下界でハーンを見なかったか? そこで寝ているハーンは、何をしても起きぬ。身体を残して、精神のみ召喚されたのだろうと言うのが我らの解釈だ。下界のどこかで会わなかったか? いくらでも殺すことを厭わない、ジョージと名乗るやつに」


 あー、1人いるわー。思い当たるやつ、1人いるわー。そうだ、封印仕損じたけど、どうなったんだろう?


「少し下界を見て見るとするか。ハーンは創造主の時代に最大勢力にまでなった男だ。ハーンが眠ってから下界に戻ったのなら、大きな活躍をしているだろう」

「女神の加護まで付いた酋長の身体に収まっているなら、有望だな」

「色々やらかしてくれた事だろう。我らが食べてる間に、50ターンは経ったからな」


 え?

 50ターンって、500年?


「そんなに時間経ったの?」

「ここは下界とは時間の流れが異なる。朕が先に言った様に、創造主の時代、鉄器の時代にここに来て、体感で半日と。下界の様子にも依るが、ここでの数分が下界では1ターンに相当する」


 カレー作って、食べて、1時間以上。下界は何十世代も過ぎてしまい、誰も知った人は居ないんだろうか。女神達はいそうだけど。


「そんな…… もう誰にも会えないの?」


 僕でさえショックをうけるのだから、この世界での家族を持ったみさきちにはショックだろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ