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6-11 魔王の封印 創造主の足跡

 夕食会の後、みさきちをお客用の寝室に置いてきて、僕は自室で調べ物。ハコネが言ってた箱根エリアの発電設備が気になったから。


「ここに発電所、そこまでこの地図で3キロだから15キロの水路か。その先にまた発電所があって水路、その先にも発電所と水路」

「なんじゃ、領内を半ば以上、トンネルで繋いでおるのか」


 パソコンに向かい、電子地図を眺めながら発電所マークと水路らしきものを辿ると、断続的に続くトンネルを経て湯本近くから仙石原の盆地部分まで通じていることが分かった。あれ? ハコネも知らないってどういう事?


「ハコネの戦略ビューに、この情報があるんじゃないの? そこで維持費をオンオフするんでしょ?」

「存在を知らねば情報は得られぬな。ダンジョンの下にあの空間があったことも、行ってみて初めて分かったのじゃ。そもそも作られたのは我が生まれるよりも前、創造主自らが管理をしておった時期じゃからな。その時期に放棄された施設は、我の与り知らぬものじゃ」


 それから、ハコネ達女神が生まれた経緯を聞いた。創造主が多くの都市を従えてその手に余るようになった頃に、都市の管理を手伝うために造り出されたのが今の女神達。都市の始まりは創造主が施設を作ったから、古い設備を女神が知らない事はあるって。


「折角だから、明日見てみようか」




 翌朝早く、日の出とともに出発するというみさきちを見送り、さて、探検に行きますか。


「ここだと思うんだけど」


 探しに来た1箇所目は、温泉宿エリアから北西に6キロほどの、川を見下ろす山の中腹。谷底の川からの標高差は1000mを超え、飛べる僕らでないと来ようとは思わない場所。傾斜のある山腹に僅かな平地があるけど……

 僕の部屋で見た図面を参考に、相当する場所を見ても、木が生えてる。図面によると小さな池がある。その池にトンネルが繋がってるとすると、池の部分を掘り返せば見付かるだろうか。


「これが怪しいと思うのじゃが」


 ハコネが示す場所は、木の根が深く潜らず地表に根が張ってる。確かに、潜れない何かがあるみたいだ。少し掘ると、四角く硬い部分がある。図面から、建物と推定。だったらその近くに池があるはず。

 しばらく掘り返して、やっとそれらしい場所を見つけた。


「これだけ登った場所に、埋もれてまで居るなると、誰も気付かぬわけじゃな」

「試しに、維持費をオンにしてみる?」


 資金も限られるので、ちょっとだけ。維持費の投入は設備全体じゃなく一部だけでも可能なので、この山上だけやってもらう。

 すると、建物、池を構成してると思われる壁面、その先の水路が元の姿に蘇った。レンガ造りという風情のある施設。


「本当にあったのじゃな。」


 ここが下流側で、ここから上流に向かってトンネルがあるはず。水路を埋めている膨大な土砂を取り除きながら探すと、ちゃんとトンネル入口の上端と思われる部分が出てきた。このトンネル、直径何メートルあるんだろう。かなり大きい。

 さらに掘り返して、トンネル入り口を高さ1メートルくらい露出させ、トンネル内にも流れ込んでた土砂を通るのに必要なだけ取り除いて、トンネルの中へ。トンネルは奥へ少し行くと土砂も無くなり、本来の巨大な姿を見せた。

 地上の面積が25倍だから、降る雨も流れ下る水の量も25倍。だから設備も断面積25倍にしたんだろう。昨日見た水路も同じく大きかったのは、そういう事だろう。


「これだけの大きさがあれば、道にするにも十分だ」

「そうじゃな。こんなのが領内のあちこちにあるのじゃろう。使わぬ手はないな」


 維持費を投入したのはすぐ近くだけだったから、先でトンネルは崩落している。維持費を投じれば、瓦礫のうちトンネルを構成していた部分は元に戻り、流れ込んだ土砂さえどければ良いのだろう。


「道作るより、水路直す方がいいかな」

「維持費はかなり高い様じゃ。全部直すのは、発展させてからじゃな」


 まずはお金。僕らも何か事業でもやって、インフラを復活させる資金を集めようか?




 朝の探検が終わり、ハコネは機能と同じ用水路の現場へ、僕は熱海へ向かう。熱海の現場を覗いたら特に手伝う事は無さそうだったけど、アリサが小屋の窓から手招きしてる。

 平屋の小屋ではあるけれど高さは2階建て以上はあり、その高さに見合う大きな扉。ここはアリサの作業小屋で、大きな物を中で造っても持ち出せるように巨大な扉がつけてある。


「これをどう思う?」


 やっぱり出来てたか。人の背丈の3倍くらいの2足歩行ロボット風の何か。前にそういうのを作るって言ってたけど、熱海で工事の技術監督をしながらの片手間でやってしまうとは。アリサの合図に合わせて、1歩2歩と前へ進む。


「中にいるのは、マリ?」

「そう。まだ彼女みたいに魔法を得意とする人にしか使えないの」


 物の形を変える魔法を増幅して動力とする機構で動いてるらしい。でもそれじゃあ、重いものを持ち上げるのは、こいつの手を動かして重量物を動かすより、直接術者の魔法で重量物を動かしても同じなんじゃないの?

 でも、そうじゃないらしい。術者の魔法で重量物を動かしたら、持ち上げて維持してる間はずっと魔法を使い続けた状態。でも物の形を変える魔法なら、重量物を持ち上げる際には魔法を使うけど、持ち上げた後に姿勢を維持する分には魔法を使わない。重量を支えるのはロボ?の役目だ。


「色々やってみて、こうなったの。今みたいな工事って、重量物を持ち上げて支えるとか、そんな作業が多かったの。作業者の集中力が途切れても動きが止まるだけだから、事故に繋がらないのもポイントね」


 確かに、魔法で重量物を持ち上げてる際に術者が魔法を止めたら、重量物は落下する。それと違ってこの方式なら良いのか。


「これからの改良は、まずは魔法を使える人なら誰にでも使えるまでに、負荷を減らすこと」


 マリは魔法で鉄板を捻じ曲げられるレベルだそうだけど、そんな事が出来る人は殆ど居ない。それを木の枝を折る程度の負担で使えるように出来れば、町に何人かは使える人が出てくる。


「これ、戦争に使われるようにもなるんじゃないかな?」

「どうだろうね。これを動かすのにエーテル消費が激しいから。それだけエーテル使うなら、攻撃魔法に使うんじゃないかな。工事に使うみたいに、工兵任務なら役立ちそうだけど」


 剣と魔法の世界にロボットとは何事だ!と言う事にはならないらしい。それもちょっと見たかったのだけど。


「これって術者の魔法の増幅なわけだけど、機械が魔法を使うことは出来ないの?」

「無生物が魔法をってのは、先の長いテーマね。生物が魔法を使う仕組みが分かれば……」


 まだ原理は分からないらしい。現代科学でも人が意識を保つ仕組みも解明しきれてないのだから、同じように難しいのかな。




 各領邦の事業を手伝ったり、港の完成式典に出たりして時は過ぎ、冬。もうすぐ初の年越しということになる。


「年越しの行事って何かあるんだっけ?」


 この世界で1度も年を越していないためそういう事に疎いけれど、行事があるなら参加したい。クリスマスとか、大晦日とか。


「クリスマスはあるわけ無いじゃろう。異教の祝祭まで行うお主の故郷がどうかしておる」


 クリスマスが終わって年末はお寺の除夜の鐘を聞き、初詣に神社に行く。どうかしてるというか、宗教と思ってない。


「神様の誕生日を祝うとかは?」

「女神の誕生日は、どこも1月1日じゃ。創造主はターンという単位で動いておったからのう」


 ってことは、クリスマスとお正月を同時にやれば良いんじゃない。その辺楽にしてくれて、創造主さん、ありがとう。


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