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6-4 魔王の封印 追跡

「大荷物を持った黒髪の男がどこに行く馬車に乗ったか探しておるんだが、知らぬか?」 

「大荷物? 黒髪の男? 俺のことじゃねえよな?」

「ここらの商人はそんな連中ばかりだから、どいつか分からんぞ」


 翌朝、街で聞き込みを開始。ここは街の南側出口近くの広場。朝は馬車の発着場として使われる。

 大荷物と言うだけでは珍しくないか。大きな金属を持っているとの追加情報は、そうと見えない様に包んでたら欲しい情報を落とすかもしれない。そんな検索ワード考えをするような感じで聞いていたけど、もっと分かりやすい情報を持ってることに気付く。


「こんな男なんですが」

「あ、そいつ! この前の馬泥棒!」


 人相書きを出してみたら、期待と違う反応。馬車で移動じゃなく、馬を盗んで行った?


「あんたら、そいつの知り合いかい? 詳しく話を聞かせて貰おうか」




「おかしくない?」

「女神は勇者の保護者じゃからな。この不始末を保護者が尻拭いってところじゃな」

「勇者とも女神とも言ってないのに」


 僕らも追っていると伝えたけど、「だったら代金はそいつから取ってくれ」って事で、僕が馬代の金貨2枚を払わされた。払えない額じゃなかったからまだ良いけど、僕らも安定した稼ぎは無いってのに。

 ちなみに、ここでも逃げた男を追う女2人の三角関係的な邪推もおまけに着いて来た。この町の人はそういうのが好きなんだろうか。


「そうだ、この街の南で関所の出入りを管理してなかったっけ。そこで聞けば分かるんじゃないかな?」

「そうじゃな。行き先が南なら足が付くかもしれん」

「なら、聞きに行ってみようか」




「それで、私の所へ?」


 関所に到着。関所は御殿場に入る人を検査しているから、前方から関所に来る側には列が出来てる。それに対して、御殿場から三島方面に出る人はフリーなようだ。そこで衛士の人に「馬泥棒を追いかけてるから馬で通過した人を知りたい」とお願いしたら、通された先に居たのは長い銀髪の女性、ゴテンバさん。


「そんなの知らないわ。馬に乗ってようと、何色の髪をしてようと、関所で止めたりしないもの」

「そうじゃったな」


 ゴテンバさんは、三島の件が起こる前から、どの人種も平等に扱う政策。前にこの関所を通った時は、ゴテンバさんにテストをされたんだった。


「馬泥棒ってのは迷惑な話だけど、代金は代わりに払ってくれたみたいだし、まあいいわ」

「それは僕が良くないんですが」


 それを代わりにゴテンバさんに請求する理由もないから、もうあとは本人から取り立てるしか無いけど。


「それはそうと、色々と面白いことをしてるそうね。仲間に入れてもらおうかしら?」

「面白いこと? この追跡が面白いか?」

「いいえ、この前の戦争の話よ」


 クールな女神のゴテンバさんの目が光った、様な気がする。

 戦争を面白いとか、案外物騒な人?種族平等とかLOVE&PEACEみたいなくくりで平和主義と思ってたのに。


「フ族と人族の融和が原因で、エドんとこと戦争したとか。うちの考えと同じみたいだから、その同盟ってのと仲良くできそうね。ここだって人族至上主義やフ族至上主義の迷惑な人を入れないためだから、ミシマも同じ政策になってくれたら、この関所は要らなくなるのよね」


 戦争の仲間にじゃなく、戦争の原因となった政策の仲間に。確かに今の同盟が目指す終着点が、この御殿場の状態なんだろう。御殿場は前から王国の支配を受けていなかったし、同盟と仲良くなって損はない。


「組合に提案してみるわ。考えが纏まったら連絡するけど、誰に連絡すればいいの? オダワラもアタミもミシマも居ないし、ハコネでいいの?」

「我とサクラで使者は送り届ける。我に声をかけてくれたら、迎えに来よう」


 もしかしたら、御殿場も同盟に加入なんてこともあるかもしれない。徐々に広がる同盟の輪。


「もし同盟に参加になって行き来も増えたら、ハコネへの近道を通したいのよ。古い道の遺構があるでしょう? あれを直しましょう」

「はて、思い出せぬが」

「ここら辺に長いトンネルの遺構があるわ」


 ゴテンバさんが戦略ビューを出し、僕らに見せる。御殿場から仙石原の方へ抜ける道。こんな所に鉄道はなかったけど、鉄道に限らず道路トンネルの遺構もあるのか。


「ああ、あるな。これを通れるようにか? じゃが、その先に道がないぞ?」


 トンネルのある場所は、標高4千m付近。夏でこそ大丈夫だけど、冬は通行人の遭難が心配。


「往来が増えそうなら、道もしっかりしたのにすればいいわ。まずはトンネルだけでもあれば、私もそちらに行きやすいわ」


 ハコネの方にお金の余裕がないと言うことで、当面の維持費をゴテンバさんが出してくれるということになった。そういう事なら、嫌だという理由もない。


「じゃあ我らは引き続き馬泥棒を追うとしよう」




 三島から南へ向かう門前広場で聞き取りをしたけど、馬に乗った大荷物の男は何人もいて、北か南へ向かったそうだ。


「どうするかのう。昼を食べながら考えるとしようか。さて、ちょうどよい所に、あの店が」


 今いる場所は三島の南側広場。三島に定住した魔族の人達が住んでるエリアは通り一本隔てた先。ついでだから様子を見に行こう。


「おや、ハコネにサクラ、いらっしゃい」

「久しぶりじゃな。チキンカレー1つ頼む」

「僕は生姜焼きで」


 昨日も食べたのにまたカレーというハコネには付き合わず。料理のレパートリーが、少し洋食寄りの日本的なメニュー。本当にこの人達は、見た目と良い文化といい日本人っぽい。


「やつがどこに向かうのか、目的地を知って、そこへ直接行けば良かろう」

「目的地ねぇ。魔族の拠点の何処かだろうけど、そもそも彼はどこの女神に召喚されたのかも言わなかったんだよね」

「誰か探してるのかい?」


 僕とハコネの話に入ってきたのは、ここの女将さん。僕らとは顔なじみだから、気さくに話しかけてくる。


「へえ、逃げた男ねぇ。それってあんた達の」

「そういうのではないのじゃが、フ族の勇者というのは聞いたことはないか?」

「勇者ねぇ。この前の戦争ではそう言う話は聞かなかったねぇ」


 やっぱり、フ族陣営でも知る人は少ないらしい。総大将さえ知らなかったくらいだし、仕方がないか。


「西はスンプ辺りは人族の王様がフ族嫌いだそうでで、そっちに行くことはないだろうね。ミシマを通ってドイから船に乗ったのかもね」

「ドイからはどこへ船が出てるんですか?」

「クワナ、トバ、カツウラ、その先の海もフ族は行き来しとるよ」


 御殿場より情報の確度が下がってるけど、ここまで来たら折角だからドイにも行って探してみようか。フ族の海運ってのがどんなものなのか見たこと無いし。




 土肥へ向かう街道は三島から南へ馬で1日進むと修善寺、そこから山越え1日で土肥に到着。


「つまり、空から近道すれば追いつけるかもしれない」


 三島を出て、街道を外れて西へ。聳える山を登れば、目の前には海。それを飛び越え、西伊豆の海に迫る山を横目に進み、夕暮れに映える街と船が見えてきた。


「ここじゃろう。おお、船がいくつも」


 船はマスト1本に四角い帆。何処かで見た江戸時代の和船っぽい。でも船体が黒いのはなぜだろう。


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