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6-3 魔王の封印 鍛冶屋ゴヴニュ

「何事もなければ、危険な力を僕らは使いません。当分使う機会はないでしょう」

「過ぎたる力は、己をも滅ぼす。忘れぬことだ」


 まあ、あの魔法を受けたら僕らもイチコロだろうし、誤射には気をつけないといけないね。


「さて、本題じゃ。色々見せたのじゃから、お主も約束違えず話すのじゃ。あの勇者は、どうしたのじゃ?」

「金属の筒から出られんと藻掻いておったから、我らに害を成さぬことを約束させて、出してやった」


 ジョージBをヘイヤスタで簀巻にしたのは、少々の力では中から出られないようにするため。それも龍神の力では解き放たれてしまうのは仕方がない。


「あの男、ただの人間ではないな?」

「どうしてそう思います? 確かに僕が加護を与えた勇者ということになっていますから、ただの人間ではありませんが」

「人の力、女神の力、それ以外に、上位の神から与えられた力を感じた」


 それはこの世界に来たときの願い事で得た力だろう。あまり深入りはしてもらいたくない。話を変えよう。

 

「その男を包んでいた金属、あれはどこに?」

「奴が持って行ったぞ。それ以上は知らぬ」




 あの戦場から行ける場所とすれば、箱根、三島、御殿場。箱根で聞き取りをしたけど何も情報は得られず、御殿場にやって来た。


「でかい金属? そんなやつ居たか?」

「俺は見たぞ。話を聞きたいなら、まああれだな……」


 御殿場のギルドで聞き込みをすると、それらしい情報が出て来た。1杯奢ってやって、聞き取り調査。


「でっかい金属を持った黒髪の兄ちゃんだったな。鎧に加工できる鍛冶屋を知らないかと聞かれたのは、2日前だったか」

「その人はどこへ?」

「この街で鍛冶屋と言えばゴヴニュだ。その後の話は、ゴヴ爺に聞いてみな」


 その鍛冶屋の居場所を聞き、御殿場の街を歩く。


「もう夕方だし、訪問は明日にした方がいいかな」

「なら、今日はあそこじゃな」


 ハコネが指差す先には、前に来てカレーを食べた店の看板。どこぞのカレーチェーンに少し似た看板だけど、他店の空似? ちょうど夕食時でもあるし、そこへ向かう。


「いらっしゃいませ」

「カレーライスを2人分お願いします」

「1つは大盛りじゃ」


 前回はここで食べてたら飛竜が飛んでいって騒ぎになったんだけど、今回は飛龍騒動はたっぷり味わった後の食事。周りの客は、人族、魔族、ドワーフ、エルフと様々。三島を通る南北の交易ルートが通じたため、外の人通りも様々な人種が入り混じり賑やかになっていた。


「鎧に加工というのは、着て移動しようと考えたんだろうね」

「捨てて行かぬということは、あの素材の機能を知ったのじゃろうか」

「結構厚いまま包んだから、加工してプレートアーマーとか他の武器とか色々作れそうだね。魔法を弾く鎧ってのは価値があるだろうし、厄介な相手には持たせたくないかな」


 機能を知られた所で、どこで取れるかまで知っているのは、僕ら以外にはエドさん、ヒラツカさん、フジサワさんの3女神だけ。ジョージBと接点があるとは思えないから、大量に採掘されて出回ることはないだろう。もし出回ると、世界の軍事バランスが崩れかねない。幸い、ジョージBが持っていった分だけで、大量の装備が出回る心配はない。


「嬢ちゃん達、魔法を弾く鎧と言ったか?」

「ん? 誰じゃお主は?」


 話し掛けてきたのは、さっきから視界に入っていて気になっていた老人。半裸だし、筋肉だし。


「儂はゴヴニュと申す。この街で鍛冶屋をしておる」


 探し人は、隣でカレーを食べていた。半裸で!


「お主がそうか。明日、お主の所を尋ねるつもりだったのじゃ」

「おお、そうかい。面白そうな話だからな、ぜひ来て欲しい。今からでも構わん。話を聞かせてもらおう」


 3人共食べ終わり、ゴヴニュさんの仕事場へ向かう。ゴヴニュさんのステータスは、レベル65の鍛冶屋。このレベルって、戦闘能力じゃなくてスキル的なのも反映されるのかな。あと筋肉も?


「嬢ちゃん達は、魔法を弾く金属を知っておるのか?」

「そうです。僕はサクラ、こちらはハコネ。僕らが探している男が、魔法を弾く金属を持って居るので、それを手がかりに足取りを追っています」

「なんだ、面白そうな話かと思ったら、女が逃げた男を追っているだけか」


 何だか根本に誤解がありそうだけど、逃げた男を追ってる事はその通り。ついでに身体で目当てで追ってるとか付けないように。


「折角だ、あの金属が何なのか教えてくれるなら、儂がその男について知ってることを教えてやる」


 多少の情報は出しても良いかな。それであの素材が出回るようになるわけでもないし。




「来客だ。奥を使うぞ」


 到着した鍛冶場は個人の工房という感じで、店には店番と思しき若い男性(筋肉)と、若い女性。店内には鎧やナイフが展示されていて、「ここは武器と防具の店だ」って説明が付けばRPGのイメージ通り。


「親方、俺らも行きましょうか?」

「いや、儂だけで良い。お前らは片付けが済んだら、戸締まりして帰って良い」


 僕らが通された奥の部屋は、鍛冶場がある他、端が倉庫になっていて部材が積まれている。炉に火が燃えているかと思ったら、そんな事はなかった。燃えカスのような、火を使っていそうな痕跡もない。


「では、彼のその後を教えて下さい」

「あの男は、棺桶のような大きさの金属の筒を持って儂の所を訪ねた。それをプレートアーマーに加工してくれってな。だが、試しに加工しようとしたら、魔法を弾きやがる。魔法を使わずに加工するとなると、昔ながらの方法でとても時間が掛かるんだ。ざっと1ヶ月は掛かるだろう。それを伝えると、それ程は待てないとさ」


 炉に火がないのは、魔法の力で加工するからか。確かに僕らの武器も魔法の力で加工したけど、本業の鍛冶屋で加工できないって、そんなに難しかったっけ?


「鎧に出来ないならせめて運びやすくしたいって事だったから、4分割にして縄で結び、背負えるようにしてやった」

「その後の足取りは?」

「大荷物だから、馬車が買えないかと聞かれたが、聞くと馬車を買うほどの金は無かった様だ。何処へ行くとは言ってなかったな」


 詳しい行き先は分からないか。でも彼らの拠点は、伊豆半島の南、山梨。どの方面でも、交易路がある。他の目撃情報もありそうだ。


「それで、次は儂が知りたい話を聞かせてもらおう。あの金属は何なのだ?」

「あの金属は、ヘイヤスタという素材で、魔法を弾く機能があります」

「ほう、そんな名は聞いたことが無いな」


 その名を知るのは僕ら含め8人。知られていなくて当然。


「それで、どこで取れるのだ? そんな物が取れる鉱山は聞いたことが無い。それに板に加工する方法も、思いつかん」

「あの金属は、場所は明かせないのですが、遺跡から出て来たものです。板のままで遺跡に使われています」

「そうか。弄ってみたかったんだがな。一応聞くが、嬢ちゃん達もあれを手に入れられるのか?」


 手に入るというと、僕らの目撃情報から遺跡まで辿り着くかもしれない。あの遺跡には他のダンジョンのような番人は居ないから、取られるかもしれない。並大抵では切り出せないだろうけど、念のために対策は必要かも。


「色々と秘密なのです。申し訳ないですが」

「弄ってみたいだけなんだ。時間は掛かるが、嬢ちゃん達の装備を作ってやるってことで、触らせてはくれんか?」


 ヘイヤスタで鎧、あの戦いで僕らは即席鎧という名の筒に入って戦ったけど、あれをちゃんとした鎧に加工してもらえれば、マルレーネ達も安心の装備が出来るかもしれない。悪くない話かも。


「秘密が多いので、ここでという訳にはいきませんが、僕らの拠点に移って貰えるなら、申し出を受けましょう」

「おお、そうか。で、場所はどこだ?」

「ここから東、山を越えたところにある、箱根です」

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