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5-17 続大半島戦争 心理戦

 一旦3人の所へ。


「どうしました?」

「通って来た穴が無くなっていて」

「閉じ込められたわけじゃな」


 ここの事情を知ってそうなハコネさんからヒントを得て、何とか抜け出さないと。捕虜に攻撃を加えるのはいけませんが、そうならない範囲で話を聞くことは問題ありません。


「この遺物に出口は無いのですか?」

「無いじゃろうな。入口は、我らで穴を開けたのじゃ」


 やはり、本来の遺物は穴がない。だから維持費で穴がない状態に戻されてしまう。


「つまり、壊すしか無いのですね」

「物理的になら、私達も!」

「それは反則じゃ。お主らも我も、もう戦いからは離脱したのじゃ。手伝ってはならぬ」


 サイクロンも魔素をかなり使う魔法。しかしこれより弱い魔法で、あの壁を破る勢いは出せそうに無い。


ーーー


「はぁ。中々、諦めないなあ」


 僕は減っていくお金を見ながら、どうしようかと考える。戦略ビューで赤い表示は1つ。最後に残ったのだから、きっと一番強いエドさんだろう。

 その赤い点が、真ん中で動いて、天井が破損。あるいは、端に移動して、壁面が破損。色んな場所を壊されては、それを僕が直す。

 繰り返すこと、数十回。減っていくお金は、板が1枚割れてそれを補修するだけだから、大した事ない。しかし諦めないね。何時間もこんなことを繰り返すつもりなんだろうか。いや、飢えるわけでもないし、何日も? 何日も僕は見てないといけない?


 いや、見てなくて良いんじゃない? 維持費の設定を最大にしておけば良いだけだから。つまり、僕は動ける。


「そうだ!」




「エドさん、サクラです。聞こえますか? 和平交渉をお願いします」

「エドです。和平? この壁を破れば、私が勝てるのに? 維持費が尽きるか、私の魔素が尽きるか、勝負しましょう」


 あー、維持費、もっと高いと思ってるのか。それは残念。


「そのペースなら、維持費はあと2ヶ月は尽きませんが、それでもそこにぶつかり続けますか?」

「え!? 2ヶ月?」


 ほら、予想外だった。


「和平の条件は、あなた方女神が私達へ降伏し戦争から離れること事、20ターンの不戦。それだけです」

「降伏とは何ですか、降伏とは! それに戦争を終らせる、では無いのですか?」

「いや、あの勇者、僕の言う事聞かないから、彼らの戦争は終わらせられないし」

「それはあなたも戦場へ戻るという事でしょう。そんな事はさせないわ」


 えー、それは困るな…… そんなに魔素に余裕あるの? お互いの懐具合を予想しながらの交渉。まさに腹の探り合い。だったら……


「そうですか、残念です。ではまた2ヶ月後に会いましょう。2ヶ月後には弱くなってるエドさんと戦えるのを、楽しみにしています」

「弱くなる?」

「僕らは、信仰を捧げられて強くなる。だから、エドさんを弱くする方法は、信じる人が減れば良い。エドさんはそこから出られませんが、僕はどこにでも行けます。何でも出来ます」


 エドさんの強さが、膨大な人口による信仰力から得られるなら、信者さんをごっそり奪えば良い。どうやるかはこれからだけど、一度東京方面を見に行くのも悪くない。ハコネを連れていけないのは残念だけど。


「さて、では行ってきます。受け入れる気になったら、ご連絡下さい」


ーーー


「2ヶ月で、信じる人を減らすって……」

「ほほう。何をするつもりか、その現場、見たかったものじゃな」

「大丈夫です。エド様への信仰を、人々は違えないでしょう」


 私もそんな簡単に人々がサクラさんに靡くとは思いません。長い年月の積み重ねでここまで来たのですから。


「エド様、もしや、そう言う事ではないのでは? 何と言っていました?」

「信じる人が減れば良い、と。どこにでも行ける、何でも出来ると」

「信者を奪い自らの力を増すのでなく、信者を奪いエド様の力を削ぐだけが目的なら、他の手があること、お気付きでしょう」


 そう、考えたくないけど、その可能性もある。


「ハコネさん、サクラさんは、人の命を奪うような酷い方ではありませんよね?」

「普段はそうじゃが、戦争となればどうじゃろうな。それと、事の発端のサクラの勇者、あれを止めねばならぬのでは無かったのか?」


 そうでした。チガサキ伯軍を襲った勇者。それも問題。自らの勇者に敵軍を襲わせる方が、自らは手を汚さないと信じられるでしょうか……


ーーー


 あれ? どこ行った? 放置したジョージB、自力で何処かに行けるとは思えないから、誰かが運んでった?

 どこ行ったかなと探そうとしたら、エドさんからの外交だ。結論は出たかな?


「サクラさん、よもや人を殺めようというわけではありませんよね?」


 その手も考えたけど、あまり酷い事をして願い事の権利を剥奪されても困る。だけど、そんな事は言わない方が、交渉には有利そうだ。


「僕の考えは、先程の通りです。受け入れるという言葉以外は、待っていません」


 そう言って、外交パネルを閉じる。不安にさせる心理戦だ。


ーーー


「エド様、ヒラツカ領を、赤点が横切りました」


 ヒラツカさんは戦略ビューから得た情報を知らせてくれる。


「それは?」

「横切る速度が、あまりに速い。ハコネよ、彼女も飛べるのか?」

「もちろんじゃ。すぐにフジサワにも現れようぞ」


 そう言われて、フジサワさんも確認する。


「確かに、今通過中です。それにしても速い」

「エドまですぐじゃな。あまり時間はないぞ?」

「領主達に連絡を取りましょう。空からの敵に備えよと」


ーーー


「これが江戸か」


 東京の様に南は多摩川までの巨大都市ではないし、そもそも距離が5倍もあるのだから、色々異なる。品川駅から南のあたりに広がる城壁に囲まれた都市。そして高台に立派な屋敷や宮殿も見える。この辺が貴族の居住地かな。

 エドさんじゃなく、エド王が降伏を受け入れたらどうなるんだろう? その方が簡単な気もするけど、やっても良いのかな? ちょっと行ってみよう。


 


「何者だ!」

「エド王にお話が、あっと」


 立派な門の前に立ち見上げていたら、返事の代わりに魔法が降ってきた。それが答えなら、仕方がない。無理にでも話を聞いて貰いに行こう。


「撃て!」

「聞いてもらえないなら、聞きたくなるようにするまで」


 空へ向かう僕を、魔法が狙う。でもこれ、熱海で戦いに巻き込まれた時と比べても、全然大したことがない。


「クリエイトロック!」


 町をとび越え、宮殿の外壁前へ。宮殿の周りは余裕を持った作りになっていて、そこに四角く整形された岩を出現させる。移動しながら岩を出し続け、作り出した岩壁で宮殿を囲む。元からある外壁を越える高さまで積み上げる。宮殿からもよく見えるように。


 途中魔法で攻撃してくる者、矢を射かける者もあるけど、気にしない。そんな攻撃は受け付けないのだから。

 移動して、外周全てを封鎖する様に積み終わり、準備は整った。さて、宮殿に行こう。

 



 宮殿の中、中心に一際立派な建物がある。そこの窓からは、立派な身なりの人が外を見ているのが伺える。自分達が岩壁に包囲されたことに関して、宮殿の人々から今頃情報が集まっていることだろう。ちょっとその窓に近付いてみよう。


「何者だ! これは何の真似だ!」

「あなた方が戦っている陣営、そこの女神の1人です。エドさんが強情なので、実力行使に来ました」


 陣営名の誓約者同盟と名乗っても良いのだけど、きっと知られてないだろう。


「この様な事、エド様が許すはずがない。すぐにエド様が助けに来てくださる!」

「なら、エド様に祈っていたら良いよ。じゃあそういう事で、ニートホイホイ、そして、クリエイトウォーター!」


 単発の魔法ではそれなりの水量だけど、これは連射式。宮殿の庭園に水は溜まっていき、湖上に浮かぶ宮殿のような雅な感じになってくる。中の人は大騒ぎみたいだけど。

 連射される魔法により、じわじわと水位は上がっていく。ついには1階の床上にまで浸水という所で、入れたエーテルXが尽きる。流石に大国の宮殿、面積が広いから、多大な魔素が必要だ。


「クリエイトウォーター!」


 続きの注水。じわじわとした水位上昇だから、ちゃんと逃げる時間は与えている。もう2階に逃げないと危ないよ?

 1階の窓が完全に水没した所で、一休み。持ってきてあるエーテルXはまだたっぷり。全部使えば、宮殿を完全に沈められる。出来ればその前に、決断して欲しいけど。


「や、やめろ! なぜだ! なぜエド様はおいでにならない!?」


 そうそう、そうやってショックを受けて、エドさんへの絶対の信頼を失って下さい。


「クリエイトウォーター!」


 2階に浸水し始めた。偉い人の姿が見えるのは3階の窓。さて、どこまで追い詰めようかな?


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