5-15 続大半島戦争 サクラの策略
ここからが、僕らの戦場だ。
空洞に入る入口は、最下層から3枚と最上層から3枚の装甲板にはマンホールくらいの穴、途中の装甲板は学校のプールくらいの穴を開けてある。前に来た際に工作魔法でこの様に加工しておいた。これで、装甲板の中間層にある空間がダンジョンのボス部屋、下にお宝部屋がある、なんて感じにならないかなと設計した。ただの穴よりデザイン的にかっこいい。
「飛行魔法がないと、ここを降りるのも一工夫居るじゃろうな」
「それに、真っ直ぐ降りてきてくれるなら、狙い撃ちしやすいね」
重力に逆らわず落下なら、コースが完全に読める。それであれば、僕の魔法もハコネの魔法も当たりやすい。まあエドさんには当たっても効果がないのだろうけど。
「それで、ここからの作戦じゃが」
「この装備、そしてこの空間。これが僕らに味方する」
「不格好じゃが、性能を考えれば致し方あるまい」
装備は、ヘイヤスタの板で作った即席の鎧。鎧と言っても、円筒状に加工したヘイヤスタをつなぎ合わせた、古いデザインのロボットみたいな形。魔法をかなり遮断できるが、欠点として魔素の補給も阻まれる。この魔素補給遮断は本来利点を帳消しにする程の欠点だけど、天からの魔素補給に頼ることが元々不可能なこの空間ではデメリットにならない。
あとは、相手の魔法を反射して攻撃に使う、とってもエコな戦い方を出来るかどうかだ。
「上での戦いで分かったんだけど、エドさんの魔法は技術がとても高いみたいで、ヘイヤスタで反射する際のロスが少ないんだ」
「そうなると、どうなるのじゃ?」
「ヘイヤスタが受けるダメージが、とても少ない。威力の殆どを跳ね返せる」
カンスト女神の出来の良い魔法が仇となる。どんどん跳ね返し利用させてもらおう。
「よし、行くよ」
2人で穴の中に飛び降りる。
ーーー
「この下です。私が降りていく2人を確認しました」
「ここはダンジョンボスルーム? そして先に、さらに大きな空洞か?」
「これは…… 終わったら調査したいわね。材質も見かけないものだし、世界遺産級の遺物かもしれない」
先行した皆さんがダンジョンを探索してくれて、最終的に行き着いたのがダンジョンボスルームらしき場所。更に下へ穴が開いて、そこへ2人は降りて行ったらしい。先は真っ暗な空洞で覗いても大きすぎて全貌が掴めない。
「さて、ここをこれから探索するのですが、風魔法で上昇流を作って、それに乗ってゆっくり下降します」
「真っ直ぐ降りるのは、下から狙い撃ちされるのでは?」
「そうでしょう。だから私を先頭に降ります。私は皆さんを魔法防壁で包みながら下降します。風魔法は皆さんでお願いします」
降りる時は、塔を作っても破壊されると思いますから、ブレーキを掛けた自由落下。逃げた2人を倒した後なら、調査する手段にもなりますから、土魔法で塔を作れば良いでしょう。
「私について来てもらうのは、フジサワさん、ヒラツカさん。他の方は、ここで異常事態に備えて下さい。ここで待つ組のリーダーは、アツギさんお願いします」
「了解しました」
「では、5から数えます。0になったら、皆さん行きますよ」
「5」
「4」
「3」
「2」
「1」
「0、ホーリーシールド!」
「コールウインド!」
私からかなり下に、魔法を防ぐ壁を作る。足元に作らないのは、風魔法まで遮断しないように。風魔法もしっかり私達を支えてくれて、ゆっくりと落下する。下から極大のファイアボールが飛来しましたが、ホーリーウォールはちゃんと3人を守ってくれる。効果が無いと気付いたのか、3発来た後は静かになりました。それでも油断は禁物。守りは固めたまま降ります。
予想外に大きな空洞で、地面に近付いた頃には降りて来た入り口は遥か彼方。これは塔を作るのも大変そうです。
「降りましたね」
入り口の真下には、ピラミッド状の何か。その上に立ち、辺りを見回すのですが……2人がいません。
「ハコネと、サクラと言いましたか。どこに隠れたのでしょうか?」
「何処かで待ち伏せの奇襲を加えてくるのかも知れません。注意して探しましょう」
ーーー
目論見通り。
エドさんとあと2名が降りて行くのを、天井の穴の脇、上からは死角になる場所に張り付いて見送る。上を見上げられても、壁面と同じ材質の僕の鎧は、カメレオンのように姿を隠してくれる。
スカイダイビングのような格好で風を受けながら降下する3人を、ハコネが極大ファイアボールの対空砲火で狙い撃つけど、完全に無効化されてる。エドさんに魔法を撃つのは無駄なようだ。そんな事もあり、後ろから狙い撃つのは諦め、上に居る残りを倒す事にしよう。
エドさん一行がほぼ降りきった。では、行動を開始しよう。
飛行魔法で一気に天井の穴に飛び込む。降りて行かなかった女神は4名。こちらにもエドさん並みに魔法に強いのがいると失敗だけど、どうかな。
「何者!」
「ドーモ、女神サン、女神スレイヤーです」
ロボット風の格好だから、片言っぽく喋ってみる。古事記は参考にしてないから、お辞儀はしない。
「ニートホイホイ!」
扉を召喚。そして、
「ファイアボール」
BAN BAN BAN BAN BAN BAN BAN
BAN BAN BAN BAN BAN BAN BAN
BAN BAN BAN BAN BAN BAN BAN
ハコネを痛めつけた女神達への復讐、第2章の始まり。
部屋の壁面は、地層状にヘイヤスタと岩盤が並ぶ。ヘイヤスタに当たったファイアボールは、跳弾となってそこら中に。今回はハコネがサポートについてないから、冷却できないので少なめに発射したけど、跳弾となって飛び回るおかげで、どこかで誰かに当たる。
BAN BAN BAN BAN BAN BAN BAN
BAN BAN BAN BAN BAN BAN BAN
BAN BAN BAN BAN BAN BAN BAN
ちょっと冷めた頃に再発射。ヘイヤスタの鎧によって、僕は無傷。ちょっと熱いけど。
戦術ビューにて、全員撃破を確認。
さて、後始末をしよう。装甲板の維持費を、最大に!
ーーー
「上で奇襲を受けています!」
「奇襲!? しまった!」
「アツギ、イセハラ、ザマ、ミウラ、リストから消えました」
まさか、上に隠れていただなんて。2人とも下に降りたとアツギさんが見たと言ってたけど、裏をかかれてしまった。
「今更戻っても仕方がありません。先程のファイアボールを放った1人は下に居るはず。ここで倒しましょう。別行動は同じ事の繰り返しになります。一緒に移動します」
私は大丈夫だけど、フジサワさん、ヒラツカさんには防御魔法を掛けないと厳しいかと思います。全方位に防御障壁を発生させるとその間は攻撃する余裕がありませんが、まずは見つけるのが先決です。戦術ビューに見える所には居ないようですが、どこで私達を狙っているのか。




