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5-13 続大半島戦争 復讐者

「俺まで運ぶ必要があったのか?」

「置いとくと何が起きるか分からないし」

「こんなん、自力で逃げられるわけ無いだろ」


 自力で逃げ出す心配もあるけど、誰かの助けを借りて逃げ出す可能性もね。戦場に1人で居たとは言え、フ族の誰かが助けに来るかもしれないし、戦力として役立つからと同盟軍の誰かに助けられる可能性もある。こいつを捕縛しておくことは、同盟軍の利益とは相反することでもある。


 ジョージBを運びながら、空を行く。戦略ビューで見つけたハコネの居場所は、以前僕らが龍神にやられた因縁の場所。

 僕1人が飛ぶのとでは運ぶ重量は3倍。飛行魔法は全力を出しても普段よりノロノロ。遅いおかげで、地上もよく見える。酒匂川を渡り東へ向かう隊列は戦場へ向かう兵士たち。逆に西に渡る人々は、戦火を逃れるため避難するのかな。

 僕が飛ぶのに匹敵する速さで道を西へ進む誰かが見えるけど、ノロノロ飛行とは言え馬より速い僕と同じくらいとは、どんな健脚の持ち主だ。ちょっと興味を惹かれるけど、ハコネ達を助けるのが優先だ。陸路に沿って小田原の方へ進む地上の人々の行く道と離れ、最短ルートの山越えで飛ぶ。


「ちょっと待ってくれ。気持ち悪い」


 ジョージBは思ったよりお荷物だった。あれだけ強いから、大抵の事はなんとかなるかと思ったのに。


「こんな高所を飛ばれたら、高山病になるに決まってるだろ。お前がおかしい」

「そういやこの辺、夏なのに北側には雪渓が残ってるんだよね」


 下に見える山々は、強羅の北側にある明星ヶ岳。あちらで900mくらいだから、ここでは4000m級。標高のせいで、ここでは草も乏しい岩肌を晒す山だ。


「寒くて催してきたんだが、何とか出来ならんか?」

「適当に中で出してくれたら、傾けて外に捨てたげるから、中にしといて」

「そりゃあんまりだ」


 そんな下らない話をしてると、間もなく仙石原を見下ろす山だ。ここから見下ろせば何が起きてるかよく見えるはずだけど、予想外の先客が山から仙石原を見下ろしている。こいつも関係者?


「人族の神族も飛ぶ力を得たか。面白い」


 なぜ龍神がここに?


―――


「ハコネがあれ程の魔法を使うとは思わなかった。貴方もアレを出来るのか?」

「あんなの知らないわ。姉さんの新しい技か何かでしょう」


 姉さんのレベルにしては遥かに大威力の魔法を使ってるのを目の当たりにして、フジサワも私も気になって、ちょっと一休みになってしまった。


「姉さん、デコイの使い方間違ってるわ」


 追尾魔法に対して、持続的なデコイを出してどうするのよ。そんな出し方したら、デコイ9体あっても10に1つは本人に当たるじゃない。

 デコイは追尾魔法が放たれてから、対象を誤らせるために出すもの。追尾魔法が追ってる最中に対象が2つに増えれば、2つに1つはデコイを選ぶ。それで本人を追って来たら、またデコイを出す。そうすれば、デコイ9体で512に1つ、つまりほぼ当たらなくなる。

 そんなコツを教えに行きたいけど、私はフジサワを抑えないとならない。片手間で抑えられる相手じゃない。


「威力はともかく、ハコネはハコネの様だ。さて、再開だ」


―――


「如何に剛烈な炎でも、当たらなければ何という事はない!」


 チガサキを一撃で消し飛ばせたんじゃが、後がまずい。奴らデコイを多用して、全く当てさせもせぬ。我の魔法は必ず奴らのデコイに当たる。しかし奴らの魔法は、たまに我に当たる。何が違うというのじゃ?

 最初の油断がある時に全員まとめてやってしまうべきじゃった。


「熱ッ!」


 誰の魔法も当たれば痛いですまぬが、今のはヨコスカか。こいつのは、当たるとダメージが大きい。

 どいつもこいつも、避ける余裕を取るために我と距離を取りつつ包囲しておる。


「トドメよ!」


 お主ら一斉にか? もう白旗を揚げんといかんのか? 白旗を揚げても間に合わぬか?


 BAN BAN BAN ...


 女神達の居た場所が、上から撃ち込まれた魔法の連射で吹き飛ぶ。


「やっぱりお主も来たんじゃな」

「次に会うのは10年後じゃ、寂しいからね」


―――


 ハコネのピンチに乱入したけど、20発くらいの連射で魔砲が加熱してしまう。使う魔法が強化ファイアボールだから、1発当たっとところで牽制程度にしかならない。相手も女神、魔法に耐える能力は高い。撃つまで撃たれ、撃った後は撃たれないとまでなるには、まだ物足りない。爆発で土埃が舞い上がり、視界を遮る効果はあったけど。

 これを普通の人に使うと殺傷能力は高いはず。でも、そういう事はしたくない。だって死ぬじゃない。その点女神相手なら、問題なし。だって死なないから。次に目覚めたら10年後だけど。


「何者だ!」

「ハコネの保護者、サクラです」

「誰が保護者じゃ、全く」


 時間稼ぎした間に、ハコネは少し回復したみたいだ。


「ここに居るので全部?」

「オダワラたちも別に戦っておる」

「じゃあ、こっちがハコネの分ね。ハコネ1人に9人掛かりとは、フェアじゃないね」

「10人じゃ。チガサキだけは倒せたのじゃがな」


 戦争にフェアとか無いのだろうけど、だとしたら僕らも手を尽くそう。


「ニートホイホイ」

「こいつも魔道具を召喚するか」


 9人の女神達はデコイを準備する。


「こいつらのデコイは優秀でな。我の魔法がことごとくデコイに阻まれて当たらぬのじゃ。それなのに、我のデコイと来たら……」

「それはデコイの優秀さじゃなく、使う人の優秀さじゃないかな。それはともかく、僕の武器は例の問題があるから、サポートお願い」

「そうじゃったな。任せておくのじゃ」


 僕の部屋に入るハコネ。実戦初使用のエーテルXを装填して、準備はOK。

 ハコネがやられた分、やり返す時間だ。この武器にピッタリのシチュエーション。真似した元が、復讐者の名を冠する武器だから。


「いくぞ、フリーズ!」


 ハコネの初級魔法が発動する。僕の部屋の扉に対して。

 これで加熱の問題をクリアして、僕は安心して空へ。


「ファイアボール!」


 BABABABABABABABABABA...


 7連の砲身を炎が周り次々と吐き出されるファイアボール。


 反動で僕が飛ぶのも姿勢制御が難しい。


 ハコネを痛めつけた人達へ。


 デコイの魔法は、追尾魔法には代わりを引き受けるという効果があるけれど、この魔法はファイアボール。追尾もしない、ただ直進する火球。


 それが毎秒30発放たれる。


 1発ずつは女神に対して致命傷にはならないけど、無傷ということもない。


 土埃が凄くて、目視では当たったか確認できないけど、戦術ビューが示す標的に向け続ける。


 これだけ連続して撃てているという事は、エーテルXはハコネの魔法で沸騰を免れてるみたいだ。 


 BABABABABABABABABABA...


 装填したエーテルXは使い切ろう。まだ行けそうだ。

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