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5-11 続大半島戦争 ややこしい事態

「見つけたわよ!」


 小屋に駆け込んで来たマルレーネ。山を駆けまわり、草や泥で汚れてる姿そのままで、見て来た事を語ってくれる。別働隊がやっぱり居たんなら、エルンストに知らせないと。


「別働隊?」

「そんなの…… いや、それも居たんだけど、それどころじゃなくて、サクラの本当の身体よ!」

「えっ!?」


 なぜここに?

 探してない訳では無かったけど、ちょっと後回しにしてた。都合良くあちらから来てくれるとは。

 まあそれはともかく、僕の身体を持つ正体不明のXは、魔族陣営の拠点で復活して再び前線に戻って来たんだろう。聞いた話だと、手柄を立てて公方挑戦権を得るのが頂点に立つ近道との事だから、大手柄狙いで大部隊が居るここを狙ったのかもしれない。前回も別働隊としての登場だったけど、手柄稼ぎには効率がいいのかな。


「どんな感じ?」

「山の中で行軍中のチガサキ軍を斬りまくってたわ。犠牲者、100人で済まないかも」


 どうする?

 前回は敵としての遭遇だったから戦わざる得なかったけど、今は敵では無い様だから話を聞いてくれるんじゃないか。それに、陣営的な都合は置いといて、あの身体で大量虐殺なんてさせたくない。誰が操ろうと、あれは僕の身体だ。


「止めに行って、話をしてくる」

「やっぱりそうするのね。分かったわ。最後に会った場所は……」




 状況をまずハコネに知らせて、僕が会いに行く事にする。戦場に不釣り合いで印象に残りやすい僕の姿を隠すため、適当な革鎧と革の冑を身に着け、いざ出陣。

 ハコネが居る山の上に登ってみたけど、観戦女神様ご一行は見当たらない。どこか別の場所に移ったんだろうか。探すのに時間を掛けるとターゲットは動いてしまいそうなので、ハコネには事後連絡ということにして、発見地点に向かう。


 聞いてた場所に行くと、無残な姿の兵士たちが横たわる中、遺体を運ぶ者、祈りを捧げる者など何人かが居る。彼らは敵陣営なのかもしれないから、接触は避けた方が良いか。

 戦略ビューで今いる場所の近傍を見る。初めて来た場所だから近くしか見えないけど、祈りを捧げている人は中立の青色、遺体を運ぶ人は敵方の赤色になる。

 縦列の部隊を次々襲ったようで、似た光景が続く。一体どれだけの犠牲を出したんだろう。戦場とは言え、この様に人に対して振るわれて欲しい力ではないね。それも僕の身体。閻魔大王の勘違いで地獄行きは御免被りたい。


 森の中、チガサキ軍の犠牲者が途絶え、獣道のような場所になる。東軍本隊に近付きつつあるので、うっかり戦闘に巻き込まれる恐れが出て来たけど、そうなったら逃げれば良いかな。

 道から外れた場所に青い点が1つ。道から外れたという所が少し怪しいから、足音を立てないように草をかき分け進む。


 居た!


 見間違え用もない、長年見慣れた自分の姿。そして、目が合った!


 とっさに飛び降り、向かってくるターゲット。戦術ビューではレベル90、職業は「サクラの勇者」で、確定。名は武田丈二……って、そのままかい!

 ハコネが昔三島でやったような斬撃が飛んで来るが、飛行を応用して横への急移動で回避。そしてターゲットを捕獲し無力化。無力化の方法は簡単で、マジックハンドで持ち上げ、仰向けに宙に浮かす。この状態では僕の方に斬撃を放つことも出来ないし、逃げる事も出来ない。

 何とか抜け出そうと、あるいは姿勢を変えて僕に攻撃を加えようと藻掻いているが、どうにもならない。


「まあまあ、落ち着いて。話をしたいだけだから。まずは自己紹介から。僕はサクラ。訳あってこんな姿をしてるけど、その身体の本来の持ち主だ。今はその身体を離れこの身体に移ってしまったけどね」

「何を訳の分からないことを。この身体は俺の物だ。お前の物になった覚えなんぞ無い」


 確かに訳が分からない自己紹介だけど、そうなのだから仕方がない。


「君はどうしてその身体に入ったのか知らないけど、あまりその身体で酷い事はしないでくれないかな」

「この身体は生まれた時から俺の身体だ! とやかく言われる筋合いはない!」


 いやいや、違うでしょう。そんな訳はない! ないよね?


「そうは言っても、肩書はサクラの勇者となってる。サクラの勇者なんて、僕が探す身体、ただ1人しか居ないはず」

「うむ。まあ、勇者は生まれた時からじゃ無いが、この身体は生まれた時からだ」

「ならいつ勇者になったの? 10年前、突然その勇者な身体の持ち主になったんじゃないの?」


 僕とハコネが龍神に倒された以降に、彼は僕の身体に入ったはず。10年前からで無いと、辻褄が合わない。


「10年前、そうかサクラとやら、勇者について何か知っているのか。そう、俺は10年前に日本からこの世界に来た。女神に人類最強を願い、勇者の力を得た。名は武田丈二。名は日本にいた時からだ」


 一気に情報ラッシュ。また日本? 今度はどこの日本なの? それに元々武田丈二?

 その名まで身体と一緒に渡した覚えはない。というか、その名を何処から知った? 美咲? いや、美咲がこいつと会ってたら、連絡来るよね。どうなってる?


 ちょっと考える。こいつが言う事が本当だとしたら? 日本からやって来た自称武田丈二は、勇者となった武田丈二の身体に転生? 同姓同名があり得ないレアな名前じゃ無いし、可能性はある。どこかの女神様が、面白がり同姓同名の魂を放り込んだ。その線かも。

 はっきり言って、中の人がどこかの武田丈二さんでも構わない。身体を返して貰えれば。と言うか、身体を返して貰うの、どうしたらいいの? ハコネに入れ替えをやった神様に聞いてもらうしか無いかな。


「君の言うことを信じよう。武田丈二君、いや、僕が先に居たから、ジョージB君。身体は返してもらいたから、来てもらおう」

「おい、離せ! 何をする!」


ーーー


 俺の前に現れた妙な技を持つ少女に、浮かされて動きを封じられた。足も身体も浮いたままでは何も出来ないなんて事は初めて知った。まさに手も足も出ないって奴か。

 姿勢を変えようにも、身体を固定されて姿勢を変えられない。後ろに剣撃を放つ練習をしとくんだった。

 この世界でこの身体を得て、こんな一方的にあしらわれるのは初の出来事だ。女神よ、人類最強は嘘か?


「何処へ連れてく積もりだ?」

「君の処遇を相談するために、異世界との人材交流に詳しい女神様にね。でも拘束しながらの移動は不便だし……そうだ! ニートホイホイ!」


 変な呪文を唱えて、その後何が始まるかと思ったら、金属がガシャガシャと音を立てる。何を始めるってんだ?


「加工、加工」


 バケモノ女のそんな声がしたと思ったら、何かが俺の身体に巻き付いた。強制的に空中で気を付け姿勢にされ、その上に金属の板を巻き付けられた。巻き寿司は好きだが、巻き寿司にされるのは好きじゃ無いぞ。それに海苔は分厚い金属板だとか。腕も足も動かない。


「おい、なんだこれは! ここまでするか!?」

「ジョージB君、君は人として力があり過ぎる。僕が抑え続けないと拘束を保てないのは困るから、動きを封じさせて貰った。ちょっと我慢しててね」


 首だけ出てる状態で地面に転がされる。手も出せず、蹴っても壊れず、何も出来ない。


「催した時は言うように。僕の身体を汚したいわけじゃないから、その辺は考慮するよ」




 途方も無い速度で森の木が過ぎて行き、視野に木が無くなった。森を出た様だ。仰向けで運ばれるから、空しか見えない。どんな状態に置かれてるのか、何処にいるのかも分からない。


「ただいま。ターゲット捕獲に成功」

「サクラ、良い所に。大変なことになった」

「こっちも大変な事だけど、まず聞こうか」


 もっと大変な俺の事は後回しらしい。


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