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4-3 大半島戦争 反撃

「なんとかまた見付けたとして、体を取り戻すって言っても、どうしらたいいだろう?」

「良からぬことをさせなければ良いのじゃ。仲間に引き込み、無難に過ごさせるのが良かろう」

「中の人が悪い人でないと良いのだけど」


 司令部を抜けて、ハコネと作戦会議。僕の体は、どこのだれか知らないけれど中身・・が入ってしまったのだ。出て行ってくれというのが可能かも分からないし、もし出て行かせることが出来たとして、同じことの繰り返しになるだけだろう。

 すぐに居場所を探して接触したいけど、今の状況でそうも言っていられない。


「まずはこの戦争が終わってくれないと、自由に動けないか」

「急ぎ終わらせたいなら、狩って回ればすぐじゃろう」


 人間を狩る(・・)って言うのは抵抗がある。お帰り頂く、だといいのだけど。


「魔族の犠牲まで減らしたいの? サクラの優しさはまるで女神の様ね」


 実際に女神なのだけど、本来の女神が言ってる事の方が物騒だし。マルレーネ、ハコネへの皮肉?


「魔族が減れば、人族が脅かされないで済みます。魔族が滅べば、それ以上の犠牲は無くなる」


 ハンスは極端なまで好戦的。でもこれが人族の一般的な考えらしい。




「まだ増援があるのか?」

「トンネルの中までは分かりません」


 再び司令部。犠牲を減らすには、戦争が早く終わるしかない。時間が経つと、次々と増援が来てしまい、流さなくてはならない血が増える。


「女神様はトンネルを閉鎖しては下さらないのか?」

「維持にお力を注ぐのは止めて頂きました。これで破壊することが可能になりますが、壊しに行かなくてはなりません」

「魔族が次々出るトンネルに行ける様なら苦労は無いな」


 トンネルを壊す?。


「トンネルを壊す方法はあります」


 マリの魔道具をハコネが使えば、きっとトンネルは崩れる。爆風を逃がす方法を考えないと、トンネルの直線上が酷い事になるだろうけど。


「まことか!? ぜひやってくれ!」

「壊せるのか。でもそれでは……」


伯爵は乗り気。でも思案顔の若者が一人。


「奴らは何があっても我らに降伏しないでしょう。退路を断たれた敵が死に物狂いで戦うと、損害が大きいのでは?」

「確かに。先の襲撃後、敵軍は戦意を欠き気味。一戦交える事に躊躇は無いが、敵が全力を出す状況を作る必要も無い」


 エルンストの言葉に一同考え直す。窮鼠猫を噛むとも言うし、相手は鼠どころか虎だろうし。


「出来れば、奴らが帰りたくなるように仕向けたい」


 帰りたくなるような事態。あるとすれば……


「増援を断つために、三島を攻撃したいと思うのですが、どうでしょう?」

「ミシマ? トンネルを抜けるのか? 出来るのならばやってくれて構わぬが……」

「僕が居ない間、ハコネを頼ってください。索敵も救助も僕と変わらず出来ます」


 ここに居て誰かの窮地を救いたい気持ちもあるけど、三島に行くのはハコネより僕の方が良い。少しでも犠牲を小さく勝つ方法を考えたいから。


「もし僕が出発して1日後に戻らなかったら、次の策を考えてください。僕を助けにとは考えないでください」

「まさか命を捨てる覚悟か? 縁者でもない我らのために」

「いいえ、僕は絶対に生き延びます」


 生き延びると言うか、例え倒されても、10年で復活するのだけど。




「おお、良い所に。試作2号だ。試したいのだが、マルレーネ氏は?」

「マリ、その試作2号、いきなり実戦でどうかな?」


 マリを連れて熱海へ。マリと試作2号をハコネ達に預ける。


「ちょっと三島に行って来る」

「ミシマ? 行けるでしょうけど、行ってどうするの?」

「ちょっと城攻めに」




 冬だから暗くなるのが早い。夕暮れに出発し、山越え飛行。峠で暮れて真っ暗になるのを待ち、三島方面へ進む。

 暗闇の中、光が見える。戦略ビューで確認すると、三島までの道のりを6割くらい来た場所。トンネルの三島側出口だ。中継地点の陣地だろうか、篝火が焚かれている。

 ここを襲撃する方が、直接的に援軍が減るし、ここを奪われまいとトンネルから戻って来る者もいるかもしれない。


 では、始めよう。


ーーーー


 轟音とともに目覚めると、宿舎の屋根に大穴が空き星が見えている。急ぎ外に出て、慌てている歩哨に問う。


「何事だ!」

「申し上げます! 敵襲でございます! 大岩が飛び込んできています!」


 天井の穴は、床の穴の真上。いや、そもそも、真上からとなれば、飛ぶ術が必要な筈だ。そんな魔法は見た事が無い。未知の魔法を使う者が、敵方に!?


「大岩は真上から来ておる。上を狙え!」


 飛ぶ魔法を持っていると推測しよう。こちらは臨時の板張り宿舎だ。ファイアボールの一撃で炎上もさせられようが、敵はそれをしていない。居場所を掴まれないように、ファイアボールを使わないのか?


「ライト!」


 上空を照らすが、姿は見えない。一撃加えて飛び去ったか?


 その直後、食糧庫に大岩が撃ち込まれる。これも真上から。上へ向けて照らす魔法には、また姿が映らない。1人が魔法で監視できる空は広くない。何人も動員して照らすが、次々と攻撃を食らう。


「忌々しい! 索敵スキル持ちはおらんのか!?」

「アタミに向け進んだ中に居ります。呼び戻す様、伝令を立ててよろしいですか?」

「すぐ呼び戻せ!」


ーーーー


「クリエイトロック!」


 下から照らされる魔法に何度も発見され掛けるけど、攻撃はされない。魔法に照らされはしているけど、今の僕は風魔忍者の如く黒装束に顔にも黒く塗ってある。塗る時にはハコネに大笑いされたので、仕返しにハコネの顔にも墨を塗ってやった。

 夜間爆撃は発見さえされなければやり放題。暗闇に打ち上げられるファイアボールを躱しつつ、石を落とす。


 攻撃のバリエーションは色々試してみる。

 飛びながら石を作って落とす水平爆撃。何か所かに次々移動と爆撃できるものの、狙いがつけづらい。

 上空に止まって石を落とす自由落下。狙いに当てやすいけど、狙う場所が予想されるとファーアボールの牽制に遭うため、難しい。

 水平飛行から目標へ斜めに急降下しつつ岩を放す急降下爆撃。水平爆撃よりも狙いが外れにくい。


 そんな爆撃の試行錯誤をほんのり明るくなりかけるまで続けて、一時撤退。

 戦略ビューで赤い点を数えながら襲撃していたけど、赤い点が減る事は無かった。死者は居ないらしい。まあ回復魔法もある世界だから、死にかけから帰って来てるのかも知れない。




「敵が引き始めました」


 夜間爆撃2日目は、同じ手で。急降下爆撃でかなり近い所まで下りているので、地上の怒声が聞こえたりもする。

 3日目は見えないはずなのに攻撃が当たりそうになる事が増えた。そこでデコイを多数出し、目くらましをし始めた。ファイアボールもあえて打ちすぐにデコイを作る。すると面白いように、デコイに向けて魔法が飛んでくる。ちなみに僕のファイアボールは相変わらずノーコンだけど、急降下しながらだと結果的に目標から外れる距離が短かった。

 そんな阿鼻叫喚の現場と熱海を往復して嫌がらせをすること3日。嫌がらせ翌日からは増援が来なくなり、ついには敵が減り始めた。


「こんな思い通りに行くとは……」

「こちらも犠牲が無くて何よりだ。飛行魔法、いつか我らも使えると良いのだが」




 5日目には、全ての敵がトンネルに消えたことを確認。


「さて、我の見せ場じゃ。アタミよ、良いんじゃな?」

「町に被害が出ないように、障壁を張りましたわ。やっちゃって下さい」


 多くの見物人(+神)の前で、ハコネオンステージ。


「ファイアボール!」


 トンネルに打ち込んだ威力マシマシのファイアボールはトンネルの入り口から数百メートルで炸裂。

 その威力を見た人は思ったのだった。


『最初にこれ打ち込めば、戦意挫いて追い返せたんじゃ?』


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