4-2 大半島戦争 遭遇
8/20 戦いの描写を少し改変。
「何事!?」
爆風に旗が揺れる。
「見て参ります!」
「僕も行きます」
爆風が来たのはハコネ達が居る方向。副長さんが走るのを追い越し、ハコネ達の元へ。
「なんじゃ、そんなに慌てて」
「さっきの爆風で司令部の「何事ですか!? 魔族の魔法ですか?」」
「我の魔法じゃ。あの位で驚くでないぞ。あれでも抑え目じゃ。町を壊したくはないからのう」
どや顔ハコネを横目に、被害者側を見に行く。土塁の崩れかけた場所から覗き込むと、えぐれた石畳と倒れている2人。運ばれていく1人。
「これを見て諦めてくれたら良いけど、そうも行かないのかな。おっと!」
あちらに姿を見せたら、魔法を撃ち込まれた。急ぎ土塁の裏に逃げたけど、炎の矢が追って来る!
「サクラ!」
直撃されてしまい、服が少し焦げた。
「あれを食らって、無傷!?」
「無傷じゃないよ、ほら、焦げてる」
「普通は大やけどよ?」
あちらに姿を見せてしまうと、そこを狙って追尾型の魔法が撃ち込まれる。気付いて土塁に隠れても、土塁の後ろまで追尾されてしまう。土塁や塹壕が相手ならこの魔法が良いのか。勉強になるね。初級の魔法じゃないから使えないけど。
「ホーミングフレイムアローが厄介ね」
「その厄介を連発してる姉さんが言うかね」
ハコネが威力が大きな魔法が使えるパワー派、あちらは戦い方に慣れている技巧派か。伯爵軍の魔導士は技巧も威力もあちらに劣ってるようで、あまり役に立ってない。彼らだけが戦力だったら、絶望的な状況だったのだろう。
「サクラ、ああいうときは、こうやるんじゃ」
ハコネがさっきの僕の様に土塁のほころびから姿を見せ、ホーミングフレイムアローを誘い込む。
「デコイ!」
出したデコイをマジックハンドで前方に投げ出す。デコイが進む方が速いので、ホーミングフレイムアローはデコイを追いかけてUターン、デコイもろとも敵陣に突っ込む。
「どうじゃ!」
いや、ハコネ、今の作戦は良いけど……
「デコイと同時にハコネも出たら、2発中1発がハコネに来てるし」
僕と同じく、服が焦げる。
「これ、ハコネもサクラも避ける必要無いんじゃない? 2人が突撃して魔法撃ちまくったら勝てるじゃない」
「我らが手柄を占めてしまうのはどうかと思ってな」
マルレーネの提案ももっとも。引き換えに他の人の安全が得られるなら、その方が良い様な気も。
「サクラさん、司令部に戻りましょう。報告して、反撃の策を上奏したいです」
様子を見て回っていた副長さんが司令部に戻るらしい。僕も戻るべきか。
「ここは任せても大丈夫ですね。ハコネ、勝手に前進は無しね」
「心得た!」
「あの破壊力に、敵の魔法をものともしない防御。これなら勝てます」
「父上、援軍を呼びに行く件、取りやめでよろしいですね?」
エルンストが援軍要請を口実に脱出する件は、エルンストが受け入れたみたいだけど、それを取りやめ?
「サクラ殿、敵に動きは?」
「数は48人。後続あり、前線から後送中の者もあり。何人かは倒したと思いますが、まだ増えます。城の裏山にも3人! いつの間に!?」
そこまで言ったタイミングで、今度は後ろから爆音。振り向くと、城の屋根が一部吹き飛び、瓦礫が降って来る。
「危ない!」
とっさにエルンストの前に飛び出してかばいつつ、降って来る大きな瓦礫の軌道をマジックハンドで逸らすが、全ては逸らせない!
アドルフさんが伯爵を庇って背中に瓦礫を受け、倒れる。
「アドルフ!」
鎧を着ているが、その鎧は潰れ、酷いありさま。血を吐くアドルフさん。肺をやられたのなら、すぐに治療を。
「キュア―!」
「サクラさん、鎧を何とかしなくては! 中の兄様を治しても、鎧が潰れたままでは!」
押しつぶされた体を治そうにも、体を包む変形した鎧まで直るわけではないから、体は潰されたままになってしまう。
「サクラ! 無事か!?」
「ハコネ! アドルフさんの治療を!」
慌てて飛び込んで来たハコネに治療を任せる。僕がやる事は、第二撃の防止。
「元を断ってくる!」
瓦礫がこちらに降って来た事から、裏山から何かが放たれたと予想。山に居た3人がは、降りて来ようとしている。
「よくも!」
僕の魔法は当たらないので、飛行魔法で自ら加速して弾丸の様に突き進む。これなら的を外さない。
ただ飛ぶのではなく、加速しつつ飛ぶ。物を飛ばす時は魔法有効範囲をすぐ出てしまうので加速は最初だけ。しかし自らを弾丸にすれば、いつまでも魔法有効範囲なため、加速を続けられる。
そのまま3人への衝突コース! 反撃の隙も与えない!
「えっ!?」
衝突の寸前、その姿と顔が見えた。そのまま激突。
「イタタ…… キュア―!」
さすがに無傷とは行かなかったけど、間違いなく撃破した。戦略ビューで先程の3人は居なくなった《・・・・・・》 ことを確認。
「まさか、こんな所で……」
「サクラ、こっちはもう大丈夫じゃ。そっちはどうじゃった?」
「ハコネ! 見つけた! 僕の体!」
周りに他の人が居るのも忘れて、思わず叫ぶ。
「でも…… 倒しちゃった。跡形もない」
「サクラ、さっきの爆発は何だったの?」
「それが、あの城を狙った爆発なんだけど」
マルレーネ達の所に報告に行く。ハコネが前線を離れて劣勢かと思ったら、攻勢が止んでいるらしい。
犯人はおそらく僕の体を操る誰か。城の一部を一撃粉砕とは、さすが勇者の力。そう言えば、三島でハコネが城壁を破壊した技、あれが使われたのかもしれない。
「倒して、その体はどこに?」
「あの体は、不老不死じゃ。体を残さず消え去っても、蘇る」
そうだった。僕の体は不死。今頃元通りになって、えっと、どこに?
「恐らく、どこか根拠地としている場所で復活しておるじゃろう。また探さねばならんが、魔族の一味に居る筈となれば、探すのは容易じゃな」
遠くで復活したとなれば、あの攻撃はしばらく来ないだろう。
そして、気が付いた。レベルが102に上がっていた。僕の体には、それだけの経験値があったって事? でもハコネもレベル102。離れていても経験値はパーティーで山分け?
「敵はさらに増えていますが、攻勢が止んでいます」
「城が一部壊され、けが人を治療中です。重傷者はアドルフ様はじめ6人。亡くなった方はおりません」
「城正面に注意を引き付けつつ、最大戦力で裏山から奇襲か。してやられた」
後ろから来た僕の体が最大戦力だった可能性もある。もしかして、司令官だった? 相手側の動きが鈍くなったし。
「再びの攻勢があろう。備えを怠るな」
「はい」
「そして、サクラ殿、息子の命、そしてこの城を助けて頂き、感謝する」
「いいえ……」
あの攻撃をしたのが僕の体だと言うのが、僕の意志でやったのではないにせよ、感謝されることに後ろめたさも感じる。そもそも、僕の体と言う戦力を得たから、三島の陥落なんて事態になった可能性も出て来た。
この戦争、偶然巻き込まれた戦争かた思ったけど、僕の戦争だ。




