表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

214/215

11-28 ハコネの願い

 この星を救った女神達が戻らないまま、2日が過ぎた。

 海面変動の後始末で、魔王は江戸で色々と仕事があり不在。長尾は他の大陸で被害が出ているか確認中。ジョージBは暇になって長尾と一緒に旅立った。


 まだ何か危機が存在して女神達が対処してるのかと、天体観測をしているアリサ達にも調べて貰ったけど、これと言って問題は見つからない。


「戻らないんじゃ無く、戻れなのかな」

「分かる範囲では、そう予想してる」


 僕の部屋でみさきちとリンを呼んで作戦会議。

 3人寄ればなんとかと言うから、良いアイデアが浮かばないかと考えている。


「戻れない理由が分かれば……」

「姿を変えるのに必要な何かが足りないとか?」


 魔法に魔力が必要な様に、魔法を超えた女神の力を使うには信仰力が要るという。そうい言う物を使い切って帰って来られないと言う事はないだろうか?

 だけどそれに関して言えば、今回の地球救済で信仰力は猛烈に貯まっただろう。多くの人が祈る事で女神に力を与え、危機を乗り切ったのだから。


「この際、召喚を試してみようか」

「地球と一体化した女神を召喚すると、地球が呼び出されるのでは?」

「それも困るか。じゃあ、まずは候補にハコネ達が出るか見てみよう」


 地球を召喚した際の巨大魔法陣は、異世界5号で開発された魔法陣をベースとした物だったけど、今回試そうというのは女神の術として存在してた召喚。

 女神の召喚術は、使うと召喚に関するインターフェースが現れる。その時点で対象リストと必要コストが表示されるので、そこにハコネが居るかどうか。そしてリストを見てキャンセルも可能。

 また異世界5号の魔法陣を解析した際に、記憶の初期化という副作用も無くす事に成功して、アリサ達を呼び出す為に利用した実績がある。


 実験スタート。まず召喚術を実施。


「どう?」

「リストが長い…… でも女神達がリストにあるし、まとめて地球って表記にもなってない」

「なら、まず一歩前進」


 リストをひたすら探す。そして、ハコネを発見。

 これでハコネが戻れる?


「ハコネが居た。呼び戻してみる」


 そう宣言して、ハコネを選択して、実行!

 一瞬、ハコネの姿が見えた!

 しかし、すぐに消えてしまい、失敗。


「どうなった?」

「一瞬だけ、見えたわね」


 うまく行かなかった様だ。

 何がダメなんだろう……


 他の女神で試したりしたけど、召喚出来ないのは同じだった。

 何がうまく行ってないのか、分からず仕舞い。




 召喚術は、その後ずっと失敗。

 闇雲にやってもダメだろうという事で、何か分かるまで一旦休みにした。


 女神の召喚がうまく行かないながら、世の中は変わっていく。

 科学も好きなだけどうぞとなり、鉄道運行が再開された。大阪から横浜までの鉄道は、江戸間での延伸工事が始まり、この前開通した。


 大召喚を成し遂げて、3年。

 皆がそれぞれやる事を見つけて、各地で活動している。


 マルレーネとハンスは、何かの切っ掛けがあると少しずつ記憶が取り戻せるのが分かり、こちらの各地を旅している。この前はご両親のお墓参りをして、子ども時代の思い出がかなり取り戻せたと喜んでた。


 アリサとマリ、そしてスロは、異世界5号を探検中だ。

 いや、今はテラと呼ぶ場所。ここが自分達の世界になり、異世界と呼び続けるのもおかしいという事で、あっちの星はテラと呼ぶ事にした。向こうで現地人がそう呼んでるのに習って。


 みさきちは京都へ。そうだ、京都行こう、ってやつ。ご隠居としてのんびりしてる、この世界でのお兄さんを訪ねるそうだ。もうかなり高齢で、残された時間を大切に、との事だ。


 リンは九州に戻って配下のスライム達と交流。


 ゴーラは2つの星に多くの分体を置いて、世界を見守っている。もしかしたら、自力で戻って来た女神が予想外の場所に居るかも知れない。そんな希望で、ゴーラもハコネを探している。


 僕の方はと言うと、湯本の温泉に来ている。召喚の術を試す度に消費していた信仰力を、ずっと前に使った方法、お布施で回復する為。

 温泉近くにある建物の1つを僕が使える事になっていて、温泉関連のよろず困りごとを解決しつつ、お布施を貰っている。


 前にここに居た時は、ハコネが一緒にいた。

 和風の部屋で1人座って、何をするでも無く、窓の外を眺めている。

 季節は冬になり、山の方には雪で白い場所がある。


 ふと思い立って、外へ。

 そう言えば、要塞での戦いが終わってから、仙石原の方には足を伸ばしてない。

 この世界に来て最初に見た雪景色を思い出し、何となく行ってみる事にした。




 雪に覆われた高原は、見渡す限りの真っ白な大地。

 この世界に来てハコネと最初に歩いたのはこの辺だっただろうか。

 この辺で僕が召喚され、全てが始まった。


 僕を呼び出す前のハコネは、ここに1人で居たのだろう。何となくハコネの気持ちを分かる様な気がする。

 ハコネはこの地を栄えさせたいと言っていた。その為に僕を召喚した。

 ハコネは僕を召喚出来たけど、僕はハコネを召喚出来ない。


 召喚、ハコネ。

 何度も試した手順で、召喚術を使ってみる。これで消費した分の補充は、またしばらく掛かる。


 そう思ったら……


「おおっ!」


 ハコネが消えず、驚きの表情で、雪の上に立っている。


「ハコネ?」

「サクラ、お主、何をどうやったのじゃ?」


 どう言う訳だろうか。召喚は成功している。

 名前がすぐ出て来た事から、記憶の初期化も起こしていない。望んだ通りの召喚が出来ている。


 ハコネに近付き、手を握る。間違いなく、ハコネはここに居る。


「良かった…… こうなる事を、ずっと待ってた」


 僕と同じ背丈のハコネ。引き寄せて、抱きしめる。


「おかえり」




「立ち話もなんじゃ、座って話をしようぞ」


 そう言われて、僕の部屋に移動する。


「この部屋も久しぶりじゃな。お主が我を何度も召喚しようとして、失敗したのを見て居った。我からも一瞬だけ、お主の部屋が見えたのじゃ」

「なんで今回はうまく行ったんだろう? これまでと違う事は…… 召喚した場所」


 ずっと僕の部屋で召喚しようとしていたけど、今回は屋外。屋外だから成功するってのは、どういう事だろう?


「お主が召喚しようとして失敗した時、何かに弾かれる感じがしておったが、あれは何だったんじゃろうな」

「弾かれる? 召喚を阻害する何かが、ここにはあるのか…… リン達に相談して、それを探してみようか」

「……そうじゃ。その阻害する何か、消し去ってみてはどうじゃろうか?」


 ハコネの考えを聞いて、やってみる事にした。発想が、懐かしくて、面白くて。




 僕がハコネに向かい、語りかける。

 

「汝には、5つの願いが叶う恩恵が与えられる事になっている。さあ、望みを言うのです。私が叶えましょう」


 この部屋で始まった、今の僕が居る理由。


「では、1つ目じゃ。女神が顕現するのを妨げる何かを、消し去って欲しい」


 ハコネがそう言うと、頭上にメッセージのウインドウが開く。そこにはシンプルに一言。「成就」と。


 一緒に新しくできた扉から部屋を出て、廊下へ行くと、他の扉が開く。


「オダワラさん!」

「ついに戻れない問題が解決したんですね。姉さんだけ戻れて、どうなるのかと思ってました」


 他の扉からも次々と女神達が。これで、元に戻れるのだろうか。

 他の知り合いの女神達にも挨拶。皆が復帰出来た事を喜び、挨拶もそこそこに、それぞれ自分の地域がどうなったか見に行った。


 そして、僕の部屋に戻って、さっきの続き。


「あと4つの願いごとは、どうする?」

「そうじゃな…… じゃあ、3つ目」

「いや、まだ2つ目」

「2つ目は後。3つ目じゃ」


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ