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11-24 今度は待たされる側

 オダワラさんが女神達に僕のプランを話したら、違い方法でやりたいと言う女神の意見が出て、それをすることに決まった。

 僕が地球を依代にすれば、天体を動かすような願い事も叶うという考えだったけど、他の方法もあると。


 願い事に使われる作用力を、女神達の魔力として受け取る事を願い事にする。そして多くの女神達が地球を依代として、そこで奇跡を発動する。そうすれば出来上がるのは、地球を依代とした女神集合体の“魔力マシマシ”状態。

 地球を依代とした後も魔法を発動出来るのか? それについては、ハダノさんが言葉を発せない植物でも魔法を使っているから、大丈夫なはずという。

 で、誰がやるのかというと、全員がやると言っているのだそうだ。こんな一世一代の出来事に参加しないなんて、お祭り好きな女神の血(?)が許さないみたいだ。いや、お祭りに参加する方じゃ無くて、お祭りされる側なのでは?

 願い事発動に僕が関わる必要はあるけど、僕の役割はそこまで。僕まで地球を依代にする必要は無い、というかしないで欲しいというのが彼女達の希望。


 そして、僕には人と神様の中間的な存在としてこのまま居て、やって欲しい事があるのだとか。




 悲壮感のような物は無く、皆が笑顔で。姿を失うと言うことに、どんな気持ちなのか。

 そう言えば僕らがスライムに溶けて世界を渡った際、その事についてそれ程考えずに、新しく行く世界がどんな場所か楽しみという気持ちの方が大きかった。彼女達も、そんな気持ちなのだろうか。

 広いホールで、顔も覚える機会が無かった女神達が次々と見えなくなって行く。僕はただそれを見届けて、彼女達の願い事が叶うための触媒となる。


 やがて、見知った顔の女神が来た。サガミハラさん。


「面白いことを、譲ってくれてありがとうね」

「そういう物なんですか?」

「星が好きだから、星を感じられるのは本望よ」


 サガミハラさんには月へ行く時に協力してもらい、結果として地球をこの世界に転移させる力を得られた。この星を救った立役者でもある。

 笑顔で消えていくサガミハラさんを見送ると、ほとんど話したことは無いけどみさきちを介して話は出てくるハチオウジさん、ご近所なのに交流は少なかったゴテンバさんらも続く。

 その後、数人を挟んで知っている顔が。ミシマさんだ。


「人間は亡くなれば大地に還る。私達は一度大地と一体になって、その気持ちを知るのも悪くない」

「死ぬ訳じゃ……無いですよね?」

「大地がある限りは。色々終われば、また会えるでしょう」


 ここぞという時にだけ着るという緋袴(ひばかま)のミシマさんを見送る。そう、また会える。時間は掛かりそうだけど。

 その次はアタミさん。


「しばらくの間は、水源の管理も頼むわね」


 アタミさんに限らず、何人かの女神からは女神の権限で動いているシステムの管理を託されている。いくつかの遺物は維持に女神の力を必要としてるからだ。


「私が大地になれば、ずっと昔に送り出した子達にも会えるかしら」


 ミシマさんと同じ様な発想をしているところが、この2人の深い縁を感じる。


 そしてやって来たのは、ハコネとオダワラさん。


「2人も行くんだね」

「姉さんは残っても良いと思うのですが、一緒が良いって言われたら、駄目とは言えません」


 ハコネ大好きは微塵も揺るがないオダワラさん。どこへ行くにも一緒に居たいのはいつもはオダワラさんの方だけど、今回はハコネ?


「面白そうじゃろう。後で皆に語られて、我だけ知らぬではつまらぬでは無いか。それに、同じ物を同時に依代にするという事は、オダワラとも他の者とも一体なのじゃ」

「あ…… それは、良いかも……」


 ハコネの言葉にちょっとトリップしてるオダワラさんは置いといて、ハコネとは色々話しておきたい。


「星と一体になったら言葉は発せ無いだろうけど、ハダノさんがやったみたいに、何か伝える方法を探さないとね」

「ハダノに我らの声が聞こえたのじゃ。同じでは無かろうか」


 これから女神達が地球を動かそうとするに当たり、どこまで動かせば良いのかって事を伝えたりしたい。

 あとそんな実務的な話以外にも、雑談とか…… でもそれは、ハコネに聞こえるという事は他の人にも筒抜けなのか。

 ちょっとした作戦会議をして、でも時間は余り余裕が無くて、手短にしないといけない。


「じゃあ、しばらくのお別れか」

「我が勇者をしながら不在のそなたを待った年月やらと比べて、長くも無かろう。今度はそなたが待つ番じゃ」

「そんな事もあったね。実は結構待たせてたのか」


 待たせてる間の時間を僕は感じなかったけど、勇者として待たせたのは10年、他にも2回あったんだっけ。1回くらいはそれを僕も味わうべき、って事か。


「では、行ってくる」


 そう言って、ハコネとハイタッチ。

 そして、オダワラさんがハコネの手を取り、2人並んで、消えた。


 誰も居ない広い場所。

 扉の1つ1つが、不可視の女神達が存在する証拠。

 廊下を歩くと、1つの扉が開く。まだ誰かが残ってた?


「あ、サクラ」


 そこには、みさきちが居た。

 ハチオウジさんを送り出し、シモダさんを送り出した後、僕がハコネ達を送り出す邪魔をすまいと、シモダさんの空間を見ていたのだと。


「正直言って、サクラがやるので無く、女神達がやることになって、ほっとしてる」

「シモダさんは行ってしまったのに?」

「サクラはそれをやるって、悲壮感漂わせて言ってた。シモダさんは楽しそうに、まるで女神仲間と旅行にでも行くみたいにしてた。同じ事をやろうとしてるのに、全然違うもの。だったら、彼女達がやった方が……」


 そう言いながら、目に涙。行く側と比べて、残される側の方が別れの気持ちが強いってのは何故なんだろう。

 僕がハコネ達を送り出す時、どんな表情をしてただろうか。思い返すと、なんとなくハコネは僕を慰めるような感じに話してなかっただろうか。そう言う表情を見せてしまって居たんだろうか。


「そう、忘れてたわ。私の部屋も、シモダさんの部屋に繋がってね。もしかして、どこかにリンの部屋とも繋がったかも知れない。ちょっと探検しましょう」


 そう言って、僕の手を取り、前を向いて歩き出す。不思議なことも面白いことも、まだここには沢山ある。

 いつか戻るハコネ達に一方的に土産話をさせない為に、僕らも進もう。




「駄目だ、足りない」


 島に戻ると、要塞にある簡易的な天文台で測量しているジョージBがそう言う。

 女神達の頑張りで2つの星で働く潮汐力は抑えられた。そうでなければ、僕らが出てくる為の扉も水没してたそうで。その問題を改善したのは良いけれど、地球を安全圏まで遠ざける様には進んでいない。

 2つの星が接近するのを減速する程度に留まっていて、衝突という最終的な破局を防げるまでは至っていない。

 多くの人々がすぐに海へ沈む危機は去ったが、まだ大きな危機は続いている。


「無駄だったの?」

「いや、多分魔力が足りてない」

「だったら、僕も彼女達に加われば」

「燃料が足らんのだ。エンジンを増やしたい訳じゃ無い」


 女神達が召喚された事で得られた願い事の作用力。それでは足りないと。

 もっと大きな作用力を引き出すには……


「出し惜しみはせず、出せる物は全部だ。向こうへ行くぞ」


 最後の1手を試みるため、ジョージBと一緒に扉へ向かう。詳しい作戦は、歩きながらでも聞ける。


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