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11-7 召喚魔法陣2

 ステンドグラスを通した光が入る薄暗い部屋で、大きなテーブルを囲む椅子に座る紫の服を着た20人の者達。その姿は人族もエルフも、また他の種族も含まれている。

 長いテーブルの端には、他よりも豪華な椅子。そしてその後ろには、剣と杖、そして本をモチーフとした紋章が描かれた大きなステンドグラス。


「今日お集まり頂いたのは、市中に流行る怪しい(まじな)いについての調査結果と、新たに発生した懸念事項について枢機卿団で議論する為である」


 ステンドグラスを通した光が入る薄暗い部屋で、議事進行役の首席枢機卿が集まった者達に告げる。

 この宗教には平時にはそれ以上の役職が無く、この枢機卿団による合議で物事は決められる。よってこの会議は、最高議決機関であり執行機関だ。


「まず、先週報告のあった呪いは、各地の教区に確認した所、大陸全土の都市に流布されている事が分かった。流布され始めた時期は、ほぼ同時期。流布していたのはどれも若い男で、旅人としてその都市にやって来た者だったという」


 そこで1人が挙手し、発言する。


「大陸全土で同時に拡がっているとは、大きな組織が出来上がってのでは?」


 それに対しては、首席枢機卿でなく調査を担当した部門の長である枢機卿が返答する。


「その可能性はある。それ程広範囲に拡がる組織が、これまで認知されてこなかったとは考えづらい。これについては、調査を続行中だ」


 そしてそれ以上の質問が出ないのを確認して、首席枢機卿が説明を続ける。


「懸念事項というのは、魔物の活動が活性化している件だ。現在は新種のスライムが目撃されているのみだが、新種の出現は魔王出現時以来の出来事だ」

「それは……また魔王が再来する予兆か?」

「否定は出来ん。そうなれば……前例により、総主教を選び緊急体制に移らねばならん」


 魔王に立ち向かうべく、通常置かない統率者として総主教を選び、国やギルドなど各組織との交渉に当たった。国が勇者を召喚すると、それを助ける為に神聖魔法の才能がある若手を同行させたりした。

総主教を選んだからとて戦力が増す訳では無いが、無駄なく戦力を振り向ける為の意思決定を行う体制が出来上がる。


「魔王復活の確認は、冒険者ギルドが調査隊を募り、間も無く出発予定だ。前回と同じであれば、大魔泉を確認して魔王がやって来た痕跡があるか、情報が得られるだろう」


―――


 無事に身体を召喚出来た事で、1歩前進。

 召喚されたこの身体は、岩山に開けた洞窟へ。そこにはベッドも設置してあり、秘密基地という感じになってる。使わない時は隠せるように、掘った時の岩で閉じられる。とりあえずこれで、次の作業に移ろう。


 元の世界に戻り、実験の成功を報告。それを聞いて、実験台になりたがるのが数名。マリとアリサ、そしてハコネ。実験台になりたいと言うより、新しい世界を早く見たいという好奇心か。


「召喚で来た人を戻す方法は?」

「元の世界に呼び出すなら、女神の力を使うのが確実だけど……、割に合う?」

「それは、信仰力の無駄使いじゃな」


 そもそも異世界5号に召喚された後、元の世界に再召喚出来るのか、その辺は分からない。それを調べた所で使う場面は今後無いだろうから、そんなのを試すのは後回し。


「次の段階は、多連召喚試験。2人以上を同時に召喚出来るかの試験だ。2度と戻って来れないとしたら、それでもマリとアリサは協力してくれる?」

「2度と戻る必要が無いではないか。追々、希望者は全員行くのだ」

「スロにも話をしておいた方が良いね。なぜ置いて行ったって、後で文句を言われそう」


 スロの事、母であるマリが気にせず、アリサが気にしてる。そんな研究バカなマリは、資料を持って行く方法が欲しいのだとか。実験した僕の身体を見るに、身に付けてる物はそのまま召喚されたから、身に付けるなりその時持ってるなりしてはと提案した。

 あとは、この関連では何も手伝える事が無い。リンとみさきち、そしてアリサとマリに委ねて、他の部分で出来る事をやっておこう。




 僕の身体を召喚してから3日。ついにアリサとマリの召喚を行う日。時は8月3日。また月を跨ぎ、ターン899となっている。もう残された期間は僅かしか無い。


「準備はいい? 僕があっちの世界に行って、それで召喚を始めるから、問題無ければ10分後くらいには召喚が発生する。何かあれば、今のうちだよ?」

「こんなワクワクする事を、これ以上先延ばしになんてしたい訳が無いじゃないか」

「遠足を待つ子供みたいな気分だからね。もうすぐにでも行きたい」

「2人に同じです」


 マリとアリサだけだったのが、色々あってスロも行く事になっている。常識人な部分で覆い隠しては居るけど、スロもマリと同じでこういう事には基本的に目が無い。


「じゃあ、こっちの確認は、よろしく」

「任されたわ」


 みさきちは元の世界に残り、召喚された側がどうなるのかを見届ける。そしてリンは召喚する側として、異世界5号へ先に行っている。

 召喚される人の目印として、3人にはスライムが張り付いている。これが1番シンプルな被召喚者の識別方法として、出来上がった方法だ。




 僕はメッセンジャーとして、両世界を行ったり来たり。異世界5号に来て、元での世界の準備が整った事を、リンに知らせる。


「召喚を行うスライムが3体、問題なし。いつでも発動可能」

「あっちではワクワクで待ってるから、すぐにでも始めよう」

「分かった。サモン!」


 この前と同じ様に、ゴーラが魔法陣を(まと)って輝く。その光が止むと、ゴーラに乗っかかるように3人が召喚されていた。同時召喚も問題無かった様だ。


「おめでとう。成功だよ」

「ここが……異世界? 代わり映えしないな」

「私の身体も元と変わってない。召喚後はこう、パワーアップとか期待してたのに」


 パワーアップという言葉と同時に、胸の辺りに円を描くアリサ。そんな事を気にしてた素振りは無かったけど、実はそうだったのか。

 でも残念ながら、そう言う特別な処理は載せていない。元のままを呼び出すのが、この魔法陣だ。


「早速だけど、その世界の住人に挨拶に行くのはどうだろう?」

「スロと見た目が同じ種族も居るから、ダメでは無いけど…… 挨拶というより、今はだたの旅人として訪れるくらいなら」


 そんな召喚された3人と話した後、召喚する際の確認をしていたリンに話を聞く。


「消費魔力が思ったより多い。これだと、1億人を同時召喚は、難しい」

「何回かに分ける?」

「残された時間を考えると、積み残しが出てしまう」


 どうにかして、ゴーラに魔力を足してやらなくてはならないけど、今でも元の世界の源泉から得られる魔力を使い放題だというのに、それでも不足する。

 それ以上の魔力を手に入れるには、この世界の源泉にも手を付けるしか無いか?


―――


「本当に魔王だったら……」


 大魔泉がある島への船旅は、往路は風向きの都合で7日を要した。そして、ついにその島を視界に捕らえた。


 大魔泉を監視して、いざとなったら戦う人員として50人。それを指揮するのは、歴戦の勇士である。とは言え、もし魔王がそこに居たら、生きて帰る事が出来るだろうか。

 そんな危険な任務なため、無事に帰れたら膨大な報酬が約束されている。それも命あっての物だが。


 そして、船は昔使われていた桟橋に繋がれる。


「船はいつでも出発出来る状態を維持。先遣隊の第1組8名は、俺に続け」


 上陸者は、定期的に魔法による狼煙を上げる。白い煙は、問題なし。黄色の煙は、増援求む。

 そして赤の煙は……、急ぎ帰国し報告せよだ。その場合、俺たちの生還は困難という事だ。


「では、出発!」


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