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11-2 Dive

「何だろう、この感覚……」


 スライムの中にいる。

 壁の中では無い。


 なぜこんな事になっているかと言うと、少し前に遡る。




「異世界のリンって、エーテルの源泉を通って他の世界に行こうとしてたんだよね?」

「私が引き出せる記憶からは、そうなってる。以前居た世界から来るときは、そうやって来てる」


 異世界のリンは、自分だけならそれで異世界に行けると考えていた。ある意味で、世界が終わるルールに対する抜け道。その方法はヒントになる。

 僕がルールを壊す事でこの世界を救おうと思って、その方法として考えたのが『まるごと引っ越し計画』だ。異世界のリンが開けたルールの抜け道を、地球サイズまで押し広げてしまう。そして行き先は、異世界リンがやった様な異世界では無い。それではまた期限が来て、苦しむことになる。

 あのときに見た、多数の世界が稔る木。果実の形をした多数の世界は、その木の枝についていた。その枝はさらに太い幹についていた。そこならば、永遠の存在では無かろうか?

 だから、世界は木に稔る果実というルールを壊し、永続する幹を住処としてしまう。それが目指す方向だ。果実の中から幹への引っ越し。

 そんな考えをリンに披露して、具体的な方法を一緒に考える。


「元々居た世界からは7人のリンで世界を渡ってきて、次は14人のリンで。でも7人居れば渡れたなら、なぜ21人集めようとしたんだろう?」

「最初の異世界渡りでは一か八かの挑戦で、エーテルの源泉に飛び込んだ。しかし、最初の世界を脱出するのに精一杯で、行き先は選べなかった。そして強い流れに流されて、エーテルが多く流れ込むエーテル消費が多い世界、つまり充分に発展した終盤の世界に流れ着いた。前に居た世界は、そんな場所。そして2回目は、流れ込むエーテルがもっと少ない世界を目指して、この世界に。それでもたどり着いたこの世界は、既に寿命を半ば消費してた。だから次は、もっと流れ込むエーテルがわずかでも自分の力で泳いで行けるように、力が欲しかった。そう言う経緯で、21人を目指したという訳」


 合体(?)して力を増すほど、より若い世界に行ける。そのために14人、21人と仲間と合体し、力を増してきた。それがリンのこれまでの作戦。

 リンは他のリンと合体して力を増した。でも、他の方法では?




「じゃあ、ゴーラ、やってみて」


 僕らは箱根に戻り、ゴーラが宇宙から地上に伸ばした触手の前に居る。天高くから地上へ太さ2mくらいの柱が貫いている様に見える、そんなゴーラの触手。

 リンは前から合体可能とわかっているけど、僕がゴーラを合体できるのかわからない。もしもの場合があるから、手の空いた人には来てもらった。失敗に終わったら、次のターンまでの事を託すために、見届けて欲しいから。

 この場に来られたのは、ハコネとオダワラさん、ミシマさん。他にルイたち4人、みさきちシスターズに、魔王。


「お先に」


 そう言って、まずリンがゴーラの触手に触れる。触れた場所からスライムが伸びてきて、そしてリンも前に進んで、自らゴーラに取り込まれる。これと同じ事をすれば良いんだね。


「じゃあ、お願い」


 一歩進み、ゴーラに触れる。夏の太陽に照らされたゴーラは暖かく、温水プールに浸かるような感じだ。

 そしてそのまま、全身でスライム浴。そして、スライムの中で意識を失った。




「えっとこれは、どういう状態?」

「もう体は溶けて無くなって、一体化してる状態だね」


 リンの声が聞こえるけど、姿は見えないし、声も全方向から聞こえるみたいで、どこにいるか分からない。

 いや、声じゃ無いのかもしれない。音では無く、それをなぜかリンが発する言葉だと認識しつつも、リンの声自体がするわけじゃ無い。


「不思議だね。直接合体できるのは、同じ存在の異世界体だったリン同士だけだった。それがゴーラを介したら、こんな風に別の人が一体化できるなんて」

「それがゴーラの特性なのかな。それとも、僕が変なのか」

「君が変って可能性もあるね。そもそも、中身と体が不一致って事で、精神だけ取り出すのが簡単だったとか?」


 気がつくと、スライムの中に浮いている感覚から、空を飛んでる感覚へ変わってる。

 そして目で見えているのと違いそうだけど、いろいろな景色が同時に感じられる。こちらを見ているハコネ達、周囲の風景、そしてなぜか宇宙から見下ろす地球。ゴーラの全身が目の役割を持っているのか。

 他の場所にも意識を向けると、いつか見た江戸の景色だったり、他にも行った事があるような場所がいくつか。そして知らない場所が多数。これが全て、ゴーラの触手が大地に伸びた先か。


「大丈夫なんじゃろうか?」

「リンは出入りできるから、何かあればリンが戻って教えてくれるはずよ」


 また近くに戻り、ハコネの方に注意を向けていたら、ハコネとみさきちが話すのが聞こえる。聞くのは全てが混ざって聞こえるのではなく、注意を向けた所の音が聞こえるみたいだ。注意を向けないと聞こえないというのは、人間とは違う感覚。


「以前、ゴーラは喋れてたけど、僕らは外に声を届けられないのかな?」

「それは私が伝えます」


 リンに問うと、別の誰かから返事があった。これは、ゴーラ?


「外に伝えたいと思って話してもらえば、サクラとリン、それぞれの声を模して伝えます」

「じゃあ、お願いしよう。僕らは大丈夫。ゴーラの中は快適。もう少ししたら、戻れるか試す、って」


 そう言うと、それらしい声でゴーラがハコネ達に伝えた。


「喋った!」

「それは、そうじゃろう。じゃが、ゴーラがサクラの声で喋るのは、なんか違和感が」

「ゴーラの中から姉さんの声がするときと、ほとんど同じですけど……」




 再び体に戻ろうと思ったけど、どうしたら良いのか分からない。


「戻るは、どうすれば?」

「それでは、身体を作ります」


 そういうゴーラの答えが返ってきてすぐ、いきなりスポットライトを浴びたように周囲が明るくなり、そして地に足がつく感覚があった。


「おっ、戻れたのじゃな」

「その服は…… リンの?」


 なぜかリンの服を着て、ハコネ達の前に立っていた。

 続いて戻ってきたリンはと言えば、異世界の手下リンが着ていたどこかの制服みたいな服。制服と相まって、ますます中学生感が。


「この服は何なのだろうね。デザインは悪くないけど」


 こうやってゴーラに入り、そして出る事が出来るのを確認できた。トラブルは、服が入れ替わる事くらい。


「じゃあ、次は我が」


 そう言って、ハコネがゴーラに手を伸ばす。そしてゴーラに取り込まれて…… ただのスライム漬けハコネになってる。

 泳いだり色々した上で、ハコネは戻ってきた。


「なぜサクラ達の様にはならぬのじゃ?」

「なぜだろう?」


 次にオダワラさん、ミシマさんが試したけど、ハコネと同じだった。この方法、僕とリンだけ?

 しかし、そうでも無かった。


「あやつも出来るのじゃな」


 みさきちも問題なく成功。これでほぼ線引きが出来た。この世界で作られた女神には、無理。

 でも僕の身体は…… 中身の問題なのか。


「でもこれで、ゴーラの中にあるエーテルの源泉に行けるのは、限られた人だけになってしまったね」


 リン達と僕、みさきち、長尾とそれら4人の似た者達(・・・・)だけが世界を渡れるなんてのは、異世界リンがやったのと同じ事までしかできない。それ以上、この星の全てを連れて行くには、ゴーラには入れるという関門も拡げないと行けないみたいだ。


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