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10-14 タッチは死すべし、慈悲は無い

 結局1時間位、この大陸を去る頃の話や、他の大陸での出来事なんかを話している。勇者の力を得て、そして不老になり、長い時間を掛けて各地を回ってきたと。世界の半分位は既に支配下にあり、ここで決着が付けば勝利条件は近いという話も。

 ちなみに僕は、聞いてるだけにした。正体も明かさず、秘密兵器の様なポジションだ。


「さて、それでは」


 要塞の部屋で座り込んで話していた長尾が、話も途切れら所で立ち上がる。一緒にジョージB、魔王も。


「1対1では勝負にならんだろう。1対3で良い」

「偉い自信だな。戦いにおいて大陸最強の俺とこいつをまとめて倒せるだと?」

「待て、まだ俺がお前に勝った回数の方が多い。最強は俺だ」


 自称最強のジョージBに対して、突っ込む魔王。僕らが封印されている間の戦いで、対戦成績は魔王2勝のジョージBが1勝らしい。対されたら復活まで時間が掛かる魔王の方が、結果として失う物は大きいけど。

 そして、戦う相手の数には、僕も入っていると言う事か。まあそれは想定内だし、良いのだけど。しかし3人相手にって、魔法まで使う戦闘となると、3倍(つら)いどころじゃ無いはず。威力が何倍あろうとも、別々の事をやって来る3人に意識を向けるのは大変だ。それに、ジョージBと僕については、この世界では実質初対面。手の内も読めないはずだ。

 さっきまでの雑談でも、お互いに手の内を明かす様な話はうまく避けてて、雑談に見えて実は頭脳戦だった部分もある。


「お前らの中で、復活出来ない者は?」

「お前と同じすぐ復活は俺だけだ。この2人はターン制だ」

「それは申し訳ないな。次のターンは、10年先になる予定だからな。参ったと言って引いたら、そこまでにしよう」


 そんな事を言う余裕がある戦いになるの?

 とは言え、勝算が無い訳でもない。次の条件さえ呑んで貰えれば、だけど。


「メインの能力が、扉を介した召喚なんだけど、それを使っても?」

「己の持つあらゆる能力を駆使して、掛かって来るが良い。ただし、俺もそうするからな」


 これで、前衛2人に後衛で砲台役の僕が1人という構図が組める。例のジャングルジム状態な邪魔棒が無いから、今なら魔砲を出せるのだから。


「では、10からカウントダウンして、0で開始だ」


 そして、カウントダウンが始まる。

 10、9、8……

 ジョージBと魔王が横に並び、長尾と対峙する。2人が並ぶ後ろに、僕が付く。逆三角形の陣形。鶴翼の陣だろうか?


 3、2、1

 0!


 ジョージBが前進、魔王が側面に回り込もうと動く間に、僕は扉を召喚。魔砲を準備して撃つ準備をするまで3秒。

 しかしその時間の間に、予想外に事態が起きていた。


「4人に増えた?」


 長尾が4人。僕らも同じ姿のが2人、そしてあと4人別に居るけど、この可能性は忘れていた。

 それに、さっきまで1人だったし、どこから出した?


 3対1から3対4になり、ジョージBに2人、魔王に1人の長尾と相対する。残った1人は、僕の様に後衛に居て全体を見渡し司令官ポジションだ。これは厳しい。

 それでも気を取り直し、ジョージBと戦う1人を撃つ。その1人は避ける事も出来ずに直撃を受け、姿が消える。しかしすぐに、司令官の(そば)にて復活。本拠地に復活じゃないの!?


「俺が居る場所が、我々の本拠地だ」


 それ、無限に倒し続けないと行けないって、勝つ方法が無いんじゃないか。いや、何かあるはず。


「運ぶのが難しい大型兵器を、魔法で召喚か。そのアイデアは、後日生かすとしよう」


 そう言って向かって来た復活1号は、扉の可動範囲制限を見抜き、飛び上がる事で射線に入らない様にする。捕まりかけて、扉を盾に攻撃を躱す。


「盾でもあるのか。1対1でなら、有効な手だ。だが、残念だったな」


 いつの間にか司令官が後ろに回り込んでいて、羽交い締めにされてしまう。


「さて、降参と言うまで、何をしようかな」


 長尾にこの様に捕まるのは、危険だった。なにせ今の僕は、ハコネと同じ見た目。女神ってヤツだ。


「降参させるまでの期間限定で、ノータッチは免除だな」


 ろくでもない事を、後ろに居る司令官が言う。予想外の方向に、ピンチだ。この身体でそう言う危険を感じた事は、1度も無かった。しかし、長尾なら、やりかねない!

 起伏が無くとも、大丈夫。年齢が低くても、大丈夫。そういう危ない性分なのだ。こいつは。

 手をワキワキさせながら迫ってくる。これは中の人の事を言うべきか? 中身は男だぞって。いや、長尾の事だ。可愛ければ男の娘でもOKとか言いかねない。自分で可愛いって言うなって? 見た目はハコネだから、良いじゃない。

 そんなこちらも十分ろくでもない事を考える3秒。そこに救世主はやって来た。


「なんばしよっと~!!」


 扉の中から飛び出したリンが、良い蹴りを食らわせて長尾がぶっ飛ぶ。

 そう言えば、昔長尾が言っていた。趣味が妹バレしたと。妹という立場から見て、そしてちょっとロリ気味の妹として、ロリ志向の兄というのは「矯正しないとならない」ものらしい。


 突然の妹の乱入に、全ての長尾が動きを止める。リンの参入に、妹に手を出せない長尾は、全員困惑。


「そげん事ばしとらんで、話ばまとめんしゃい!」

「お、おう」


 妹に怒られ、言う事を聞く長尾。

 しかしそこに、さらに話をややこしくする者が現れる。


「中々戻ってこんて思うたら、面白か事になっとーね」


 要塞の部屋を入口から覗き込む、もう1人のリン。


「初めまして、リンと言います。そっちのリンさん」




「何もリンがせんでも」


 僕にやろうとしてた事の連帯責任で正座させられている、4人の長尾。4人の正座する長尾の隣で、ジョージBや魔王、そして僕が見守る。その視線の先には、左右に2人のリン。新たに現れた長尾側のリン、ややこしいから長尾リンは、僕らの側のリンと向かい合っている。見た目は同じ、中学生に見える少女。大学生らしいけど。


「私達で決着を付けて、勝者を決めても良いでしょう? そっちも、きっと私が最強なんだろうし」


 そっちも? 長尾は、長尾リンの支配下?


「えっとな、大ハーンというのは俺なのだが、リンには逆らえない」


 言えないが、凄い能力があるらしい。それはこれからのリン対決で見る事になるだろう、と。


「命のやり取りじゃ無く、負けを認めるまで。私はお兄みたいに、ここで復活しないから」

「私もそれで良い」


 長尾リンの提案に乗るリン。

 そして、何が始まるかと思ったら、長尾リンがある物を召喚。

 呼び出されたのは、ガラスの扉らしき物。部屋とベランダとの間にある様なやつ。僕の位置からは部屋の中を見えないけど、僕と同じ事をやってるのであれば、彼女の部屋があるのだろう。そして長尾リンが手を触れると、ガラスが光る。その光るガラスに触れる手の動き、それはタブレット端末を操作する時の様。

 あの端末から、何か恐ろしい攻撃が!? 僕と同じ事を思ったのか、阻止しようとリンが動くけど、僕が立った様にガラス扉を盾にして、リンが近付くのを防ぐ長尾リン。


「1人じゃ無理。でも」


 すると、そのままになっていた僕の扉から、スライムが現れる。枕より大きいくらいのスライム、それが6匹。それらは、一斉に長尾リンに向かう。


「そのまま拘束して」


 命じられたスライム達は、長尾リンに向かう。しかし、


「良い子ね」


 スライム達は方向転換。リンに飛びつくと、リンの顔の部分だけを残して覆ってしまった。

 まさかの裏切り!?

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