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9-27 大魔王、詰む

 戦略ビューを見ても近くに敵はおらず、勝利を確認した。それは良いとして、大問題が起きている。

 ジョージBと戦ったこの部屋、いつの間にか出口が塞がっており、出る事が出来ないのだ。


「なんて修復速度なの」

「これでは壊しても出られぬな」


 この要塞に来て早い時期に気付いた、壁の自動修復。スライムに溶かされてもすぐに元通りだった。壁も支柱も、壊されるとほぼ同時に元通りになる。これでは、壁を壊して外への移動が出来ない。


「扉が出せないのは、何も無い空間が足りないのでしょう」


 壁問題とは別に、部屋に張り巡らされたジャングルジムの様な支柱。これによって、この部屋には何も無い空間が小さい。オダワラさんの推測では、それが扉を出せない理由。

 壁を壊して外に出る事も、扉を通って外に出る事も出来ない。これは困った事態だ。


「これ、僕らを閉じ込めるために作られた、罠?」

「倒され方もあっさりしておったし、そうかも知れぬな」


 以前、これと同じ事があった。箱根の地下にあった空間で、エドさん達を閉じ込めた時だ。僕が仕掛けた作戦と同じ事をされて、まんまと嵌まってしまうとは、情けない。


「いや、あの時の事を考えると、修復出来る条件を奪ってしまえば良いんじゃ無いか」


 箱根の地下では、僕が修復の要否を判断して、戦略ビューから設定していた。僕の管理下にあったから、それが出来たんだろう。

 それならば、この要塞を完全に占領して、僕らの管理下に置く事が出来れば?


「そう言う事か。それなら、外に居るスライムに残る部分も占領させれば良かろう」

「ここからでも、外交は出来るのでは無いですか?」

「やってみるよ」


 そして、まずはリンに繋ごうとする。戦略ビューでリンの印は、この三島辺りにある。そこを選んで、呼び出す。

 待つ事しばし、僕の姿は外交用空間に移動した。


「勝ったんだよね? わざわざ外交で呼び出すって、どうした?」


 現れたリンに、出られなくなってる事情を説明する。そして、この要塞を完全占領したら解決する可能性も。


「ボス倒して、ボス部屋から出られないとか、どっかのゲームのバグみたいな罠があるんだね」


 大昔のゲームにあったという伝説のバグと一緒か。いやこれは、バグで無く作戦だと思うけど 。


「それで、ここの修復を止める件。私がこの要塞を占領したら、私の管理下に置けるはずだよね。だけど、もうその部屋以外、全部占領してるんだよね。でも、管理出来てそうに無いだけど、まだどこか隠し部屋でもあるのかな……」


 リンは戦略ビューで、どこかに隠し部屋が無いかとか、ここの管理が出来ないかと探してる。しかし、それらしい物は見つけられない。


「あ、そうだ!」

「何?」


 考えていたリンが、何かを閃いたらしい。


「もしゲームの仕様なら、耐久度を持つ要塞は、耐久度を削り切らないと占領した事にならない!」


―――


 強制的に戻された自分の部屋から、外へ出る。扉を抜けた先は、帝都の城にある居室。

 その隣にある執務室に行くと、官房長が出迎えた。


「上様、御首尾は?」

「敵は罠に落ちた。次の段階に進めるぞ」


 空中要塞で予定通り(・・・・)倒されて、閉じ込めたのは3人。もう少し多く捕らえられるかと思ったが、まあ良い。


「このやり方で、他の邪魔者も封印できるだろう。要塞の耐久力は、資金を投じる限り尽きる事は無い。奴ら、要塞を盛んに破壊しようとしているが、収支はどうだ?」

「余裕を持って黒字です。そうですな、あと4つ、同じ事を行っても、黒字で居られるでしょう」

「そうか。では他の女神や魔王を捕らえる事も、可能な訳だな。同じ手に引っ掛かる、愚か者が居ればだが」


 この作戦は、奴がエドやフジサワを相手に行った方法が元だ。資金が有る限り耐久力を 維持出来る要塞、マジノ線という遺物があり、それを空中要塞に適用した。小田原城との違いは、線と言うだけあり、複数の要塞を指定出来る。ゲームではユニットを置かずとも戦線の一角を防衛出来る遺物として、便利に使ったものだ。

 その要塞に、扉を通じて遠隔地に移動出来る能力を封じるための、扉を出せない仕掛けを付けた。どうすれば扉を出せないかは、俺が扉を出せる様になり、自分で試す事が出来た。どうもこの扉、1辺2mぐらいの立方体が入るだけの空間に障害物があると、出す事が出来ないらしい。扉よりは1回り大きな空間を必要とする。


「造船所の復旧はどうだ?」

「資材を運ばせておりますが、しばらくの間、造船は捗りませぬ」


 あのスライムども、瀬戸内から駿河湾まで広大な範囲の船を破壊するばかりか、造船所の設備も破壊して行きやがった。おかげで、水運も漁業もダメだ。外洋に出て他の大陸を探すのも必要そうだが、しばらく先になるだろう。


「いや、船である必要も無いな。空中要塞と空中砲台を改良して、大陸間外征用の高速型を造らせるか。内陸の工場は無事だろう? 大型船の造船所は後回しにして、そちらに人を回せ。最優先は、空中砲台の高速化だ」


 空中砲台の高速化が済めば、外大陸探索に向かわせられる。空中砲台による探検が進む間に空中要塞を高速化して、発見した標的に大兵力を送り込む手段にする。

 俺は制覇勝利を諦めない。


―――


 外からはゴーラ、中からはスライム達で、徹底的に空中要塞を破壊しようとしているが、全く手応えが無い。


「連邦の占領地から上がる税収不足で修復を止めるには、こんな程度の破壊ではダメらしい」


 三島に居るみさきちと合流したリンが、一緒に試算してくれた。連邦の国庫を枯渇させる程の破壊を行うには、今の数倍の破壊を30年は続けないといけない。


「あるいは、税収の元を絶つ作戦の方が、効果が見えるのは早いらしい」

「それはどうやるんじゃ?」

「連邦内の経済的基盤への攻撃になる」


 ざっと計算して、連邦の人口が9割減するくらいの破壊。具体的な方法は…… 考えたくないな。


「魔王の所業じゃな」

「魔王じゃ無くて大魔王だけどね」


 そんな悪行を繰り広げても、やはり10年の時間が掛かる。いや、そんな事をやる気は無いけれど。


「つまり、あと6年しかない僕らには、手が無い訳だ」


 6年間、ここで指を咥えて見ている? いや、連絡手段はあるのだから、ここからあれやこれや、指示を飛ばしても良いのだろう。


「いや、それなら、もっと簡単な手があるじゃろう」

「どんな?」

「1ターン後の復活じゃ」


 最後の手段、女神が倒された時に、自拠点で復活する仕組みを使う。それなら、来年の正月に自分の拠点に復活する。そう言えばそんな事も、何度か有ったよね。


「倒される?」

「いいえ、他にもありますよ。何も倒された時だけではありません。1ターンを捧げて行う、大きな奇跡」


 女神の仕事については僕らより詳しいオダワラさん。そう言えばそうだった。

 その奇跡も1回やったっけ。それが原因で、僕の身体、その後のジョージBは勇者になった。倒されても拠点に即時復活出来る便利な身体になってて、今の問題の元凶でもある。


「そうじゃったな。なら、今使うべき奇跡を考えるとするか」


 どんな奇跡が存在するか、全く知らない僕と、大して知らないハコネ。ハコネと違って引き籠もりじゃなかったオダワラさんは、他の女神がやった事を見聞きしている。

 異世界からの召喚は、特に役立たない。異世界への返送もあるそうだけど、僕は異世界人では無かった様なので置いておく。


「世界の終わりを延期するなんてのは、どうじゃろうか?」

「そんな願いをした方は居ないでしょう。ですが、出来るかルア様に問いかけるだけであれば、試しましょう」


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