表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
151/215

9-25 要塞中央へ

 網を破壊して、下に降りる。照明が点灯しており、何をするための部屋かすぐに分かった。ここは風呂場の様だ。4人程度が同時には入れそうな湯船と、シャワーが並んでいる。

 戦時の日中にあまり人が来そうに無い、ちょうど良い場所に出た物だ。


「ニートホイホイ!」


 要塞での戦いに熱い気持ちを持ってるリンが、1番乗りの座を譲ってくれた理由は、これ。

 地上にはハコネが出した扉があり、そしてここに僕が扉を出す。その結果、いくらでも仲間を呼んで来る事が可能なのだ!


「朕の出番という訳だな」


 真っ先にリンが来ないのは、まだ地上に戻ってないのかも知れない。僕の行動が少し早かったか。

 この4人も箱根の要塞調査を終えて、三島方面に来ていた。最初がルイ達4人ってのは、ここ最近の役割的には順当。倒されようといくらでも復活出来る能力(?)で活躍するため、偵察任務でどんどん敵支配地域に侵入して行く。その危険を顧みない行動で、どんどんレベルアップしているのだ。

 さらに、この様な敵拠点への侵入では、とある副次的効果もあって、彼らは得をする。それは何かというと、彼らの見た目がジョージBと同じである事。元の僕やこの4人、魔王とジョージBは全員同じ容姿だ。その姿を見て、敵が最初の行動で逡巡する。より混乱を招かるために、ジョージBが箱根で着ていた軍服に似せた服を装備させている。言動を見れば丸わかりだけど、遭遇時の一瞬でそれを見破れず、敵兵は撃てない。


「では、マッピングに行ってくる」


 そう言って、ガイウスとルイはそのまま、オットーとヨリトモは顔を隠すマスクを着用する。先頭に4人が風呂場を出て行くと、次はリンが来た。それに続いて、スライムが多数。


「要塞侵入成功だね。おめでとう。侵入が風呂場からってのが、ちょっと締まらないけど」

「換気ダクトで出口に1番近い場所だったからね。でもこれが厨房だったら、誰か居て侵入に適さなかっただろうし、ちょうど良いでしょ」


 さて、先に行った4人はどうなったか、戦略ビューを介して確認する。彼らが通った場所がマッピングされており、2人ずつ2手に分かれて行動している。どちらかがガイウス班、もう片方がルイ班だろう。

 なぜそうなるかと言うと、ガイウスとルイは変装をして居ないから。誰かに遭遇したらジョージBと思わせて油断を誘うには、同じ顔が2人以上居ては不審な事この上ない。だから、未変装でジョージBに見えるガイウスは、変装しているオットーまたはヨリトモと一緒に居るはずだ。4人が変装無しでそれぞれ単独行動という手もあるけど、周囲を確認しながらの偵察は単独行動では少しきつい。


「それで、スライムはどれだけ出るのさ」


 話してる間も、スライムは続々と出てくる。風呂場の床を埋め尽くした後は、後から来る者に押し出される様に、外へ出て行ってる。


「この要塞を乗っ取れるくらい!」


 リンの希望は、この要塞をまるごと戴いてしまう事。東方でのリンは、僕らの勢力に間借りしている状態。この要塞を新しい根拠地として手に入れたいそうだ。だからそれが出来るだけの兵力(スライム)を、惜しみなく投入している。

 そして都合が良い事に、この要塞の壁はヘイヤスタで出来ている様子。メタルでないスライムも、その辺の壁をムシャムシャすれば、メタルなスライムに早変わり。もうこのスライム軍団は誰にも負けないのでは無かろうか。敵が多かろうと、物量で押し切れるレベル。もはや先に偵察に行った4人、無駄足? ちなみにスライムが壁を食べたと言っても、壁は元通り。食べられる以上の速度で修復が進んで居るみたいだ。だから、壁に穴を開けてショートカットは出来そうに無い。


 そんな延々と続くスライムの侵攻に、要塞は陥落寸前。マッピングの結果を待つまでも無く、スライムが戦略ビュー上の地図を埋め尽くして、敵の排除が進んでる。


「抵抗が無くなった様じゃが、もう制圧したのか?」

「ちょっとあのスライム魔王達は、強過ぎはしませんか? 行く末が心配になってきたのですが」


 扉を通って続々と来て、要塞のどこかへ向かっていくスライム達。その行列に混じって、外でする事が無くなったハコネとオダワラさんも合流。彼女達はリンとの繋がりが薄いから、スライムが主力の自軍にちょっと不安を覚えるのかも知れない。僕にとっては、直接会うのはこの世界では初めてながら、元から知っていた人だったため、そう言う警戒感は無い。自分自身から別れたジョージBの方が信用出来ないってのも、不思議なもんだ。


「ミサキは連れて来ないで良いのじゃろうか?」

「ここを攻め落としてからで、いいってさ」


 ハコネの疑問に答える。みさきちは敵地に乗り込む様な危険な事はしたくないのだと。八王子でのあれやこれやで神族になったものの、もし倒されてしまったら来年まで留守という事に不安を感じるのだと。そういうのに慣れている僕がおかしいそうだ。まあ、そうかも知れない。


「では役者も揃ったし、行くとしようか」


 早く行きたいのを堪えてくれていたリンが、僕らに出発を促す。もう来る予定の人も居ないし、進むとしよう。


 スライムによるマッピングで、この球状の要塞の内部構造はかなり分かった。各階に円形の通路が何重かあって、それらを放射状の通路が繋いでいる。通路の真下や真上は同じく円状や放射状通路で、上下は階段とエレベーターで繋がってる事が分かった。スライムの分布を見ると、中央の部分が侵入を拒む様に、空白地帯。そこは重要区画として、スライムの侵入に抵抗しているみたいだ。つまり、僕らが行くべき場所はそこだ。


「以前攻め入った空中砲台は、通路が塞がるなどしたじゃろう? なぜここは、そう言う仕掛けが無いのじゃろうな」

「そういえば、邪魔する物が無いね」


 スライムが壁を壊すでも無く、中央の区画以外は容易に侵入出来ている。空中砲台は奪取後の解析で、内部を多数の区画に分割して、必要に応じて区画間を隔壁で閉じられる仕様と分かった。しかし、この要塞にはその様な物が無い。


「中央以外は攻め込まれてもいいや、って事かな」

「他の部分、スカスカな様だし」


 リンが進ませたスライムからの情報でも、戦闘は砲台区画でしか起きておらず、中央以外はそれらしい防衛体制が無かった事が分かっている。一見要塞の様で、実は違う目的で作られた構造物だろうか?

 すると、ラジオのノイズの様な音に続いて、どこかにあるスピーカーから声が聞こえる。


 聞いたメッセージに対して、僕らの答えは1つだ。行くしか無い。この戦いは、話し合いでしか終わらないのだから。


―――


 あまりに露骨な無人要塞では意図を悟られる恐れがあるため、砲台だけに人員を配置していたが、排除されてしまった様だ。それら将兵が存命である事を祈る。

 役者は揃い、準備は整いつつある。最後の仕掛けのために、放送設備を使い、要塞内に呼びかける。


『要塞に侵入し者達よ。武田丈二がお相手する。中央の間にて、相まみえよう』


 とてもシンプルなメッセージ。しかし、これ以上の物は無かろう。

 無限に復活出来る俺を倒しても、何も変わらない。それで戦争が終わらない事は、双方分かっているのだ。そうなれば、話し合いを求めて来るはず。

 しかし、俺は終わらせる方法を見つけた。奴らの復活、いや、顕現を止める方法。それを以て、この戦いを終わらせよう。

 決着の場となるこの中央区画。入口を開き、奴らを待つ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ