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9-5 それぞれが願う事 オダワラ

「凛と定期連絡もしたいから、これからは毎晩外交で繋ぎましょう」


 みさきちとリンが外交でやり取り出来ないのは、両勢力がまだ接触してないから。タブレット経由は、正式な接触手段に含まれないらしい。そこで正式な接触の為に、リン配下のスライムを八王子に向かわせる事になった。明日の夜までには接触出来る見込み。その接触が成れば、明日は3者で外交が行える。


 外交を終えて、みさきちと状況の整理。

 僕らはそれぞれ武田丈二、今川美咲、長尾凛の記憶をコピーしてこの世界に作り出された、それぞれの人物と同じ記憶と思考傾向を持つ存在。僕らや女神達は、心と身体が一体で無い。だから、その繋がりを切り離して、他の身体に入る事も可能だ。では他の転生者達は? 今の所は、僕らと同じかも知れないし、違うかも知れない。もしかするとこの世界の生物は、全て僕らの様な存在って可能性もある。


「なんだか、ゲームっぽいわね」


 リンの仮説では、この世界はHistoria Civilizationというゲームのマップや設定を真似て作られている。ただし、ゲームに足りない情報は補われている様だ。ゲームに由来する要素としては、まずはプレイヤーと戦うAI国家の代表が僕ら。都市の管理を受け持つAIが、今の女神。だから都市の名前を持った女神なんてのになってる。酋長とか国王とか魔王ってのは、AIの難易度設定レベル名。つまり僕は、最も弱いAIに相当するそうだ。ちょっとガッカリ。


「私達の常識では、何かを記憶するのも何かを考えるのも脳がやってる。だから理論上は、脳を入れ替えたら人格が入れ替わる。そんなの実際には、SFの世界だけどね。でもここは、ファンタジーの世界だから、人格と脳が不可分って言う私達の常識も、捨てないといけないのね」


 人格や記憶は脳で無く魂が持つ、というこの世界の仕組みは、人としての記憶を持ってスライムになる事も可能にする。実態を持たない魂が情報と思考を受け持つなら、身体はスライムだろうと竹だろうと構わないのだ。


「あと、凛のお兄さん、ケモミミ好きってのだけど、私が見た限りでは、魔王軍はケモミミでなくケモノ系よね。ケモミミも見かけた?」

「魔王軍と戦ったのは1回だけで、その時は見てないけど、だからって居ないとは言い切れないね。長尾……長尾孝が魔王軍に居るなら、なぜそんな事になってるのか、話をしたい」


 ケモミミっ子を与えるから仲間になれ、って言われたら悩む姿が思い浮かぶけど、むしろケモミミ保護の為なら、自ら魔王になって居てもおかしくない。その位のケモミミ好きだ。

 足利家や連邦には、東の魔王と戦ってきた人は多く居る。みさきちには、それらの人達から情報収集をして貰う。ケモミミやケモミミ好きの男を見ませんでしたか、って。




「創造主じゃと?」

「創造主は、この世界に顕現はされず、その指示だけが私達に届く見えない存在。声としてでなく、意思が届く。姿を見た事は無いし、どんな存在なのかも分からない」


 ハコネとオダワラさんの創造主像も、リンの仮説とよく一致する。リンも知り合いの女神達に聞いて、あの仮説に至ったそうだから、僕が少し話を聞いた程度で覆る様な穴は無い。


「我らの創造主は、オダワラの地におってな。オダワラの街が出来た後に、ハコネの街が出来て、我が生まれた」

「でも、オダワラの地は創造主が自ら治めたの。私が作られたのは、オダワラの街が創造主の手を離れる際ね。だから、街としてはオダワラが先に出来たけど、私が妹なわけ」


 同じ創造主に生み出されたから、姉妹。それなら他にも多数の姉妹が居そうだけど、同じ創造主に創られてもタイプが色々あるそうで、ハコネとオダワラさんは同型だから姉妹なんだとか。


 2人の創造主さんは、小田原を起点に西は三島と御殿場、東は藤沢、北は厚木まで領土拡大に勤しんだものの、静岡の勢力と江戸の勢力に攻め込まれて、箱根と小田原のみまで追い詰められたそうだ。

 そんな時に起きたのが、最初の魔王登場。江戸に登場した魔王が江戸の勢力に取って代わると、ついには小田原も魔王の手に落ち、箱根の住人は西へ逃げて無人と化した。その魔王ってのが、天上で会った僕と似たあいつの事だろうか。


「それとケモミミとか言う、顔や身体は人族と同じで、耳のみが異なる人種は、魔王の時代より前、江戸の勢力に沢山居ました。オダワラの街に何度も攻めて来て、私や街の人達で撃退しました」

「それが魔王の時代になると、魔王の配下は全身がケモノな連中じゃった。そいつらが、とても強くてな。ついに我らも敗れた訳じゃ。そいつらは街を破壊するばかりで、箱根も小田原も無人になってしもうた」

「話が逸れたけど、その魔王の侵攻で、ケモミミ達は居なかったわ。どこに行ってしまったのでしょうね」


 ケモミミの目撃証言も有ったか。でもケモミミが魔王配下のケモノに置き換わったのなら、その過程を魔王は知ってるはずだ。もしかしたら、長尾と魔王の間にも、敵としては味方としてかで、接点があったかも知れない。


 それならばと、東の魔王に外交を呼びかける。戦略ビュー上に魔王は……あるある。だったら話は簡単と、外交を呼びかけたけど、応答無し。しつこく何度も呼んだけど、反応は無かった。出られない理由があるのか、無視を決め込んだのか。

 西の魔王ことリンとはやり取り出来るのだから、魔王とは交渉が出来ないという仕組みでは無いと思うんだけど。


「外交でダメなら、直接会いに行くしか無いのかな」

「ならば、こんな作戦はどうじゃ?」


 急遽アリサやマリ、女神達も呼び出して、作戦会議。僕とハコネでゴーラに乗り、魔王の本拠地に乗り込むという、とてもシンプルな作戦を立案。しかしその作戦には、オダワラさんから待ったが掛かった。ハコネの行く所、どこでも一緒に連れて行けと。オダワラさん……それは作戦上の都合じゃ無くて、ただの願望では? アタックチームが3人になり、戦力が増えるのは良いのだけど。

 でも残念ながら、ゴーラに3人は乗れない。そこで、ハコネとオダワラさんがゴーラに乗り、魔王の本拠地に向かうという作戦に修正した。魔王の本拠地に着いたら、扉を経由して僕も参加する。もし僕らが破れて、次のターンまで不在になってしまったら、不在の間の事はアタミさんに託す事も決めた。


 作戦会議の結果をみさきちとリンに報告すると、単純すぎると呆れられたものの、明確な反対は無かった。死なない身体は、送り出す人達の心配事を減らしてくれるのだ。




 作戦会議翌日の日没後、ハコネ達は移動を開始。箱根侵攻の際と逆ルートで、海上を東へ向かう。そして、江戸近くの目立たない場所を見つけて、そこにハコネの扉を召喚して、初日の作戦は終了になる。

 そのミッションは無事に成功して、ゴーラを置いてハコネとオダワラさんが戻って来た。


「海の上に島? どこだろう?」


 ハコネの扉を出ると、変な島に出た。高い人工物の残骸が2つ、海に並んでいる。戦略ビューで見ると、羽田空港があるべき場所の南。僕の部屋に戻って地図を確認すると、正体が分かった。それは、東京湾アクアラインの、川崎沖の換気塔。この世界では維持管理されず、遺跡の様になってしまっていた。その遺跡にひっそりと、ゴーラを隠してある。ここは根拠地としては良さそうだ。


 再度地図を見て、明日の作戦を確認する。エドさんに以前聞いた魔王の根拠地があった場所は、東京の中心、千代田区の丸の内。その地下に拠点となるダンジョンがあったそうだ。今回も同じ場所に根拠地があると予想して、探索に向かう。当たりだったら、僕や4人組も召喚して、ダンジョン攻略だ。


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