表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
128/215

9-2 それぞれが願う事 リン

「さて、外交を試そう ……ん?」


 どこかでベルが鳴る音がする。この屋敷にはまだ生きてる電話があるんだろうか。そんな物を見た覚えは無いけれど。屋敷を管理する人にはそのまま残って貰ったので、電話を取って知らせてくれるだろう。

 それはそうと、今は試したい事があるから、ハコネ達が不在の間にやってみよう。


 使い慣れた戦略ビューには、いくつかの変化があった。

 最初に見えている地図は箱根付近で、青い点がいくつか見える。これは僕自身やハコネ、そしてオダワラさん達を示す。少し離れて、ルイ達4人の要塞探検隊も居る事が分かる。ここまでが自勢力だろう。

 箱根の住民は緑で示されているけど、何故青じゃ無いのか、そこは良く分からない。友好的な他勢力だろうか?

 目の前の空中にある地図に手をかざし、右から左にスワイプする動作をすると、地図は小田原の方にスクロールし、黄色い点が多数。敵を示す赤でないのは、停戦中は敵では無いって意味だろうか。他の地域を見に行っても、黄色だ。

 スマホ操作のピンチ(・・・)をすると、地図が広範囲になり勢力図になる。地図は色分けされており、箱根エリアは青で他の地域は黄色。あちこちに紋章が表示されていて、箱根のは山2つの印。これが勢力の拠点って事なんだろう。この紋章はどこで変えられるんだろうか?

 さて、やりたかった事は、外交。試すなら相手は決まってる。八王子にある、丸に横線の家紋を触ると、家紋の左右にアイコンが現れる。右には剣が交差するアイコン、左には吹き出しのアイコン。ここで剣のアイコンを選ぶと悪い事が起きそうなので、吹き出しを選ぼう。


 選んだ…… 何も起きない。

 少し待って何も応答が無いので、また選ぶ…… でも、反応無し。

 もう1回。無反応。

 だったら剣の方を選ぼうか?

 すると、会議室らしき部屋に転移させられた。


「すぐに出られる訳無いでしょう。全くもう。 呼び出す度にベルが鳴るから、何度も鳴るとうるさいのよ」


 会議室のテーブルを挟んだ向かい側には、みさきちがいる。これが外交の機能らしい。


「初めてで知らないだろうから、教えるわね。1回要望したら、そのままで良いの。相手が無視と決めなければ、その間は要望がある事を示す印が出てるから」

「そうか、分かった。それで特に用は無いんだけど、試してみようと思って。ありがとう。それじゃあ」

「ちょっと待って。折角だから、友好条約とか結ぶのはどう?」


 ここでの友好条約と言うのは、お互いの通行の自由と相互不可侵を約束する条約だそうだ。同盟では無いので、誰かに攻撃されても、共同して反撃はしない。

 距離も離れているので、結んで利益も不利益も無さそうだけど、悪い事で無いのでこれも練習と思って結ぶ事にする。システム上の条約締結権限は代表者が持っていて、批准とかはそれぞれの国内ルールとして必要なら定めるそうだけど、うちは一任されてる。


「私達はチャットがあるから、外交で連絡ってのは要らないけど、他の国とはちょっとした連絡でも使うから、慣れないとね」


 他もいくつかコツを教えて貰って、散会。双方が終了に同意したら、元居た屋敷に戻れた。


「「うわっ!」」


 元の部屋に戻ると、なぜかハコネのひざの上。驚くハコネと僕の声が重なる。


「扉も出さずに、我の上に現れたら、びっくりするじゃろう!」

「外交中だったのね。外交後は外交前に居た場所に戻るから、こういう事故もあるわ。とりあえず、姉さんから降りてね」


 オダワラさんは、僕の行き先を把握してたみたいだ。大領主のサポートをしていたんだから、それも当然か。


「外交じゃったか。外交しておる間は、どこぞへ消えるのじゃな」

「消えてた? そうなんだ……」


 オダワラさんにも聞きながら、今の出来事を纏める。この部屋でみさきちに外交交渉を申し込んだ僕は、みさきちが交渉を受け入れると、外交用の空間に転移させられた。こちらの世界から見れば、僕は消えていた。

 外交交渉中も、外の世界での時間は流れており、ハコネとオダワラさんが僕を探しにこの部屋にやって来て、僕が不在なので戻るのを待っていた。そのハコネが待ってた場所が、僕が座っていた椅子だったと。

 この世界の根本的な仕組みは、まだまだ知らない事が多い。僕やハコネの自分の空間に入るってのも、考え方によってはこの世界から消えてるんだけど、それと同じ仕組みなんだろうか。


「それで、相手は誰だったのじゃ?」

「みさきち。練習台になって貰った」

「フ族の姫でしたか」


 みさきちの事は、熱海と三島でフ族と戦った話に絡んで、以前オダワラさんにも説明してあった。今の立場についてはまだ説明してなかったので、簡単に説明しておく。

 外交が出来る相手は、過去に何らかの接触があった勢力に限られるそうだ。今、外交関係を持てる勢力は、戦略ビューで紋章が表示される。近くでは小田原に足柄家、秦野、相模原の両勢力。江戸にあるのは、魔王のだろう。そしてずっと西、名古屋の辺りに、武田菱の紋章。これは武田家と言う事で、ジョージBだ。

 図柄はそれぞれ異なり、小田原は城壁をバックに花らしき意匠、秦野は記号の様な意匠になっている。

 それらを見ていて、気付いた。戦略ビューの地図外に、太鼓で見る図柄のマークが出てる。これがもしかして、外交の要望だろうか? そう言えば、少し前にベルが鳴ったけど、あれが知らせのかも。そして太鼓の印は、外交のマークなのか、どっかの家紋なのか。


「呼ばれてるみたいだから、また行ってくるね」

「誰からじゃ?」

「太鼓」


 オダワラさんによると、外交の場では危害を加える事は出来ないそうだ。危害を加えようとしたら、交渉の場から強制的に戻されてしまう。敵味方でも安心。そんな訳で、相手が誰か知らないけど、行ってくる。

 呼び出しの紋章を触ると、○と×の印が出たので、応答を意味するらしい○を選ぶ。

 場所はまた急に切り替わり、立派な応接間。そこに立っているのは、中学生くらいに見える女の子。


「初めまして、サクラさん」


 直接会った事は無い。でも、声は知っており、おかげで相手が誰なのか予想は付く。でも一応確認しよう。


「どちら様ですか?」

「リンと申します。スライムの主で、西の魔王と言ったら良いでしょうか」


 予想通りだった。そして、声がゴーラと同じ。ゴーラはこの西の魔王の声を真似て発声してるんだろう。

 魔王を名乗るけど、見た目は普通の女の子。ただし服装は黒白のドレスでフリルが沢山付いた、所謂ゴスロリってやつ。でもそんな見た目に騙されてはいけない。空中砲台を持った武田家さえ退ける、西の魔王。

 そして、彼女の知識を分け与えられたスライムがパソコンを操作出来たという事は、どこかの異世界から来た者である可能性が高い。スライムを光通信装置にしたりと、ファンタジーと科学の融合技を使っている。もし戦う事になれば、ジョージBよりも難敵かも知れない。


「スライム経由で僕の事は知ってるんですよね」

「もちろんです。だから話がしたくて、お呼びしました。早速ですが、あの子を貰えないでしょうか?」


 その件を出されるだろうとは思っていた。彼女からすれば、自分の手下が何故か寝返って、大きな戦力となった。当然手元に置きたいだろう。


「君の所の元スライム、ゴーラは、僕の仲間ハコネを気に入って、主と決めたんだ。本人を直接説得して戻る様に言うのは構わないけど、僕は引き離す事は出来ない」

「いいえ、違います。欲しいのは、スライムではありません。スライムと融合したロボットです。私もロボットに乗りたいです!」

「えっ、そっちなの!?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ