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9-1 それぞれが願う事 美咲

 女神様に呼び出されて始まった、私の異世界生活。

 5つの願いを叶えるのと引き換えに、街を繁栄させて欲しいという女神様のお願い。嫌なら帰して貰えるそうだけど、味見OKって事で、どんな世界なのか見てからでも良いという。5つ目の願い事で戻れるのなら、4つで色々やった後でも良いかな。


 しかし、特に秀でた技能も無い私には荷が重い。そこで願い事を使い繁栄に役立つ物を作り出そうかと思ったけど、女神様に止められた。願い事はこの世界に呼び出してしまった迷惑料だから、私自身の為に使って欲しいと。

 だったら、私自身の為にもなり、この街を発展させる力にもなりそうな願い事をと考えた。街興しになる様な産業、人が訪れたくなる様な観光名所を作り出せそうな力…… 私に無理なら、出来る人を連れて来たらどうだろう? ってそれ、女神様とやってる事が同じだ。堂々巡りになる。


 発展させるアイデアは後で考えるとして、何か良いアイデアがあったら、それを実現出来る?

 街興し記事で、一番大変なのは昔から居る人達の理解を得る事だと書いてあった。よそ者がやって来て「発展させるアイデアがあるから言う事を聞け」なんて言われたら、頑固爺じゃ無くても首を縦に振らない。

 だったら、その部分を解決する事から始めたらどうだろう。アイデアがあったら、実施出来るだけの権力。そこに私自身の為にもなる要素を組み合わせる。アイデアは、情報収集してから見付けよう。


「願い事が思いつきました。じょうお…… いや、お姫様にして下さい」

「おひめさま?」


 女王様よりは、姫様と呼ばれてみたい。

 なぜ権力を得たいか、ちゃんと説明したら理解して貰えた。この地域では封建国家が多いそうだから、どこか強い国の姫様になれたら良い。




 ここは女神様の神殿。私は神殿の人達に世話されつつ、運命の時を待つ。周りの人は言葉も通じるし、見た目も日本人に似た風貌。異世界感あるのは、女神様だけ。

 願い事の結果、私の身体は6歳になった。元のハタチじゃ、姫様だとしたら行き遅れだそうで。そこで年齢を下げて、名家の養女として育てられるというシナリオになった。そしてそのシナリオに乗せる為、女神様からのお告げで、名家の王が呼び出されるはずだ。

 名家の王に紹介される私の立場は、異世界から召喚された、繁栄を呼び込む少女。って、そのまんまだ。でも異世界から誰かが呼ばれるというのはとても貴重で、それだけで有力者が見に来る程の事。そこにお告げで、養女にしたら一族繁栄間違いなし、なんてのが付く訳だ。幸運を呼び込む壺みたいに胡散臭いけど、女神様が言うからには嘘じゃ無いというのが、この世界の常識。


 そしてやって来た、王様…… じゃないな。何だか若い。10代前半?

 黒髪の王子(?)が私に問いかける。


「あなたが異世界の少女ですか?」


 王子様の名は、足利義高。足利って、ここは異世界じゃ無くて昔の日本? という疑問は、昔の日本に無いはずの物が多数あるから、却下。欧風顔の女神様とか、魔法とか。

 魔法はこの世界に存在する。そもそも私が6歳に戻ったなんて、魔法としか説明しようが無いけど。そして魔法は、女神様だけじゃ無く人間も使えるらしい。「魔法を使える様になりたい」って願い事にしようとしたら、女神様は急ぐ必要は無いと言う。6歳からやり直すから、覚える機会がある。成長しても使えなかったら、その時に願い事にした方が良いと。

 話は王子様に戻り、王様、いや公方様はとても忙しく、居る場所も遠いので、近い場所に居た息子の義高さんが来たんだって。まずは義高さんの家で生活して、義高さんが公方様に会いに行く時に同伴する事になった。


「困った事があったら、行った先の女神に相談なさい。私の名を出せば、私にも連絡が取れるはずです。それから残りの願い事を使いたい時は、女神の近く居なくてはなりません。助言したいので出来れば私の近くで使って欲しいですが、どうしてもの場合は他の女神の近くでも大丈夫です」

「ありがとうございます。では行ってきます。シモダ様」


―――


 長い話に眠りかけたけど、みさきちの話はこの世界での最初の第1歩から、この世界で兄となった義高さんが後継者争いを勝ち抜く話、東国を攻め取る総司令官になるまで、少女の成長物語として、どんどん面白くなって行った。結局1晩聞き続けてしまったっけ。

 あまりに面白いので、それを僕がハコネやルイ達に聞かせたら、大して面白い話にならなかった。みさきちと僕では話術のスキルが違う事を思い知らされた。


「みさきちに頼まれたんだ。大変世話になったから、あと1人選べるなら、シモダ様をお願いって」


 湯本にある元男爵邸の会議室。そこに僕とハコネ、オダワラ、アタミ、ミシマ、ゴテンバの顔なじみ女神、そしてシモダさん。シモダさんの見た目は小柄な銀髪少女で、場違いな所に呼ばれてしまったかの様に、少し緊張した感じに見える。

 ちなみにルイ達4人は、仙石原の要塞を探検に行ってる。そっちも楽しそうだけど、僕にはこっちでやらないと行けない事が山積みだ。 


「シモダの地を発展させてれただけでも、ミサキさんは充分恩返しをしてくれました。お世話になったのは私です。その上、私を救い出す事までしてくれて、お礼を言いに行かなくてはいけません」


 今の時点でシモダさんにして貰いたい事は無いから、みさきちの所に行ってくるのは構わない。戻って来たら、手助けをお願いするだろうけどね。


「それで、これからの方針だけど、みんな特別な力は無くなってる状態?」

「オダワラの地を戦略ビューで見る事も出来ません。魔法を使うなど、個人的な力は無くなってないですけど」

「この地を取り戻して、我は力を取り戻せたようじゃ。なぜかサクラが領主なんじゃが」


 レベルが下がってるそうだけど、それは信仰で押し上げられてた分らしい。今は女神5人とも、僕やハコネよりレベルが低い。ちょっとハコネのドヤがうざい。


「ミシマ、アタミ、オダワラの地は、ここへ来る時に車窓から見えました。立派に発展して、私達が居た頃よりもうまく運営されてるのが、ちょっと悔しいわね」

「私も見に帰って良いかしら?」


 アタミさんは元々政治に介入してないけど、支えてる積もりはあったらしい。その点ゴテンバさんは、政治の一部に入り込んでるので、自分抜きでどうなってるか、心配なんだろう。


「じゃあ様子を見に行くのが楽になる様に、飛行魔法の練習から始めましょうか」


 飛行魔法の教官は、ハコネに任せた。ハコネが教え役をやりたいと志願したから。他の女神に教えられる立場とか、そういうのに快感を覚えるそうだ。どれだけ他の女神に対するコンプレックスを抱えてたのだろう、この駄女神さんは。

 思いの強さが学習能力に影響したのか、ゴテンバさんはすぐに習得して、早速御殿場に偵察に行った。続いてシモダさんが習得。みさきちの所に行くのは、途中の小田原領で問題になりかねないので、ゴテンバさんの情報収集後にして貰う事にした。アタミさんとミシマさんも、2人に遅れて飛べる様になった。オダワラさんは…… 練習よりもハコネと話すのが優先みたいで、まともに練習してない。自分の街よりハコネ。いや、ハコネに小田原を譲ろうとしたくらいだし、大して愛着無いんだろうか。オダワラさんも駄女神化してしまいそうで心配だ。


 ハコネに飛行魔法の件を任せてる間、僕は試したい事があった。

 ハコネが言ってた様に、なぜか僕が領主になってる。箱根の領主が僕、ハコネはその守護女神というポジション。

 そうなると、使えるはずなんだ。外交機能が。果たしてどこまで出来るんだろうか?


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