表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
123/215

8-17 奪還作戦 酔いどれスライム

「機関部がやられました!」

「それは分かっている。だから落ちたんだろう? それで、スライムがどうしたって?」

「侵入したスライムが、積載エーテルを飲み込み、そして巨大化。機関部を破壊し、さらに船体を破壊中です」


 スライムはどこから入った? 4人組が連れて来た? それとも飛行タイプとか居るのか?

 それはともかく、僕らが挟まれている空間が、先程までより狭まってる。


「狭くなってるんだけど!」

「まずいな。船体の破壊で、支えられなくなったか」


 先程までは30センチ弱あった天井と床の隙間が、身体の厚みくらいまで狭まってる。このまま破壊で支えられなくなって、崩壊する船体に押し潰されるのか? それはとても嫌なシナリオ。そして残された僅かな時間で、復活まで1ターンのロスは大きい。


「何とかここから脱出を……」


 何か支え棒になる様な物があれば…… 扉でも出せば支えになるか、って、扉!


「ニートホイホイ!」


 呼び出してみたら、出せる空間が無かったためか、床に倒れた状態で扉が現れる。しかし、扉を開けて中に入ろうにも、身体の厚み分も開ける事が出来ず、入れない。


「折角、これで脱出出来ると思ったのに……」

「それは、あの戦いで使っていた扉か。強力な魔法を連射していたが、扉に何かあるのか?」

「それは秘密だ」


 その戦いを見られてたんだったか。仕掛けまでは知られて無い。この仕組みをこんな砲台に搭載されたら、今よりも厄介になる。


「お前のが手数の増幅、もう1人が威力増幅、そんな所なんだろう。もしそうなら、ここからの脱出にそいつを使わせろ」

「使わせろって、何をするつもり?」

「俺も脱出させるなら、使い方を教えてやる。どうせ仕組みまでは教えられない、とか言うんだろうが、それは構わん」


 僕らが開発した物なのに、僕が気付かない使い道を考えた? 余計な事がバレるとまずいんだけどな。


「俺はここで倒れても、我が家ですぐ復活だが、お前は来年だろう? お前の方が得するのだ。協力してやると言うのだから、試させろ」

「仕組みを教えない。使うのは僕。それで良いなら」

「良いだろう。じゃあ、今から言う様にするんだ」




「本当にうまく行くとは…… 何でそんな事思いつくのさ」

「この砲台にしろ、お前達が思い付く様な仕組みは、俺も試している。お前に出来て、俺に出来ないはずが無い。元々の頭脳も経験も同じなのだからな」


 何をやったかと言うと、扉に仕込んだ魔法連射の仕組みを使って、物理魔法の複数放射。ハコネと2人いれば、100tくらいありそうなお屋敷を運べる、僕らの物理魔法。それを数十回放射したら、イージス艦が持ち上がるレベルだ。飛ぶ前提のこの砲台は、それよりは軽く作られてるだろうから、いくらか持ち上がる。ただし持続性には問題がありそうだから、持ち上がった隙に扉を開ける。魔法を放射する扉を開けるかも心配だったけど、それは問題なかった。作用反作用の法則、仕事してない?

 床面にあった扉を開けて部屋に入ると、なぜか玄関に落ちた(・・・)。入ってきた扉は、玄関の天井に張り付いた状態。どうもこの扉は、外でどう置かれたかを反映して現れるみたいだ。


「この中に入って、どうすると言うんだ? 俺はあのまま天井を持ち上げて、その隙に抜け出す積もりだったんだが」


 一緒に脱出させろと言うので、腕を引いて部屋に引っ張り込んだら、そんな文句を言ってる。

 そうか。この扉に入っても、外に出たら同じあの隙間だったら、意味が無い。ハコネの空間との接続を知らなければ、同じ場所に戻るだけだって思うか。でもその空間の接続は、知られたくない。


「ここからの脱出方法は、見せられない。だから……これを身に付ける条件で、脱出させるよ」


 取り出したのは、VRヘッドセット。ここでアイマスクでも取り出すのが最適だけど、生憎そんな物は無い。目隠しになれば何でも良いって事で、被ると外が見えないヘッドセットを選んだ。


「こんな異世界での、目隠しに使われるとはな。買った時は思いもしない」

「はい、とにかく、さっさと着ける」


 ヘッドセットを着けたら、移動の感覚も分からなくさせるため、持ち上げてベランダに移動。そのままハコネの空間を進むと、床に張り付いた扉がある。ハコネの扉も変な場所に? あの4人、どこから入って来たんだったっけ?

 そろっと開けると、さっきまで居た空中砲台らしき場所が見える。床までは距離があるから、これなら降りても良いだろう。


「はい、外してOK」

「どこに連れて来られたんだか…… なんだ、艦内じゃ無いか」

「上様! どうやって! ともかく、ご無事で何より!」


 外したヘッドセットを兵士に渡そうとしたので、横取りしてハコネの扉の向こうに投げ込む。あげるとは言ってないからね。


「状況は?」

「墜落の原因になったスライムが、壁を溶かして穴を開け、外に出て行きました」


 横で報告を聞くと、エーテルを飲み干したスライムは2m程度に巨大化して、次は壁を溶かしながら移動。今は外に出て行ったそうだ。


「あのスライム、大人しそうだったんだけどな。何でそんな事してるんだろう?」

「そんな事は知らん。確かに、こちらから手を出さない限り、何もして来ないと聞いている。今回ばかりは、様子が違う様だが」


 そしてスライムを駆除しようとしたが、全く攻撃を受け付けない。ただし反撃もして来なかったそうで、スライムによる直接の犠牲は出てない。


「兵士の怪我については、マルレーネ様が治療にご協力下さいました」

「そうか。あいつはそう言う奴だ。困れば誰にも手を貸す」


 さて、僕はハコネを探しに行かないと。その前に、4人がここに居るはず。墜落で2人やられたけど、もう復活して4人に戻ってる。

 戦略ビューで見ると、少し離れた所に4つの青い点があり、その先に1つ青い点。そこへ向かおう。




「全く。1番強いはずのサクラがやられてるとか、何事かと思ったぞ」

「いやいや、あのハーンがあそこまで強くなっているとは。我らもさらに鍛えねば」


 空中砲台の残骸を出て、4人に合流。真っ暗な雪上で4人は焚き火を囲んでた。焚き火に使う薪とか、何も無い雪原のどこから持って来たのか。それともガイウスのストレージには、そんな野営セットも入ってるんだろうか。何だかお気楽な奴らだけど、今回は救われた場面もあった様な、無かった様な。

 それはともかく、次はハコネだ。


「ハコネがあっちに居るはず。行こう」

「そっちには、巨大スライムが向かった。アレも倒すのか?」


 スライムがハコネの方に? 偶然そっちへ向かったのか、それとも理由があるのか。


「ん? こいつは、アレが千切れた欠片か?」


 気付いたルイが指さしたのは、普通サイズのスライム。闇の中で光ってるけど、何を言いたいのか分からない。


「急いでるから、また後で。ハコネ探しに行かないと」

「いや、待った。これ、字を書いてるんじゃ無いか?」


 スライムはレーザービームの様な魔法(?)で、余ってる薪に焦げ目を付けて行く。確かに焦げ目は、文章の様だ。オットーがその文を読む。


「なになに? あの巨大化したスライムは、エーテルに酔って暴走している。主の命令も忘れて、何かに向かっている。あれ以上エーテルを取り込むと、手が着けられなくなる。追いかけて止めて欲しい、との事だ」

「止める方法が分からないんだけど、ハコネも同じ方向だから、何にせよ行くよ」


 僕ら5人は雪に足を取られつつ歩き、スライムは雪上を転がる。暗い雪原を、戦略ビューを頼りにして、ハコネが居る方へ。戦略ビューでハコネの青い点と、正体不明の黄色い点が重なってるけど、これが巨大スライムかな?


「暗くて良く見えんが、こういう時は、ライト!」

「何だこれは……」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ