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8-12 奪還作戦 箱根時計要塞群

 戦略ビューを見ると、僕らの復活地点を中心として、半径1キロの円上に並ぶ12個のトーチカ。今破壊したトーチカはお椀を伏せた形で、銃眼らしき穴以外は、全面が金属で覆われた壁になっている。出入り口も無いから、地下でどこかに通じてるんだろう。試しに魔法を掛けてみたら反射したので、装甲はおそらくヘイヤスタ。ここの地下から掘り出されたのだろうか。


 続いて向かった2つ目のトーチカも、見た目には同じ。1つ目から何か情報が来たのか、接近したら銃撃があった。今度のトーチカは、反撃する間を与えない奇襲はさせてくれない様だ。

 暗くて良く見えないけど、トーチカから何かが発射され、僕らの乗る機体表面で爆発している様だ。威力は高くないのか、感じるのは音と振動のみで、空中にある機体の姿勢制御に影響は無い。さすがはアリサ達の創り上げた機体。ヘイヤスタで覆われた装甲は伊達では無い。


 ハコネが動かす腕の動きによって、2つ目のトーチカに突き刺さる杭。同時に銃撃は止み、銃眼らしき場所から僅かに炎が噴き出した。きっと内部は大変な事になってるだろう。


「パイルバンカーじゃったか? 見事な威力じゃ」


 パイルバンカーは杭を高速でぶつける兵器であって、杭その物が爆発するのはパイルバンカーとは違う気がする。




 もう単なる作業になりそうな予感。3カ所目と4カ所目も、前の2つと変わりなく破壊できた。背負ってた4本の杭を使い切って、一旦戦場から離脱。

 少し離れた雪山の上に移動して、ハコネが機体から降りて扉を呼び出す。戦闘という名の杭打ち作業の間に日は落ちて、外の景色は暗い。扉越しにハコネの空間から漏れる光が、機体の足下を照らす。目視で見付からない様に、コックピットの照明は消してある。それ程警戒する必要は、無いはずだけど念のため。

 今の作業は、杭の補充。予備がハコネの空間に置いてあり、取り出して機体の背中にある固定箇所に背負わせる。予備は12本あり、あと8カ所のトーチカ破壊には足りる予定だ。しっかり事前調査をして、充分な数の杭を準備していたアリサ達のおかげだ。今年も僕らが復活直後にここで倒されたら、来年までにトーチカ群を何とかするつもりだったらしい。頼りになる娘達(?)だ。


 僕は機体に残り警戒。真っ暗な雪山で目視では見えなくても、戦略ビューではレーダーで見張るかの様に、敵の様子が分かる。機体から降りないは、もしもの際にはハコネが攻撃を受けないための盾になるためだ。決して、降りるのが面倒とか、寒いからでは無い。


「何か動きはあったか?」

「無いよ。いつ来るかと、戦略ビューを見てたんだけど、トーチカの兵士が移動してるだけだった」


 2本補充した所で、確認に来たハコネに返答。戦略ビューを見ても、外部から敵が来てる様子は無い。ただし、戦略ビューで見えてる範囲は、小田原までの距離に対して3分の1。敵がやって来るのが小田原からだとすれば、半分以上を過ぎてから発見できる事になる。そして僕らが箱根エリア全体を見渡せないのに対して、彼らが戦略ビューを持っているのなら、僕らがどこに居るのかさえ見えているだろう。箱根エリアの支配権は向こうにあるから。

 破壊して来た4つのトーチカには、どれも出口が見当たらなかった。戦略ビューで見える光点の動きは、隣同士とスポークで連結している地下道の存在を匂わせる。戦略ビューは平面的に表示するので、光点が地上なのか地下なのか、あるいは上空なのかも分からない。




「さて、次はどれにするんじゃ?」


 4本の補充が終わり、再びハコネと2人乗り。ハッチを閉じて照明を付けると、服の膝下が雪まみれのハコネ。座ってただけな事に少し罪悪感。次の補充は代わりにやろうかな。


「さっきの続きに行くよ」


 最初に見付けたトーチカから時計回りに破壊して来て、時計で言えば4時から7時までを破壊済み。8時のトーチカでは、地上か地下かは不明ながら、外に出ている兵士が多数いるみたいだ。

 接近して行くと、まだ100mはあろうかという場所で、射撃を受ける。真っ暗な中でトーチカに光が瞬き、装甲に何かが当たった振動が来る。真っ暗ながらその様な射撃を行えるというのは、かなり訓練された兵士達なんだろう。先程と同じで効き目の無い攻撃に、姿勢に影響が出るくらいの威力がある攻撃が混ざる。当たった時の音が激しいけど、違う種類の攻撃が混ざってるんだろう。空中に浮いたまま、物理魔法による姿勢制御をしている状態は、どうもふらつきやすい。地上に降りて戦った方が良さそうだ。

 雪を踏みしめながら雪原を進みトーチカが目の前に迫ると、戦略ビューの光点が一斉にトーチカから離脱して行くのが分かった。この状態でトーチカに立て籠もっても無駄死にだと分かったんだろう。僕としても、敵とは言え犠牲が小さいのは嬉しい。目的は敵兵じゃ無く、このトーチカなのだから。


 同じく、9時、10時の位置にあるトーチカも破壊。そして11時の位置にあるトーチカも破壊した。


「変化は無いようじゃな」

「全部壊さないといけないのかな……」


 期待していたのは、過半数である7つを破壊した事で、箱根の支配権がこちらに移るんじゃ無いかという事。それが達成できれば、戦略ビューは領域全体を見えるし、外交だって出来るかも知れない。しかし支配権は移らなかった。あるいは破壊しても、5カ所中の5カ所を敵が支配しているからダメなんだろうか。




 さらに1つ、12時の位置にあるトーチカを破壊しても同じだった。ここで再びの杭補充タイム。ハコネが扉を呼び出したら、杭を運んで取り付けるのは僕。ハコネはこう言う事で文句を言わないけど、やらせっぱなしと言うのも少し気が引ける。

 ハコネの空間には、8本の杭。長さ3mに太さ10cmくらいあり、かなり重いはず。しかし魔法で動かすので、重量があろうと関係なし。その杭を4本も積んだ、さらに重い機体を動かしているのだから、出来て当然だけど。

 機体への杭の装着は、背中に固定されている大きな筒に入れるだけ。上に引き抜ける様になっており、いわば矢筒。設計を色々考えたそうだけど、扱いやすさでシンプルな物を選んだそうだ。


「ハコネ、終わった。扉を……」

「来たようじゃぞ。急がねばな」


 僕が操縦室に入ろうとした所で、ハコネが扉を消しに降りた。急いで確認すると、多数の光点が東から真っ直ぐ向かってくる。4つの塊になっている事、山や谷があろうと関係なく直進しているから、4機の空中砲台に何人もが乗ってこちらへ向かってるんだろう。移動速度は速くないので、急いで事を進めれば全てのトーチカを破壊出来そうだ。

 そして多数ある光点の1つが、緑色である事も気になる。赤い点は敵勢力を示し、青い点は自勢力を示す。緑の点は友好関係にある誰か。もしかして、マルレーネ?


「敵が来る前に、残りの破壊は間に合いそうじゃな」


 緑の点が気になりながらも、問題なく残る4つのトーチカを破壊。それでも箱根の支配権は移らない様だ。他にも軍事施設が残っているのかも知れないけど、どうもそれを気にする時間は無さそうだ。

 大急ぎで、最後の4本を装備して、迎撃準備を整える。


 そして、空中砲台は現れた。飛行船の様な縦長形状の機体と、船体の左右にある光。無灯火にしないのは、見られても良いという自信か。


「どうせ全部落とすつもりじゃろう?」

「もちろん、やられた分はやり返す。でもその前に、奪還作戦を始めよう」

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