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8-8 奪還作戦 女神とは

 それから聞いた、この近辺の政治情勢。秦野のエルフの中でも、周囲の連邦と融和を図り孤立をやめようという意見、現状維持で良いという意見、力で課題を解決しようという意見など纏まらない。さらにエルンスト達の様に亡命してきた人族もいて、その中にも現状維持から箱根奪還まで色々な意見がある。


「下手を打てば、ハコネの地を取り戻すつもりが、内部分裂を起こしてハダノの地を失う恐れもある。居候の身で迷惑を掛けられん」


 夕食会が終わると、遅くまでの面会は辛いエルンストとマリーが帰宅。年齢通りのご老体だから仕方が無い。ハンスは2人の付き添いで帰って行った。元男爵家のフォンハコネ家は地下2階の新市街にあるそうで、近い内に訪ねて来て欲しいとお願いされた。


「もう1人面会者がいる」


 そしてやって来たのは、本当に若い人族の男性。


「彼はスロタルッカ。スロと呼んで良い。私の子で、マルレーネの孫でもある」


 マリの子でマルレーネの孫?


「スロタルッカです。父は相模公小田原城主の足柄氏綱、父の父は武田丈二、父の母はマルレーネ。母はここにいるマリテヘダです」


 いきなり系図がややこしいけど、まず父方の祖父母がジョージBとマルレーネ…… マルレーネ、何があった? そしてその2人の子でスロの父は小田原の城主と来た。


「確認だけど、そのお父さんは味方なの?」


 そう訪ねると、スロは首を横に振る。スロの父は、昔も今も連邦の将軍。秦野で捕虜になった時期があったそうで、捕虜に性的な意味で迫ったマリ。色々酷いけど、捕虜に関するジュネーブ条約が無いから、こんなもの?

 マリの父は僕の身体(ただし中の人はハコネ)だから、マリと氏綱って人は異母姉弟。こっちはこの世界の常識的にもダメなんじゃ無い? そんなタブーの2段重ねをやってのける、マリは恐ろしい子。


「もしかして、スロさんのお父さん、転生者?」


 マリはずっと前、転生者との間に子供が欲しいって言ってた。転生者が生まれるかも知れないから。そのチャンスに、色々壁を飛び越えてしまったんじゃ無いかと推測。


「そうだ。そして期待通り、スロも転生者だ」


 明日は僕らの正体は隠した上で連れ回してくれるそうで、秦野の色々なものを見せたいのだとか。きっと色々やらかしてるに違いない。ハダノさんが竹になってる件も聞かなくては。




 夜は部屋を宛がわれ、そこから僕の部屋に移動してみさきちと通信。秦野の状況を説明したけど、食いつく所は転生者が居るという点。


「その若い転生者ってのは、どこから来た人だった?」

「僕らの知ってる日本と違う、日本と呼んでる場所らしいよ」


 以前アリサに聞いた話では、彼女が転生前に居た世界には、紀元前4000年からアメリカという国があり、1775年なのにITが進んでいたりする。そんな世界にある“日本”にアリサは居た。マリの“日本”は魔法が存在する世界。その時点で僕やみさきちの世界とは違う。

 スロの転生前は、アステカと核ミサイルを撃ち合って滅びつつある日本で、死因は「きっと核兵器」だそうだ。今のところ、転生者を1人見つける度に、新しい異世界が登場する。


「共通して紀元前4000年に文明が始まる世界ね。ヒスシヴみたい」


 ヒスシヴってのは、Historia Civilizationってゲームの略。ちょうどこの前友達に布教され、どんなのか見せて貰う予定だった。それはそれとして、転生者の出身世界がゲームっぽい、そもそもこの世界も十分ゲームっぽい。この世界の創造主は、ゲームを鋳型に世界を作ったのか? 色々と聞いた創造主の情報から、本当にそうじゃないかって気もしてくる。


「ゲームの話は良いとして、女神が竹になってるって、これがホントのご神木ね」


 注連縄をするには大きすぎの、林全体がご神木ってやつだけどね。いや、竹は木じゃ無いんだっけ。


「それとスライムの件だけど、八王子にはまだ居ないみたい。居たら私も情報交換出来そうなんだけど」


 みさきちもPCを使ってスライムと会話したかったそうだけど、居ないものは仕方が無い。今日は地下に居るから通信が出来ないため、そのまま僕の部屋に居るスライムに、八王子進出も希望してると伝えておく。僕との間で決めた暗号に従い、緑点滅で“了解”の意思を示す。

 タブレットを介して、みさきちにスライムを見せる。


「そういうタイプなのね。見かけたら保護しておくわ」


 スライムも何かを伝えたいそうで、タブレットのスクリーンキーボードを器用に触り、文章を書いていく。


“先程の、ヒスシヴに似た世界から転生者が来ているという話、私の主は確実に興味を持つ。私の主から預かった情報に「ヒスシヴやりたい」という事が含まれている”


 無駄な情報まで入ってるとは、このスライムの情報記憶容量はどうなってるんだろう? あるいは、僕の部屋にパソコンがあるという情報から、そっち系の情報が追加されたんだろうか。


“早くネットワークに接続したい。情報を伝えたい”




 次は竹の件を聞きたくて、サガミハラさんを訪問。


依代(よりしろ)変更というのがあります。神族はそもそもこの世界に身体を持たない存在で、創造主がこの世界に呼び出す際に、この世界(・・・・)での身体(・・・・)を持ったと考えられています。言うなれば、本体は別にあって、この身体はこの世界に居るための道具。だから壊れても再生出来るし、別の 依代に置き換える事も出来る」


 僕やジョージBが女神の権限を奪い行使した事、それは女神にとっての大きな災い。その対策のため、エドさんを中心とした女神達によって研究が行われたそうだ。お互いの情報を持ち寄り、起きた事に説明がつく説を練り上げる。まるで女神学会。そんな中で出来上がったのが、サガミハラさんが説明してくれた話。

 その中で、僕とハコネの間の入れ替わりは、この世界での身体を入れ替えると同時に、ハコネの権限を僕が奪ったという事と理解された。でもそれ、僕も女神と同様に、本体は別の所にあるって事にならない?


 ジョージBは入れ替わり無しに、権限を奪う部分だけを数多く行使した。権限を移す事は、アタミさんが僕に権限を預けられたみたいに、自ら渡す方法は理解されていたけど、ジョージBがやった様な強制的に奪う方法は分からないそうだ。奪われた側に話を聞く機会があれば解明出来そうだけど、奪われた側の女神達は皆、彼の手の内にある。女神の身柄を確保したのは、対策を立てさせない為なのだろうか。


 ついでに、これまで知りたかった事にも、サガミハラさんの考察を求めた。なぜ龍神に倒されたハコネは、僕の身体から元の身体に戻ったのか。ハコネが僕の身体で勇者だった頃は、倒されても僕の身体を再生させていた。それが、あの時からはハコネの身体で再生している。


「女神の再生は、次のターンまで待たされます。勇者として再生していた頃は、女神としての再生の前に勇者として再生してしまうため、女神の身体で再生出来なかったのでしょうか」

「それだと、龍神に倒されても、勇者で再生しませんか? あと、僕がハコネから奪ってたはずの権限が、その頃にハコネに戻ってな様な……」


 埋まらない穴があるままの仮説。完全な解明は出来ないけど、一般的にこうなるはず、というのは分かったと言えそうだけど。


 そして、話は再びハダノさんに戻る。


「なぜハダノが竹を依代に選んだか分からないけど、きっと前の戦争が原因でしょう。昔は戦争があっても、人の権力者が変わるだけだった。でも今は、女神の権限さえ奪われる。そんな中で、これまでに無い方法で対抗しようとした。あとは、直接聞いてみてね」



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