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8-2 奪還作戦 死ぬ程ソラが好き

 八王子での用事は終わり、ハコネが待つ基地に戻ると、ハコネが暇そうにしてた。城から守備兵が戻りお役御免になったそうだ。


「危なく逝く所じゃった」


 戦場に置いてきたハコネは、大物を倒して油断していた所を鷹の獣人による急降下攻撃に遭って危なかったらしい。魔王軍は対ハチオウジさん用に「女神にも効く武器」を備えていた様だ。また不意打ちでやられかけるとは、小田原ダンジョンでの記憶は女神に戻った時に置いてきたのだろうか。

 基地を襲う魔王軍をハコネと4人組でかなりの数狩ったそうで、とても感謝されたらしい。


 ルイ

 Lv:16

 種族:ノーライフキング

 職業:冒険者、サクラの眷属


 城に行く前がレベル5だったのに、こんなに上がるもんなのか。あるいは、余程頑張ったのか。ルイさんは槍術をさらに磨いて、なんとか無双みたいに周囲の敵をなぎ倒したり出来るのだとか。ちょっと見てみたい。


「僕の扉を八王子に置いておくのはやめたから、また移動に使えるよ」

「なんじゃ? 喧嘩別れか?」


 妙なことを言うハコネに、事の顛末を説明する。外交モード以外に遠隔地との通信手段がないから、これは画期的らしい。でもそれぞれの空間に居ないと使えないのは、どこでも呼び出せる外交モードより不便な所もある。実物は今夜見せる事にして、今は先に進もう。




「今度は大勢で来たのね」


 先に戻っていたサガミハラさんに挨拶しそびれたので、サガミハラさんの天文台へ。ここまでは飛んでも平気って事で、天文台前に着いた所で全員呼び出す。前回ここに来たのはハコネと僕だけだったから、4人は初訪問。

 天文台を案内して貰って、これからのことを話す。


「私も引退してここで研究に専念したいんだけど」

「現役でも研究出来てるじゃないですか」

「空高く昇って帰れなかったら、街の人が困るもの」


 宇宙を目指すサガミハラさんは、女神の「死んでも次ターン復活」を使って宇宙にチャレンジしたかったそうだけど、神官の人に猛反対されたそうだ。それで不在の間に攻め込まれます、って。実際に小田原などで起きた事例だけに、警戒心は強い。


「でも、年末なら良いって言われたわ。1月1日には復活出来るから。それまで、準備することにしたわ」


 倒された女神の復活は、各ターンの開始時、つまり今は毎年1月1日だそうだ。なんとなく毎回復活時は冬だった覚えがあるけど、法則性があったわけだ。

 まだ1月7日なので、1年近くある。気長にやって下さいね。しかし失敗してもすぐ復活になるようにって割り切り、それで良いのか、神官さん?

 サガミハラさんの探究心を完全に止められないって事を、神官さんは長年の付き合いで知ってるんだろうな。


「それで、これからハダノに向かおうと思うのじゃが、途中はどうなっておる?」

「途中? 人里から行くか、山から行くか、どっち?」


 人里を進むルートは、厚木や伊勢原を通って秦野に向かうルートで、川が荒れない冬は相模原から厚木までは船を使う。厚木から秦野へは陸路だけど、伊勢原から秦野は誰でも行けるわけではないそうだ。理由は秦野警備上の都合。秦野と連邦の関係はあまり良くないそうだ。そっちのルートだと、魔法はご法度の連邦内を通るから、飛んで行く事は出来ない。

 もう1つのルートは、相模原から山間部を進み、宮ヶ瀬を経て秦野に至る険しい道。リアル富士山に相当する標高3800mの峠を越えるため、特殊な訓練を積んだ者以外は使えない。そもそも冬に使うのは論外。余程な理由がない限りはそちらを通らないけど、連邦の領邦を経ずに秦野に辿り着けるということで、訳アリな人が夏場に通ったりするそうだ。僕とハコネであればそこを飛んで行く事も可能ではある。


「もしのんびり陸路で行くなら、4人をしばらく預けて行かない? 私の領域に侵入した魔物を狩ってくれたら私は助かるし、彼らも経験を積みたいんでしょう? ハダノへの旅路に魔物は現れないでしょうから」

「朕からもお願いしたい。砦を守る間、まだまだ精進が必要と感じた」

「良いかな? サクラさんの扉は、塔の隣りにある小屋に置いてもらえると良いかな。そこを4人の宿舎にして貰って良いから」


 まあそれで良いか。急ぎたい気持ちもあるけど、各地の情報を得ながら進むのも今後の事に役立つはず。

 4人もサガミハラさんの戦略ビューで魔物の位置を教えてもらえるとのことで、効率よく狩りができるそうだ。もしも倒されてしまっても僕の部屋に復活できるから、狩場がここに近ければ戦線への復帰も可能。良い作戦かもしれない。




 4人をサガミハラさんに任せて、巨木の森を抜けて行く道を西へ。相模原の街と天文台を繋ぐ道は使う人が少ないため除雪されず、雪に埋もれても道が分かるように目印だけが立ってる。


「このまま街に向かわず、船着き場へ向かおう。船に乗るのは明日の朝」

「夜は船も出ないじゃろう。それで良い」


 森の中の道は、やがて相模原から船着き場に向かう道に出た。そこからは除雪もしっかりされていて、歩きやすくてペースが上がる。それでも相模原と船着き場は歩いて6時間の距離だそうで、途中で辺りは暗くなって来る。森の中でも道は平らにならされており、馬車がすれ違えるくらいの道幅もある。人の手がかなり入っていることが分かる道だ。道に明かりはないので、八王子で貰ってきたランタンを持って進む。夜歩く人はおらず、時々道沿いの高い木の上から雪が落ちる音だけが聞こえる。

 そろそろ日付も変わるかという頃、森が終わって道は左に曲がると、長い坂を降りていく。河岸段丘の縁に辿り着いて、上の段と下の段を隔てる崖沿いにある道を下ってるみたいだ。道の右手、崖下の方に明かりが見える。そこが船着き場だろうか。


 坂を下って道が右に曲がると、今度は木が疎らな開けた平地。ここも道だけは除雪してある。その先に崖上から見えた明かりが近付いてきた。明かりは宿を兼ねた酒場で、船を待つ人のために営業されてるそうだ。


「こんな遅い時間に到着とは、無理をするねぇ。泊まるんだよねぇ? 酒飲み共のつまみ程度のものしか出せないけど、要るかい?」


 船待ち宿の女将に出してもらったのは、茶漬けと言うか雑炊と言うか、ご飯が入ったスープの様な物。それと野菜が少し。そんな夕食を頂いて、部屋へ。部屋は相部屋の大部屋と個室があるそうで、僕らは個室を選んだ。こっそり扉を出しても良い様に。そして僕の部屋でタブレットを見せる。


「前も使っておったものじゃろう? 何か変わったのか?」


 もう時間も遅いからみさきちは寝てるだろうけど、サガミハラさんの天文台を離れる前に出しておいたメールの返答を確認する。メールには今夜は到着が遅いからテレビ電話は無し、今夜は船着き場に向かうと伝えてあった。


「ミサキは何と?」

「武田兵の扱いを議論してる」


 手の内を見られたからこっそり闇に葬るって案は、自爆した1人以外は不法侵入以外の罪がないので、所属先との捕虜解放交渉になる。ちなみに、車は返さないという強気の対応は、女神の力まで得たみさきちなら本気の侵攻でもなければ防げるからと。


「捕虜が開放されるまで1ヶ月は掛かるそうだ。その頃に僕らの情報も伝わらるだろうから、それまでに秦野まで行ってしまおう」




 何気なく川の方を見ると、川の向こう側に点滅する光。何かの連絡をする人なのか、もしかしたら助けを求める人? この距離では戦術ビューには反応しない。地元の人なら知ってるかな?


「女将さん、あの光は何でしょう?」

「樹上生活するスライムらしのよねぇ。川のこっちには居ないけど、西にはいるのよ。危険はないそうだから、アツギに行くなら見る機会あるんじゃないかねぇ」


 ホタルなら夏だけど、冬光るスライム。明かりに使えないかな?


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