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7-21 女神新時代 ニュージャンル領主

 ついに城門が炎上した。耐久力が削れるまでは何の変化もなかったのに、耐久力が切れた途端に普通の木造建築同様に火の魔法でも燃える様になる。これまで見えない壁に遮られていたのが、今はあっさり空から侵入できるようになった。女神の力に守られた城はこうなるのか。この先このパターンを良く見ることになるんだろう。


「さて、下手人はどこかしら?」


 火が燻る門の上に降り立つと、私に矢を射かけていた侍が現れた。これが眷属?


「相手は小娘1人だ。討ち取れ!」


 とても小物っぽい言葉で檄を飛ばす丹波さんを発見。眷属達を飛び越えてそっちへ向かっても良いけど、折角だから……


「ファイアボール!」


 門の攻撃以来これしかやってないけど、シンプルイズベスト。得意な技術を磨いて必殺の技に昇華したファイアボール。絶えざる丹念により、元のファイアボールにあらず。


「一撃だと!」


 もらったエーテルがあるから、出し惜しみ無し。さらにさっきまでと違い、地に足の着いた場所で放てる魔法は、私の全力。燃えたと思ったら消滅したから、やはり人では無かったらしい。


「さて、全部やっちゃうわよ!」


 生存本能を持たない眷属は危険を顧みず突撃してくるけど、ただの的に過ぎなかった。

 討伐完了。


 というか、人間は誰も味方に付いてくれず、眷属だけを従えて城に立て籠もりなんて、それで勝つ気あったの?


―――


「さて、丹波」


 本人の戦闘能力は女神の力を得ても嵩上げされないらしい。丹波はみさきちにあっさり捕らえられ、今は縛られて土間に座らされている。

 奥の畳敷き部分にみさきちが座り、板敷き部分で伊勢さんが立つ。土間と外を繋ぐ戸は開け放たれ、僕やサツキさんは外から見せてもらえる。ちなみに後で行われる山賊(・・)達の裁判は、証人として僕の役目もあるらしい。その山賊達も土間の隅に指揮官級と思われる2人が座らされており、残り58人は庭に座らされている。


「なぜこの様な事に及んだのだ? 本来、謀反は斬首以外無いが、事に因っては長年の精勤により酌量の余地もあろう」


 伊勢さんにとっては、30年以上共に働いて来た同僚。主犯が他に居て操られていたなどあればと言うことらしい。でも斬首が切腹に変わるだけって、一緒じゃない?

 これについては後で聞いた話だけど、単なる名誉の問題ではなく、残された家族は全財産を奪われて追放か、財産は持って追放の差があるのだとか。どちらにしても、謀反人の家族はこの場所で生きていけない。


 丹波容疑者の供述によると、これまでも機会があれば権力を得たかったが、ついに姫が帰還してしまい領主代理の座さえ失いかねない事態になったため、伊勢さんとみさきち不在の間に勝負に出たらしい。


「湖畔の村との道を通じさせたのは、武田と通じての事か?」

「……」

「答えないというのは、通じていたと言うのと同じだが?」


 しばしの無言。


「では、一旦ここで止めて、山賊の頭目から話を聞くとするか」


 兵士が頭目(?)を立たせて、丹波容疑者の居た位置に連れて行こうとする、その時。

 閃光と轟音を伴う爆発。土間のある部分の建物が崩れる! 駆け寄り崩れかけの屋根を支え、下にいる人が押しつぶされるのを防ぐ。直ぐに兵士が巻き込まれた人を救出。その間に支えを失っている土間の屋根を庭の空いた場所に運び、そっと下ろす。土間部分は2階が無かったので、運びやすかった。

 裁判どころではなくなり、可能な者は治療魔法で怪我人を助け、更に建物が崩れる恐れがあるため、中にいる人を全員外に避難させる。


 結局、山賊の頭目が丹波容疑者を巻き込み自爆、死者はその2名のみで、他は両者の掛かる縄を持っていた兵士2名が重症、伊勢さんもとっさにみさきちを庇うべく前に出たため重症。怪我人は魔法で治したものの、裁判は延期になった。

 裁判が出来なくなってしまい、丹波家の遺族は財産を持っての追放となった。




「この時を以て、城をお返しいたします」


 場所を広間に移し、なぜか僕も同席した上で、伊勢さんからみさきちへの権限の返還。


「なぜ今なの? この混乱が収まってからじゃ駄目なの?」

「裁判の席に武田の者を同席させ、それにより丹波を死なせた上に姫様を危険に晒したのは、某の失態。その責任を取りたく思います」


 元々裁判が終わったらの予定だったから、裁判が無事に終わっててもこのタイミングだったのだけど。そして、城の権限以外に、もう1つの問題。そのために呼ばれていた人がいる。


「私の権限は、これからは姫に預けたいのですが、いかがでしょう?」


 ハチオウジさん。権限を丹波氏に預けていた事が、どちらかと言えば悪い方に働いたと思うのだけど、なぜそのままに?


「ハチオウジ様、それはなぜですか?」

「そもそも権限を預けたのは、魔王軍との戦いに専念するためでした。これからは武田軍との戦いまで始まるかも知れません。東にばかり目を向けてもいられなくなります。そこで、東の守りは、私と眷属、そして多少の人員を割いてもらい、他の方面に力を割いてもらいたいのです。昔の様に私がこの城に居る訳にも行きません」


 住民の願いを聞いたりする仕事は、城に居ざるを得ないみさきちに任せよう、そんな話らしい。

 みさきちにとって特に損をする話でもない、というより、これまでしばらくハチオウジさんは戦場に専念する体制だったので、それを変えると不都合が起きるかも知れないという事で、とりあえずはハチオウジさんの言う様にして、状況が変わったらまた見直しをしようという事になった。




 城に戻った兵士とハチオウジさんを僕とハコネの部屋を通じて基地に戻す。代わりに、ハコネ、サガミハラさん、そして4人組を八王子に呼ぶ。城では話しづらい事と言うので、みさきちの屋敷だった建物に集まる。


「戦略ビューとか戦術ビュー、私にも使えるようになった!」


 女神の権限を預けられたみさきちが、とても嬉しそうだ。ところが、とんでもない爆弾が2つ。


「私にも、ターン900分の894って見えるんだけど?」

「えっ? そうなの?」


 僕に見え、ハコネに見えず、サガミハラさんに見えず、みさきちに見える。この件は謎が深まってしまった。


「終わりを示すのか、それともその時になにかが起こるという知らせなのか」

「新しい情報を持つ者が増えたわけでも無いからのう。考えても仕方があるまい」


 そしてもう1つの爆弾。それはみさきちのステータス。


 足利政綱

 Lv:101

 種族:神族


 職業:文明守護者

 権限:都市勢力、プレイアブル勢力


 神族? 神の権限を得た人間じゃないの?

 そして謎のプレイアブル勢力という言葉。僕のと違い、マルチ管理者やホストというのは付いてない。

 この2つの爆弾は、リンクしてそうな気がしないでもない。


 他に試すこととして、サガミハラさんとみさきちの間で外交モードが使えるかだけど、問題なく使えた。女神の使う機能と全く同じ様だ。僕やハコネとはやっぱり駄目みたいだけど、これは僕らも何処かに城を手に入れたら外交が出来る様になるんだろうか。

 手に入れる城は、もちろん、箱根の予定だ。


 翌日の裁判は、特に事件も起こらず進んだ。

 兵士は全員、所属を義勇兵だとしか言わない。でも装備が武田軍のらしいんだよね。武田軍でなく義勇軍。全面戦争は避けたいけどもし勝てば美味しいところは持って行きたいとか、そんな意図が見え隠れする。結局、戦争での捕虜じゃなく山賊と同じ扱いになると言うことになり、強制的に鉱山で働かされる刑になった。




「お久しぶりです。ハチオウジ様」

「シモン、久しぶりですね」


 ハチオウジさんにシモンさんが心配してた話をしたら、一緒にシモンさんに会いに行くことになった。基地にハコネの扉、八王子に僕の扉がある今のうちなら湖畔の村まですぐに行けるから。同行するのは僕だけ。ハチオウジさんの不在の間はハコネが基地を守るそうだ。今回の騒動で何も活躍の場が無いと言って、出番がありそうな前線に居る。


 しばらく思い出話をした後、ハチオウジさんがここに来た目的の話になる。


「新しい領主は、女神も兼ねるに等しい現人神ですが、自らの権限や力について、まだよく知りません。信仰を得ることが出来れば、魔王や他の敵に負けない力を得るでしょうが、今は時間が惜しいのです。そこで、現人神が信仰を集めるため、神官に戻って支えてはくれませんか?」

「ハチオウジ様は?」

「もちろん私も出来るだけのことはするつもりです」


 この後シモンさんはみさきちに会い、崇められるのではなく愛でられる現人神という新コンセプトを提唱し、全盛期のハチオウジさんを超える信仰を集めるという快挙(?)を成し遂げる。

 それを見たハチオウジさんは、なぜ自分の時はそれをやらなかったんだと拗ねたとか。シモンさんにとって、元々ハチオウジさんはアイドルだったんだけどね。


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