第3話 商職の街クロン
商職の街クロン
分厚くできた鉄の門、おそらく厚さ的には50cm以上はあるであろう門が開いた先にあったのは
石畳で埋め尽くされた地面と煉瓦のようなもので建てられた家が建ち並ぶ
街の中は若干ではあるが外より薄暗く感じたが、それ以前に岩壁の中にあるというのに明るすぎる。という疑問は上を見上げたらすぐ解決した。
正確には「山の岩壁の中にある街」ではなく「山の中身全体を刳り貫いたようにできた街」である、頂上または俗に火口部と呼ばれるところからは光が差し込むため多少は明るい
火口から直接日差しが差し込み街中央をより明るく照らしているのが良く分かった。
そしてその広さも奥行きを合わせても広大と言ってもいいかもしれない、ゲームで最初に訪れる街のレベルの大きさではない。
街の大きさに大きな口を開けて唖然としていると鉄門が閉じると共にドルディが口を開く。
ドルディ「お前、本当に初めてなんだなー。まぁいいか、ここは商職の街だ。」
俺「商…職?」
ドルディ「色々な商業と色々な職人が多い街って事だー、といっても商業的には神帝都やバルディアには及ばないが職人の技術は最高な街だ。」
ドルディ「まぁ口で言っても思い浮かばないだろうし簡単にだが案内してやる。」
そういうとトコトコと街並みを歩き始めた。
ドルディの横を歩き街並みを眺めながら、いや観察しながら改めて思うと想像以上に街であり、もっと言えば城下町の様にも見える。
数十メートル歩くと徐々に人が増えてくる、自分のような人間っぽいのやドルディのようなドワダ族、猫や犬、狐の様な動物的な耳と尻尾を持つ人、
長身で耳が尖っているエルフの様な人等、様々な種族が雑多に歩いている。
そして人々がドルディの顔を見るたびに挨拶をしてくる。まぁそれなりの上の立場の人なのだろう。
10分ほど歩くと開けたところに辿り着く、広場的な場所の中心に野菜のようの物から精肉・家具・骨董品・はたまた武器や防具あらゆる露店が並んでおり
かなりの賑わいだ。昼間の池袋的と言えば想像がつくかもしれない。
俺自身も人混みは嫌いだが賑わう場所は嫌いではない、わかりやすく言えば人混みは嫌いだが屋台とかが建ち並ぶ「祭」と言う行事は好きと言う感覚である。
そう一人でwktkしていると長身で耳が尖っているエルフ的な人がドルディに話しかけてきた。
「ドルディさん、おかえりなさい!ちょっとそこのテントで職人会の臨時会議が今からありまして急で申し訳ないのですが議長として参加をお願いします。」
ドルディ「ルッソン、お前さいつも急だよなぁ…急な臨時会議で急に議長やってくれとか無茶苦茶すぎるんでねぇ?」
ドルディの言ってることは最もだと思ったが間髪入れずに反論が来る。
ルッソン「職人会・取締会長ですし、仕方ないですよ!」
やべぇ…この人やべぇよ…理不尽だ…ブラック職人会や…。
そんな態度にあきらめたのか俺の方に顔を向け口を開く。
ドルディ「ちょっと待っててけろ~臨時会議だから5分もしないうちに終わるべから。待つのも何だから商店市場を見てくると良い」
俺は元気よく頷く、もしかしたらドルディも俺がwktkしてたのを薄々感づいて気を使ってくれたのもあったのかもしれない。
そんなドルディの気遣いを無駄にする俺じゃない、足早に向かう。
商店市場に着くとまず野菜等の食品市に目が行く、不思議と現実世界とは大きさや形、色も余り変わらない食品が並んでいる。
次に骨董品や家具の露店に赴く、柄が派手な壷や大皿から高級感あふれる木製のタンスや食器棚っぽいのが並ぶ。
やはり現実世界とは違うのか若干のカラーリングのバリエーションこそあるがRPGゲームで言うところの「旅人の服」や「布の服」的な物しかない。
しかし周りを見るとそれらの軽装備をしている人は少ないように見える。
と思っていると衣料品店があることに気付く、お洒落な服が揃っているだけでなく女性用の下着専門店まである。と言う男の性なのかそう言う所には目が行ってしまう。
そして最後に武具、防具の露店に目が行く ドルディが言うだけあって素人の俺でさえ解るほど上等品だ。ゲームで言えば終盤で手に入りそうなものばかりだとも言える。
その中で数ある武器屋の中で1件だけ目に止まった品物があった
恐らくショートソードで刃は海の様に青く、中心には金の装飾が施されて周りには文字が彫られているが読めない 鍔も金色で竜の爪のような形をしており
柄は黒い革製の帯で丁寧に巻かれている。
一目ぼれだったがこの世界の通貨は持ってないし店員の姿が見えない。留守なら仕方ない。
そうこうして一通りめぐって幾つか気づいたことと違和感があった
まず気づいた事だが先の留守にしていた武器屋以外の「全ての露店」の店主店員が黄緑の髪でエルフの様に耳が尖っているが長身ではない種族が勤めていた。
そして違和感だが「黄緑の髪の人」と手足の一部に鱗、さらには飛べるかどうかは不明だが翼までもあり瞳孔が縦長の「竜人」と呼ぶべき人達が俺を見ると跪くと言う行為を行っていることだ。
この世界に来てから跪かれるような事をした覚えはない。しかも若干喜びに震えているようにも怯えている様にも見える。
市場を少し離れて広場的なところに行くと、それらの人たちによってより光景は酷くなって行った。
その常軌を逸した行動に街は騒めき必然的に自分に注目が集まる。
その騒ぎにようやく気が付いたのかルッソンと共にドルディが慌てて戻ってくる。
ドルディ「どうしただぁ!?これはどういう状況!?」
ルッソン「高尚高潔でしられる「ゴブリン族」と高慢で誇り高き「リュート族」がたかが一個人に膝を折るなんて…」
ドルディ「んだが、このまま膝をつかせたままじゃ色々と面倒だ、お前さ何しただ?」
俺「いや商店街をぐるりと一周してちょっと下着専門店で この世界の女性たちがどういうものを着用しているか研究を終えてここに来たらこういう状況になりまして・・・」
ドルディ「色々言いたいことはあるが、何もしてないなら良いけんども、このままでは衛兵もくるし何とかしてけろ」
俺「何とかと言ってもなぁーどうしよう、取りあえず跪かないよう言うしかないかな」
大の男が3人集まっている陣形を解いてヒソヒソ話を終える。
ルッソンとドルディは離れたところから見ている。
とりあえずボーリングのピンのように並び跪いている一番近くにいるゴブリン族の女性に話しかけてみる。
俺「あの~すみません。申し訳ないのですが跪くのを止めてももらっても良いですかね?」
ゴブリン女性A「ヒッ!・・・」
俺「もし俺が貴女方に失礼をしてしまったのなら謝ります。この通りです。」
この世界の謝罪の仕方はわからないが、我が日本国の最大限の謝罪と言えば一つしかない。
見よ!これがジャパニーズ土下座だ!
彼女の前で土下座の姿勢をとると跪いた人たちがどよめく。
ゴブリン女性A「お・・・お止めください!我らが主様、どうか御立ち下さい!」
俺「我らが主様!?俺まだここに来て数時間しか経ってないんですけど!?誰かと勘違いいしてません?」
ゴブリン女性A「いえ、決して私たちが勘違いなどは致しません。本能でわかるんです、私たちはずっとずっとお待ちしておりました・・・」
俺「あぁん・・・やだなにこの人達コワイ・・・!と、と、取りあえず我らが主様とかは知らないけど跪くのは止めてください!しかたない、我が名において命ずる!跪かなくていい!」
と某アニメの仮面野郎の真似して調子に乗ってみる。
ゴブリン女性A「我が主様がそう仰るのなら・・・従います。」
そう言うと渋々ではあるが、跪いた人たちが立ち上がり始めるが自分への尊敬の眼差しは変わらない。
立ち上がらせたまでは良かったのだが時すでに遅かったらしく、それと同時にドワダ族であろう衛兵がやってくる
衛兵A&B「そこヒュム族のお前、何やっているんだぁ!ちょっと、街長の屋敷で調べるから着いてこい。」
どうやら俺の異世界ライフはそう簡単には行かないようだ。