第2話 街へ
ドルディとの対話が終わりクロンという街まで行く事になり、条件付きではあるが部屋まで借りれる事に一安心した。
しかしドルディの後ろを歩いている間に色々と頭の整理をしなければならない。
一つ、世界は俺が知ってる世界ではない、となるともちろん日本という国すらない。
一つ、読み書きはまだわからないが言葉が通じる。
一つ、名称こそ違うが俺が好きな漫画やアニメのようにドワーフのような種族が存在してる事。
一つ、目覚めた時点で持っているものは首にかけてたスマホ、着ているパジャマ、何故かトイレスリッパを履いている。
今把握できる状況ではこれぐらいだろう、ドルディに質問を投げかけても良さそうだが歩いてる途中で話しかけられても気が散るだけだと止めておく。
次第に鬱蒼としていた木々が疎らになっていき歩いてた道も開けてきた。
開けた場所には緩やかな丘陵で形成された大地、そこには草原が広がりとても心地よい草の匂いと海特有の潮の匂いがした。
その丘陵の先には山の岩壁が露出しており、壮大さを感じる程だ。
そして目覚めた時の場所が木々に覆われていたのか天候までは確認ができなかったが晴れている、そしてまだ朝方のようにも感じた。
岩壁まで続くあぜ道、しかし何故か街は見えてこない。
「もうすぐ着く」とだけドルディに言われるが人気が全くといってない、步くしかないが景色を見ながら歩くのも悪くない。
この澄んでいる空気、風、どことなく懐かしいそんな気さえする、故郷は日本なのに。
そうこうして自然に浸っていると不意にドルディが口を開く。
ドルディ「お前さ、本当はここ知ってるんでねえか?」
俺「まさか~この世界もだけどこの風景を見るのも初めてですよ。」
ドルディ「そうか~、この世界ってのは腑に落ちないが懐かしそうな顔で眺めてるからよ」
俺「そうなんですよね、不思議なんですが一瞬、懐かしい感じにはなりました。」
ドルディ「実はこっちの人間だったりしてな!」
俺「それこそまさか~っすよ!」
近づくにつれ、山を含めた岩壁の大きさに圧倒されながら、ようやく門がある事に気付く。
門があると言っても岩壁に門があるように見えた。
俺「ドルディさん、この門の先に街があるんですか?どう見ても岩壁なんですが!?」
ドルディ「んだよ~、ちょっと話つけてくるから待ってろ。」
そう言ってドルディは門の方に歩いていく。
その間、壁を眺めると所々に細かい斬り傷、大砲の球が着弾したかのような無数の跡がある事から何かしらの戦闘でついた事が推測できる。
しかも古いものから真新しいものまである、恐らくは余り治安が良いところではないのだろう。
これからここで暮らすことになるであればその戦闘に駆り出される可能性は大いにあると言える。
そうなれば今までの人生の中で柔道しかやってこなかった自分にとって掴み合いの戦いであれば勝機はあるけれど、
剣や槍、ましてや大砲なんかの重火器相手だと手も足も出ないのは解りきっている、そう確実に死ぬ。
と勝手に自分の身を案じているとドルディが戻ってくる、恐らく入場許可的なのが無事に下りたのだろう。意外早い気がする。
ドルディ「さて、中にはいっぺ~」
足を進めるとほぼ同時に門がギギギと言う在り来たりな開く音が二人を迎え入れる。
どんなゲームでも、最初に訪れる街は終盤になると重要になる場所だと相場は決まってる、そう無粋な事を考えている自分が嫌になってくる。
命の保証もできそうにないこの世界への恐怖もあるが、その反面この先に起こりうる物語にワクワクしている自分もいた。