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記憶喪失の兄

作者: 福星由雨

「おーい、にーちゃーん。待ってくれよー」


「へっへっ―。遅い遅い!」


 兄ちゃんは足が早いから、僕では到底追いつかない。


「いえーい、いっちばーん」


 また、公園までのかけっこで負けた。僕はこれまで、どんなに兄ちゃんに挑んでもかなわない。

「ひどいよぉ、お兄ちゃん。それにスタートの時ずるしたし!」


「誰がひどくて、ずるいんだ!」


 兄ちゃんは僕の頭を叩く。


 兄ちゃんはかけっこが強いだけじゃなく、力も強い。


「うぅぅぅ!」


 でも今回はなぜか、反抗したくなった。


 いつも叩かれている自分が急に悔しくなった。だから、僕は兄ちゃんの体を押して、仕返しした。


 すると兄ちゃんは「おっとっと!」と言ってよろけ、近くのベンチに頭を強くぶつけた。


「兄ちゃん! 大丈夫!?」


 僕は心配になって近くにかけよった。すると、兄ちゃんは何事も無かったように立ち上がる。


 しまった!


 今のうちに逃げておけばよかった! と僕は後悔する。


 また兄ちゃんに叩かれる。と、思った時、突然兄ちゃんは言った。

「ここはどこだ?」


「へ?」


「私はだれだ?」

 私なんて気持ちの悪い事を、お兄ちゃんは言わない。


 いっつもオレ、って言っていた。

 あれ? これって……


「記憶喪失?」


 アニメで良く出て来るのを僕はよく覚えていて、兄ちゃんはよくそうなったキャラクターを笑っていた。


「君はだれ?」


「僕は翔太だよ。ねぇ、一弥は糞ったれだ! 馬鹿だ! ひどくて、ずるいんだ! って言って」


 半分殴られるのを覚悟で僕はそれを言うと、


「一弥は糞ったれだ。馬鹿だ、ひどくて、ずるいんだ?」


 どうも本当らしい。


 あの兄ちゃんが自分にそんな事を言う訳ない。


 これはチャンスだ。いつも苛められている僕が兄ちゃんに仕返しをするチャンスだと僕は思った。

「君はね、僕の兄なんだよ」


 初めは、僕が兄って嘘をつこうとしたけど止めた。どうせすぐにばれる。


 でも弟の奴隷のような兄だって、嘘をつけばいいんだ。


 と、その時、兄ちゃんの拳が僕の頭を叩く。


「よし、弟。今すぐジュースを買ってこい


 しまった。


 兄弟の上下関係は覚えていたか!

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