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オーカ帝国にて、プロローグ1

シンデレラが書けなくて、逃げました。

むかし むかし の おはなしです


とあるみすぼらしい しょうじょ が おうじさま と であって しあわせ になる おはなしです


とても とても すばらしい おはなしです


でも それも いま…






「アキー」


誰かに呼ばれた気がする。誰だろう?

そう思ったら殴られた。何故だ?


「痛ッ!」


頭をさすりながら振り向くと、私の愛しい友人であられるケイコ がいた。


私を殴ったのは、間違いなく彼女だろう。暴力的な女はモテない。


「だーれが、モテないだってぇ!」


ヘッドロックをかけられて、ぐえっと奇声を発す。


どうやら口にしていたようだ。これは恥じるべき失態だ。早急に直さねば。


「絶対あんたには言われたくないわよ」


だろうな。


無口、無表情。長くてボサボサの髪は顔を隠してしまっている。何かが特別できるわけでもなく、しいていえば読書が三度の飯より好きだ。友人関係はといえば目の前にいるケイコがいるくらい。そんな正真正銘ぼっちな人間が私だったりする。


……なんか虚しくなってきた。


多少(?)強引だが話を戻そう。


まぁ、しかし、そんな私に言われたくないよな。誰だって。 私も他人だったら全力で嘲る。


「ってこんなことをするために来たんじゃなかった」


そりゃそうだろう。こんなことをするためにわざわざ来るほど、コイツは私と違って暇じゃない。


「今度郊外授業でチームくむことになってたでしょ。あれ、次の時間に変更になったから呼びに来たのよ」


む。


「聞いてない」


すると、心底馬鹿にしたような目でこちらの方を見てきた人が約一名。


「そりゃそうでしょ。さっきの時間寝てたのに聞いてたら、どんな寝方してんのって話になるでしょうが」


さっきの時間に言われたのか。ならば仕方ない。


「早く行きましょ」


そう言うと、くるりと背を向け歩き出すケイコ。私もガタガタと音をたてて席を立つ。


小走りでケイコのところまで追いつくと、ちらりとこちらの方を見たケイコが言った。


「それにしてもこんな時期にエックスミッションなんて変よね」


「ああ」


ここ、オーカ帝国が直々に運営する帝国学院には、普通のところとはだいぶ違っている。帝国学院からは毎年たくさんの官僚やら大企業の重鎮やら貴族やらの子息子女が入学してくる。それゆえ、特別なカリキュラムで動いている。その一つに郊外授業が存在する。通常ミッションと呼ばれるそれは、その授業内容からズィミッション、エックスミッション、アイミッション、キュウミッションにわかれる。


その中でもエックスミッションは授業内容がチームごとにわかれ、なおかつ一番クリアが難しいとされている。毎年何組ものチームが脱落しているのをみている。


そんなことを中途半端な五期生の春にやるのがおかしいと、さっきからケイコは考えている。


確かに変なのだ。


だいたいエックスミッションとなれば最終カリキュラムにはいる七期生以上が恒例だ。また、時期も進級したての春などではなく、夏から秋にやっている。


「まぁ、わからないものはわからない。さっさと行ってみれば何かわかるかもしれない」


正直私も考えてみたが、すぐに頭の中がごちゃごちゃになり、一晩でやめた。


それより、実際にやり始めてから考えた方が無駄がない。


無駄な思考はやるだけ億劫だ。


「そうね」


目尻をぐりぐりと押さえながら相槌を打ってくる。


そのまま、たわいない話をしているうちに第二講堂に着く。入るとどうやら我々が一番最後だったようだ。


すぐに教師が話し始める。


「全員が揃ったところで話を始めるぞ」


ああ、願わくばどうか楽に終わってなるべくチームの人と極力かかわらなくてすむように。


「まず、チームわけを発表する。その後はそれぞれの担当者から説明があると思う。これだけは最初に言っておくが、今回、自分たちのミッションを他のチームにもらしてはいけない。また、聞いてもいけない。その場合、未遂であろうが失格。最悪退学だから覚悟しとけ」


前代未聞のことに生徒がざわつく。


隣でケイコも眉をよせる。


「アキ、やっぱりなんか…」


「おかしいと思うがひとまず話を聞いてみよう。情報が足りない」


ケイコは苛立たしげに舌打ちをしたが、それ以上言うことはなかった。だから舌打ちすんなって。これだからモテないのだ。


「まず、一つ目。メイ・リンドウ、ショウマ・イチカワ、タクマ・オオキ、コウキ・アイカワ、ユウキ・タツノ、リコ・オガワ、ヒナミ・サイトウ。以上は特別室Aへ。次、ナツキ・アマノ、アサコ・ナ……」


次々と名前を呼ばれるが、私とケイコは一向に呼ばれない。いい加減退屈し始めたから、早く呼ばれてほしい。


「………次、カイト・ツバキ…」


きゃああああぁあああ!


何故かあちこちの女子が悲鳴を上げた。気味が悪い。


「カイト・ツバキは女子の人気No.1のうちの学院の王子様なのよ」


私の顔を見て何故かため息をついてケイコが教えてくれた。


「絶対に一緒になりたくないな」


「そう思うのはあんたくらいよ」


失敬な。もう一人くらいいるだろう。たぶん。


「…ケイコ・トウノ、アキ・ユキムラ、アイ・スズキ。以上は特別室Mへ。次、……」


あれ?


「残念ながらあんたの思い通りにはならないようね」


ケイコがニヤニヤしながら言う。完全に面白がっている顔だ。


少しは友人の心配をしたらどうだ。


「同姓同名の可能性…」


「ないね」


一刀両断された。


「さぁ行こう。特別室Mだって」


行きたくない。


「ふふ、面白い事になりそうだわ」


酷い。友人をなんだと思っているんだ。


数秒の決闘のすえ、結局ケイコにずるずると引きずられていくことになった。


暴力女はこれだからモテないんだ。

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